噛みつき評論 ブログ版

マスメディア批評を中心にしたページです。  姉妹ページ 『噛みつき評論』 もどうぞ(左下のBOOKMARKから)。

コンクリート詰め殺人事件、再犯を報じないメディア

2018-09-09 22:23:49 | マスメディア
<戦後最悪の少年犯罪と言われる29年前の「女子高校生コンクリート詰め殺人事件」の犯行グループの1人が、殺人未遂容疑で逮捕された。ネット上では、少年犯罪の厳罰化、匿名報道への異議が叫ばれている。海外では、そうした声に応えるような動きも見られるがー> これは8月27日付ニューズウィーク日本版(電子版)に載ったリード文である。

 逮捕された湊伸治容疑者は「女子高校生コンクリート詰め殺人事件」で懲役4年以上6年以下の不定期刑が下されている。但し、この量刑からは想像できないほどのおぞましい犯罪を犯している。当時16~18歳の4名の少年が、見ず知らずの17歳の女子高生を拉致し、40日間にわたり監禁、強姦、暴虐の限りを尽くした上、殺害し、遺体をドラム缶に入れてコンクリートで固め、遺棄したという事件である。女子高生は食事も十分与えられず、51kgあった体重は35kgとなっていたという。まさに悪魔顔負けの所業である。

 東京地検は「稀に見る重大・凶悪な犯罪で、犯行の態様も極めて残虐・冷酷である。人の仮面をかぶった鬼畜の所業」としたが、東京地裁の判決は「家裁や少年鑑別所・弁護人・両親や鑑定人の接触によって人間性に目覚め、罪の重大性を認識し、その責任の自覚を深めている」として実に寛大な判決を下した(後に東京高裁によって一部は少し重く変更)。ところがこの4名の内、3名までが釈放後に刑事事件を起こしている。その一つが上に挙げた殺人未遂事件である。

 更生を重視する少年法に基づいた判決なのであろうが、更生という点では一人を除いて破綻したと言える。4名のうち3名、75%が失敗である。再犯の可能性は十分あると考えられるし、新たに犠牲者が出る可能性も否定できない。29年前の犯行は凄惨極まりないもので、40日間という長きにわたって想像を絶する激しい苦痛と恐怖を与え続けた残虐行為は他に例がない。そして被害者家族まで破壊した。未確認ながら被害者の親御さんは自殺されたとの話もある。一生背負うには重すぎる十字架である。私がその立場でも同じように考えるだろう。但しその前に連中をこの手で始末したい。

 長くなったがここからが本題である。主要メディアはこの8月に起きた湊伸治容疑者の殺人未遂事件をほとんど報道しなかった。調べてみたが報じたのは日経と産経、それもコンクリート詰め殺人事件には触れない報道であった。朝日、毎日、NHKは検索したが記事さえ見つからなかった。恐らくコンクリート詰め殺人事件のとき未成年であったことに配慮したのだろうが、それほど大事な問題であろうか。伏せることによる不利益の方がずっと大きいと思う。

 もし、主要メディアが過去の事件にも触れて報じれば凶悪事件に関する少年法の是非の議論に火をつけることになったであろう。現行法に基づいた少年たちへの対処が失敗したことも問題になる。主要メディアがこの事件を伏せることで少年法がもつ問題は放置されることになる。メディアの見識次第では制度の改革もできないわけである。欧米では再犯率の高い性犯罪者を地域に公表したり、GPSの装着を義務づけたりしている。社会防衛という視点からも論ずるべき問題である。少年犯罪の厳罰化、匿名報道は慎重に考えなければならない問題だが、少なくとも議論まで封じるべきではない。

 更生を重視する少年法の趣旨は理解できる。だが少年法が想定していた少年とはここまで残虐な少年ではなかったのではないか。更生の可能性が極度に低い少年に対して更生を前提にした対処法は意味を失う。法の常で「少年」と一括りにするが、コンクリート詰め事件の犯人たちを一律にその括りに入れるのは無理があると思う。海外の重罰化の議論は少年による想像を絶する凶悪犯罪の発生がきっかけと聞く。

 ここまで残虐な、非道な人間がいるのかと、改めて考えさせられる。あるいはミルグラムの実験で示されたように、一定の条件下では普通の人間も残虐になれるのだろうか。いや、ミルグラム実験では被験者には指示が与えられ、スイッチを入れるという動作であったのに対し、少年たちは自らの手で生身の人間を死に至るまで殴るという強い現実感がある筈だ。普通の人間にはできそうもない。


最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
性善説なる死霊に仕える 少年法への忖度か (HAKASE(jnkt32))
2018-09-11 21:49:50
2018=平成最後の 9月も、宜しくお願い致します。

今回貴記事の 女子高生コンクリ詰め殺人は、
前後して当地愛知で起きた 暴走族連中によるカップル惨殺事件と並び、
正しく少年法史上最悪の 凶悪事件の双璧と言えますね。

四犯人中三人が再犯とは、もう少年法のあり方を
根底から問い直すしかありません。

更生を主眼とする少年法の基本趣旨は、貴指摘の通りで異議なくも、
如何せん これまでの我国法制が頼りがちだった、
性善説に依拠し過ぎだと強く思います。

拙者などは、最早性善説は死んだと心得る者ですので、
日本国憲法規定の基本的人権条項の解釈を変え、
未成年といえど、再犯が強く懸念される性暴力事件に関わった者は、
GPS着用や、居所や身分、勤務先などの届け出を厳しく義務づけるなどの
締め付けが必須だと強く感じます。勿論、違反時の処罰規定も必要でしょう。

貴記事は 深刻な再犯事件にも関わらず、
主な既成メディアが正面から取り上げない事実は、拙方もその通りと心得ます。
恐らくは、犯行時少年の連中だった事と、
少年法に対する忖度でもあるのでしょう。
昨今問題の「報道しない自由」の濫用と見られても仕方のない所です。

正面から取り上げたのが 週刊誌メディアというのも情けない話。
森友問題より低レベルな忖度です。こんな報道姿勢のままなら、
新聞法改正と、放送電波オークション制を速やかに実施して、
既成メディアへの締め付けを強化すべき。
これは言論封殺でも何でもありません。

貴記事を拝読して、今 新聞社や TV局の一つや二つ潰れても仕方がないとの想いに駆られる 拙者であります。
返信する
Unknown (okada)
2018-09-13 10:06:17
カップル惨殺事件もひどかったですね。しかしコンクリ事件で許せないと思うのは40日間という長期に及んでいてることです。その間の被害者の苦しみはむろんですが、加害者にも冷静になるだけの時間があった筈です。衝動的な行為でなく、よく考えた上でのことだけに加害者の性格が理解の範囲外だと思ってしまいます。
少年と言っても悪魔のような性格のものから天使のようなものまで、様々ですが、それを一律に更生可能なものと定義づけることがそもそもおかしいと思います。例外は例外として扱えばいいと思います。法律家やメディアの特性として、理念を重視する傾向があると思います。現実より理念を優先すれば現実は軽視されます。理念を言うのは一見、格好よく見えますが、要は単純なだけです。
返信する
マスコミは世間が混乱するのが好き (腹一杯)
2018-09-13 15:54:17
今回の再犯の件は、ネットでうっすら見た記憶があります。
やはり更生できなかった、と思いました。
29年前のは悪質な事件でしたし、内容を見返すのも抵抗があります。
おっしゃるとおり、少年法は戦後の混乱期にやむなく犯罪に走った少年を保護するのが目的だったと思います。
共産党などは認めないでしょうけれども、日本が豊かになった状況は少年法が想定したものと違いますので、ひどい犯罪にはそれなりの処罰をしていただきたいと思います。
とはいえ、裁判官からすれば前例通りにしておいたほうが無難なのでしょう。
返信する
Unknown (okada)
2018-09-14 10:25:25
この事件をざっと調べたのですが、余りのむごさに、頭に残ってしまい、当日は夜中に目が覚めてしばらく眠れませんでした。詳細を調べるのは避けた方がいいと思います。
さて戦後、人間は環境によって作られるという、遺伝よりも環境を重視する考え方が教育界にも影響を与え、犯罪は社会によって生み出されるという考えが支配的になりました。少年法の運用もこのような考え方の影響を受けたと思います。それはそれで適切だと思いますが、その枠に収まりきらない少年が少数存在することも事実だと思います。
返信する

コメントを投稿