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宗教と思想と妄想

2014-03-17 00:04:03 | マスメディア
 前回、左翼が硬直化した理由は高齢化による頭の硬直化や頑固な性格、怠慢、営業上の動機であろうと書きました。しかしひとつ抜けていました。宗教や思想に染まった人間によく見られる強い保守性です。宗教や思想は認識の根本に関わるもので、それを変えることは膨大な頭の作業を強いられるので、できるだけ避けたいことが理由のひとつでしょう。

 文芸春秋2月号に載った「グローバリズムという妖怪」という記事はグローバリズムという思想を扱ったものでした。エマニュエル・トッド(歴史人口学者)氏、藤井聡氏、中野剛志氏ら5名による座談会ですが、グローバリズムの負の面が豊富に出てきて、面白いものでした。

 グローバル化はできる限り規制を廃し、自由な市場に任せることで経済の発展を目指すものですが、グローバル化した後の先進国の経済成長率はそれ以前より低下しているというデータが紹介され、グローバル化は経済成長を促すと信じられてきた事実に疑問が投げかけられます。

 藤井聡氏は『道路にたとえるなら、車線があって信号があるから自動車は効率的に走れる。ところが「規制」は邪魔だ、もっと自由に走らせろと言い出して車線や信号を無くせば、道路上はメチャクチャになって、道路の効率性は著しく悪化する。自由化による成長鈍化はこれと同じです。しかも規制を無くしていけば、リーマンショックのよう「事故」も増える』とわかりやすく説明しています。

 藤井聡氏の話を持ち出すまでもなく、規制の必要性は明らかです。しかし、この数十年、新自由主義者達は規制の悪い面ばかりを強調し、規制は悪であるかのような単純な見方を広めた結果、規制の必要性が不当に評価されたように思います。複雑なものは複雑なものとして捉えることが必要ですが、わかりやすさのために単純化するのも思想や宗教の特徴です。

 もともと規制とは何に対してどのような規制を行うか、あるいは廃止するかということを個々に考えるべきもので、すべて規制は良いもの、あるいはすべて悪いものといった「哲学的」問題ではありません。それが新自由主義という思想に伝染すると価値の問題とされてしまい、単純に良いとか悪いとかで評価されてしまいます。これは新自由主義に限らず、他の思想や宗教に於いても広く見られることで、認識を大きく狂わせる原因となります。

 さらに悪いことに思想や宗教に伝染するとそれから逃れることは容易ではありません。ここで話は最初に戻るわけですが、宗教や思想を変えることは認識の基本を変えることであり、その面倒さのために安易な硬直化が起きるのでしょう。そして硬直化によって変化に対する適応力も失なわれます。

 左翼思想も新自由主義も現在の社会状況には適合しなくなっていることは明白ですが、硬直化した頭はそれを受け入れず、認識の方を無理やり変えて整合させるという作業を行います。〇〇主義者や宗教の人とは認識が合わないのは当然のことです。

 かつて思想といえば知的で格好良いものと思われていて、〇〇思想社などという名前の出版社も幾つかありました。むろん新しい視点を提供するなどの良い面もありますが、どちらかというと認識を誤らせたり、社会に無用の対立や混乱を招くものが多く、妄想とたいして変わらないものと思われます。約600万人ものユダヤ人の虐殺に関わったナチズムは史上最悪の思想といえるでしょう。有史以来、宗教を原因とする戦争が繰り返されてきましたが、その害悪は核兵器の比ではありません。

 まあ認識が異なるわけですから、〇〇主義者とか〇〇教の信者にまとも判断を求めたり、実のある議論を期待するのはそもそも無理な話です。噛み合わない議論が永遠に続くだけであります、困ったことに。


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