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バタフライ効果

2010-01-08 09:50:02 | Weblog
 バタフライ効果とは「北京で蝶が羽ばたくと、1ヶ月後にニューヨークで嵐が起こる」などと説明されるように小さな変化が予想できない大きな変化を引き起こすことを指します(気象のように複雑さのために予測が不可能な分野での話です。これに対して惑星の運行などは単純で、何年も先の状態を高い精度で計算可能です)。

 昨年冬の派遣村騒ぎとその最大級の報道は恐らく政権交代の一要因になったと思われますが、派遣村については後に以下のようなことが明らかになりました。

○派遣村に集まった約500人のうち、派遣切りの人は120人程度(厚労省推計)
○集まったうち1月9日までに生活保護を申請したのは223人
○集まったうち1月9日までに求職の登録をしたのは125人
○東京都北区が募集した200人分の区臨時職員の募集に応じたのは4人

 集まった人達のうち、実際に派遣切りにあった人は120人ほどであったこと、求職の登録や職員募集への応募が低調であったことに驚きます。就職に対する意欲の低さは意外なものです。世の中がひっくり返らんばかりの大報道とこれらの事実の間には大きな落差が感じられます。

 また、今冬の税金による公設派遣村は最終的に833人が集まりましたが、そのうち就労相談をした人は1割にも満たなかったとされています。「希望者全員のホテルを用意しろ」と騒ぐ者もいたという産経の記事がありますが、これは恐らく少数の人達であり、このことで派遣村全体を判断するのはよくないでしょう。

 今冬の派遣村に関する報道は昨冬とは打って変わった静かなものでしたが、なぜこれほどの差があるのか不明です。もしかしたら実態にふさわしい報道になったのでしょうか。

 昨冬の派遣村騒動によって派遣労働の不安定な側面が明らかになった点は評価すべきですが、実態から離れた洪水のような報道が過大な衝撃を社会に与えました。この衝撃は小泉改革が格差拡大を招いたとする議論に油を注ぎ、自民党政治そのものへの批判につながったと考えられます(派遣村の村長であった湯浅誠氏は民主党に貢献したわけですが、彼はその後、内閣府参与として暖かく迎えられました)。

 むろん自民党が敗北した理由は他にいくつもあると思いますが、昨冬の派遣村報道がひとつの理由になったことは十分考えられることです。派遣切りに遭った120人ほどが政権を左右するほどの影響力をもったわけで、報道の力をまざまざと見せつけられた例です。

 問題は派遣村報道が実態から大きく外れた感情的なものであったことです。感情的な報道が感情的な反応を生み、投票行動に影響したと考えられます。北京の蝶の羽ばたきを感情的に拡大する仕組みが存在し、それが予測困難な結果をもたらしたというように考えることができるのではないでしょうか。

 政治が感情に支配されることを防ぎ、冷静な判断が可能になるような情報を提供することは報道機関の重要な役割です。報道機関がカッカして、頭に血が上ってはちょっと困るわけです。それでは多面的な報道は恐らくできないでしょう。

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