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東京コロナ無策(2) → 政治の無能

2020-07-12 21:28:16 | マスメディア
 以前、私は新型コロナの第2波について大規模なものは起きないだろうと書いた。その理由として我々は3月の感染拡大を抑え込んだ経験があるし、既に様々なことを学習しているので、散発的な発生があっても初期のうちに抑え込めるだろうと考えたからである。しかしそれは誤りであった。いま改めて政治の無能さを知った。

 東京都の感染拡大が止まらない。感染拡大は既に地方にも波及し始めている。これを受けて小池都知事は感染者の増加について「PCR検査数の拡大がそのひとつの理由である」と繰り返し強調している。たしかに検査数の増加も理由の一部ではあるが、それは理由の一部に過ぎない。検査数は4月に比べると多いが、6月には2000件/日に達しており、現在と大差はない。陽性率も6月10日の1.6%に対し、7月10日には約6%と4倍弱になっている。もし実際の感染者数があまり変わらず、検査数の増加が原因で顕在化した感染者数が増えたのなら、陽性率は低くなるはずである。感染者に若者が多いというのも楽観の理由にはならない。若者の方がウィルスを伝播させる能力に優れているからである。むしろ感染拡大の要素であろう。

 小池都知事のこの発言の裏には現在の状況を何とか軽く見せたい、深刻に見せたくないという気持ちが読み取れる。その理由は、現在の感染再拡大を認めれば東京アラートなど、自らのコロナ政策の失敗を認めることになるからだと思う。東京という特殊な地域であるものの、全国で唯一再拡大を許してしまったことを認めたくないのだろう。しかしそんなことのために対策が遅れるたのなら、その代償は計り知れない。

 ごく最近になってようやく識者の間でも感染拡大の危機感が急に強くなり、メディアもそれを取り上げるようになった。増加率の大きさについての見解についてはいろいろと解説があるのでご存知のことと思うが、新感染者数/日のグラフを見れば解説がなくても一目瞭然である。一人の感染者が何人を感染させるかを表す実効再生産数は1を大きく超えていなければこんなグラフにはならない。それは条件を変えなければ今後も増加が続くことを意味している。実行再生産数は人と人とが接触する度数で決まる。接触方法にもよるが、キャバクラの濃厚接触では1回でも10回分くらいの効果があるかも知れない。

 政府の見解もおかしいし、危機感も薄い。11日、西村経済再生担当大臣は東京都の感染者が3日連続で200人を超えたことについて「今は緊急事態宣言を発する状況ではない」との認識を改めて示した。理由を病床数に余裕があることやPCR検査態勢が拡充されていることを挙げたが、病床数に余裕があれば拡大を許容できるとも理解でき、感染拡大防止が優先事項とは思えない。PCR検査態勢の拡充は感染拡大に寄与できるが特効薬ではない。唯一の期待は国民がメディアが煽る恐怖のために自粛して、接触機会を減らし、実効再生産数を1以下にすることだが、なかなか難しい。

 感染者数が拡大すればするほど対策は大規模にならざるを得ず、経済的な損失は莫大になる。東京都が抑止にほぼ失敗した以上、感染は全国に広がる可能性がある。確定的なことは言えないが、春の緊急事態宣言を繰り返すことになり、経済に大打撃を与えかねない。東京近県や大阪、京都は既に増加傾向が定着しつつあるように思う。放置すれば春の二の舞である。感染を抑制する要素があまり見当たらないからである。残念だが、既に手遅れになったかもしれない。

 政治には予測がつきものである。しかし予測は確定でないから、当然間違いもある。だが多くの場合、予測範囲には複数のケースが存在する。各ケースの実現の確率もある程度は予想できることもある。しかし決定は確率ではなく期待、それも甘い期待の楽観論によって決まる場合が多い。この場合は感染はやがて自然に収束するという期待であろう。そして予測が外れた場合のプランBが用意されているとも限らない。

 意思決定のトップが無能ならば不幸は全員に及ぶ。第二次大戦では政府の楽観的予想が悲劇の元となった。トップは選挙で選ばれるので、形は有権者の責任であるが、投票行動は情報をほぼ独占するメディアに支配されるから、実質はメディアの責任である。


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