電気自動車は環境負荷が小さいということで、脚光を浴び、新聞にもその解説記事は数多く見られます。11月2日の日経には「転換点の自動車産業」という編集委員によって書かれた記事が載りました。そこにガソリンとリチウムイオン電池のエネルギー密度を比較する記述があります。
「ガソリン1リットルが持つエネルギー量は電力換算で9300ワット時。これに対し、電気自動車に搭載されるリチウムイオン電池は同体積で200ワット時しかないエネルギー密度の差は航続距離などクルマの性能を規定する」→(エネルギー密度の比は46.5倍と計算されます)
ガソリンエンジンと電池のエネルギー効率を無視しているので、この説明は誤りと言ってよいでしょう。ガソリンを燃やしてできるエネルギーは9300ワット時で正しいのですが、ガソリンエンジンは20%程度の効率しかなく、残りは熱となって無駄になります。それに対し、電池でモーターを駆動する場合は90%以上の効率が期待できます。
従って両者の比較は9300と200ではなく、それぞれに効率をかけた1860と180とで行わなければなりません。実用的なエネルギー密度の比は約10.3倍となり、46.5倍とは大きな違いが生じます。
私はここで日経新聞や記事を書いた編集委員(=優秀な人?)の揚げ足を取りたいわけではありません。この程度の科学の基礎知識のなさはどこの新聞社でもほぼ共通しているからです(私の印象では日経は他紙よりマシです)。これは新聞の理解力を象徴する事例として挙げただけです。
理科の時間が約半分に減らされた「ゆとり教育」世代が社会に多くを占めるとき、この懸念はさらに強くなると思います。NHKのクロ現では、ゆとり教育を受け理科を十分理解できなかった教員が生徒にうまく理科を教えられないという問題を扱っていました。科学的理解力の低い人間の再生産が起こっているわけです。
理科を軽視したゆとり教育を主導したのはきっと科学的理解力の低い連中であったのでしょう。またゆとり教育に対して有効な批判をし得なかったメディアにも同じことが言えると思います。教育という極めて重要なものが無知によって曲げられることはたいへん残念なことです。それにしてもこの時代に、理科の時間を半減するという無茶なことがどうして生まれたのか非常に不思議です。
東京女子医大事件では「物理学の初歩もわきまえてない」と検察が強く批判されましたが、検察の低学力が重大な結果を招いた例です。
50年前なら政治やマスコミは中学生レベルの科学的理解力でも十分であったでしょうが、現在はエネルギー、環境、教育、産業など科学的な理解力が必要な分野は数多く、支配的・指導的な部分を文系の人間がほぼ独占する旧態依然の体制では十分な対応ができるか疑問です。
関連記事:電動アシスト自転車の補助動力への誤解
(09/11/17 お詫びと訂正) 訂正前の記事ではエネルギーの単位を「ワット」とすべきであるとしたのですが、それは私の間違いで、「ワット時」が正しい単位です。
「ガソリン1リットルが持つエネルギー量は電力換算で9300ワット時。これに対し、電気自動車に搭載されるリチウムイオン電池は同体積で200ワット時しかないエネルギー密度の差は航続距離などクルマの性能を規定する」→(エネルギー密度の比は46.5倍と計算されます)
ガソリンエンジンと電池のエネルギー効率を無視しているので、この説明は誤りと言ってよいでしょう。ガソリンを燃やしてできるエネルギーは9300ワット時で正しいのですが、ガソリンエンジンは20%程度の効率しかなく、残りは熱となって無駄になります。それに対し、電池でモーターを駆動する場合は90%以上の効率が期待できます。
従って両者の比較は9300と200ではなく、それぞれに効率をかけた1860と180とで行わなければなりません。実用的なエネルギー密度の比は約10.3倍となり、46.5倍とは大きな違いが生じます。
私はここで日経新聞や記事を書いた編集委員(=優秀な人?)の揚げ足を取りたいわけではありません。この程度の科学の基礎知識のなさはどこの新聞社でもほぼ共通しているからです(私の印象では日経は他紙よりマシです)。これは新聞の理解力を象徴する事例として挙げただけです。
理科の時間が約半分に減らされた「ゆとり教育」世代が社会に多くを占めるとき、この懸念はさらに強くなると思います。NHKのクロ現では、ゆとり教育を受け理科を十分理解できなかった教員が生徒にうまく理科を教えられないという問題を扱っていました。科学的理解力の低い人間の再生産が起こっているわけです。
理科を軽視したゆとり教育を主導したのはきっと科学的理解力の低い連中であったのでしょう。またゆとり教育に対して有効な批判をし得なかったメディアにも同じことが言えると思います。教育という極めて重要なものが無知によって曲げられることはたいへん残念なことです。それにしてもこの時代に、理科の時間を半減するという無茶なことがどうして生まれたのか非常に不思議です。
東京女子医大事件では「物理学の初歩もわきまえてない」と検察が強く批判されましたが、検察の低学力が重大な結果を招いた例です。
50年前なら政治やマスコミは中学生レベルの科学的理解力でも十分であったでしょうが、現在はエネルギー、環境、教育、産業など科学的な理解力が必要な分野は数多く、支配的・指導的な部分を文系の人間がほぼ独占する旧態依然の体制では十分な対応ができるか疑問です。
関連記事:電動アシスト自転車の補助動力への誤解
(09/11/17 お詫びと訂正) 訂正前の記事ではエネルギーの単位を「ワット」とすべきであるとしたのですが、それは私の間違いで、「ワット時」が正しい単位です。
ゆとり教育は自民党主導で導入される際、一部雑誌などでは政府による「愚民化政策」の一端ではないかと言われていました。しかしこれは教職員の業務量削減にも効果があり、保守本流である自民党と反目の立場にあるはずの日教組を利する政策でもあったように思います。
だから?彼らも騒がなかったし、反対もしていない(確か……)子供達の学力が国際的観点から比較して著しい低下を指摘されるようになり、その誤りを声高に批判されついには廃止に……なるはずだったのにいまだに土日休みですね。
(円周率3はさすがに訂正されたんでしょうか?)
数学をはじめ、自然科学をキチンと学び、基礎科学と技術力を高度に維持し続けなければ日本に繁栄は有り得ません。競争が前提の国際社会で愚民化とかゆとりとか運動会でお手々つないで皆で仲良くゴールとか、夢見がちな乙女も真っ青な脳天気っぷりは………いったい誰が主導しているんでしょうね?
「選挙の日はみんな家で寝ていてくれるといい」とおっしゃった元ラガーマンの自民の元首相辺りだったりして( ̄▽ ̄;)
あ、もう権力ないか……
ま、日教組ってことで。
これもまた絶望的……
でも主犯は日教組のように思います。
日教組の悪口を言ってクビが飛んだ中山元国交相は相当な確信を持っておられたようです。
>基礎科学と技術力を高度に維持し続けなければ日本に繁栄は有り得ません。
まったくその通りだと思います。日教組の組織率が低下して、力が弱くなることに期待します。それが希望です。
エネルギーの単位「ワット時」で正解です。勘違いしてました。