噛みつき評論 ブログ版

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マニフェスト教条主義の愚かさ

2009-10-09 08:45:07 | Weblog
 『政府の「地球温暖化問題閣僚委員会」は7日、20年時点の温室効果ガス排出量を90年比25%削減する政府目標の具体化に向けた検討チームを設置した。菅直人副総理兼国家戦略担当相をトップに、目標達成のためのコスト試算などを進める』(毎日JP09年10月7日)

これでは順序が逆でないでしょうか。事前にコストや経済に与える影響をできる限り正確に算定し、見込みがついた上で国際社会に発表するのがまともなやり方です。政府が90年比25%削減を発表する前に、民主党による試算も発表されず、目立った議論もありませんでした。いきあたりばったりの感が拭えません。

 CO2削減を掲げる一方、揮発油税などの暫定税率を廃止し高速道路無料化を進める状況を、遠大な目標を掲げながらいきなり逆方向へ走り出したと評した記事がありましたが、うまい表現です。どれもマニフェストに書かれていることで、マニフェストそのものに矛盾した内容が含まれていたわけです。

 マニフェストにあるというだけでよく検討せずに強行するのは、八ッ場ダム建設中止と同様、拙速かつ強権的な手法です。民主党に票を入れた人もマニフェストすべてに賛成したわけではないのですから、時間をかけて調整するだけの柔軟さが必要でしょう。どうやら民主党は教条主義者が主流を占めているようです。

 一方、マスコミは依然として90年比25%削減と表現し、07年比では31%削減になるという但し書きも見あたりません。数値の重要性をどれだけ理解しているか、大変疑問です。日本は現在、京都議定書の目標値である90年比-6%を守れず、逆に+9%となって「違反値」は15%にも達していますが、何故かこれもあまり報道されません。

 長期にわたって日本を拘束する重要なことが、政府とマスコミの双方でたいした議論もされず、ずいぶんいい加減に決まってしまいそうです。

 裁判員制度はたいへん重要な問題であるにもかかわらず、国会で実質的な論議をされないまま、04年に成立しました。当時はあまり報道されず、大多数の国民が裁判員制度を知ったのは実施の1年余り前になってからでした。

 裁判員制度もCO2削減もなかなか難しい問題で、正確な理解には専門的な知識が必要です。マスコミにそこまで求めるのは無理だと思いますが、せめて重要な問題かそうでないかの判断ができる程度の見識が必要でしょう。重要ならばそれを世に提示すれば議論が始まります。

 重要な問題であってもマスコミがアジェンダ(議題)として国民に提示しなければ議論にもならずに決まってしまいます。そしてとても悲しいことにアジェンダの設定はマスコミの見識に委ねられています。


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4 コメント

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マニフェストとは何なのか (あちょ@漂流者Lv.1)
2009-10-08 19:52:07
彡ミミミ、
(; ゜ - ゜) < マニフェストって何なんですかね?
重要な事柄である筈なのに、正式な日本語訳も決まっていない外来語を使って、政治家やマスコミの人は国民に何を伝えようとしてるんでしょう?
オイラはてっきり「良い国を作るための政策集」で、前提となる条件が変わったら(例えば、政権に着いた事によって新たな情報を得たら)適切に修正をするのが当然だと思っていたんですが、
どうやら人によっては聖書やコーランと同義のようです。
こういうすれ違いを防ぐ為にも、重要な場面で安易に外来語を使うのは控えた方が良いと思います。



アジェンダもよくわからんです。。
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Unknown (あちょ@漂流者Lv.1)
2009-10-08 20:00:46
すいません、ちゃんと括弧書きで書いてありましたね。アジェンダ(議題)
返信する
Unknown (フラット)
2009-10-09 10:13:30
マニフェスト……宣言、声明とか公約、確約といった意味で使われるもので、以前から使われていた政権公約と同意義です。ただしこの名称が使われる場合は内容的にはより明確化し達成度や期限などを設定して事後評価できるようにしており、有権者にとって解りやすいように構成されています。

民主党は元々自民から分裂した保守勢力などを糾合し、左派政党(当時の社会党)の中でも保守的素養を有した議員などもこれに合流して創られた政党ですから多種多様な価値観の議員が混在しているわけです(ほぼコミュニスト的な議員もいます)。従って党としての統一した方向性が設定しづらい(出来て「生活が一番」くらい)。で、なんだかバラバラなマニフェストの束ができあがってしまったんですね(今回の選挙でもっとも方向性がはっきりしているマニフェストを打ち出していたのは幸福実現党かも知れません。支持できるかどうかは別にして)。


CO2ですが、一部では政府のてこ入れで環境技術でのイノベーションが巻き起こり、東アジアでこれらを無償?供与して人口増加と環境悪化に悩む各国を救いつつリーダーシップを発揮して、なぜか経済的向上までをも手にする的なシナリオを夢見る向きもあるようです。しかもあと2年で。
あり得ない……。
いや、金融立国を標榜するならばアリかな?


私の志向は右傾保守ですが、今回の選挙は景気浮揚と財政再建が主軸であると考えていました。景気対策上中国に接近するのはやむを得ないし、財政再建上予算の見直しも必須でしょう。部分的にみると民主党は合理的な政策を実行中です。しかし……自身の政策に対し、まさに逆走的な行動を早速していますし、閣僚や準閣僚達の発言にも私見的なものが多く、意志の統一がなされていません。先々のことを考えるとやはり不安でいっぱいです。

ところで私は民主党を選んではいません。それはマスコミから提供された情報のみで判断しなくてもよいように自身で調べて考え、判断したからです(出版物は手にとるし、新聞も読むしネットも覗きますから謝絶しているわけではありませんけどね。しかし報道を丸呑みにはしないよう気をつけてはいます)。
自分の価値観をしっかり持つことと、大勢に流されないよう自己を確立すること。そして疑問があれば自分で調べること。誰もがこれをできればマスコミが垂れ流す玉石混交の中から玉のみを選び出すことができるようになるのかも知れません。

まだまだ修行不足ですが……
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Unknown (okada)
2009-10-10 20:56:35
マニフェストは選挙前に作られるわけで、厳密性を求めることは無理なわけで、方向性を示すだけの意味でよいと思います。約束とばかり教条主義的な態度は有害です。

おっしゃる通り環境技術でのイノベーション、ブレークスルーはエネルギー問題に関してはあまり期待でないと思います。

過去のしがらみから自由になって政策の自由度が大きくなった点は評価できます。

しかし私の不安もフラットさんと同じです。受けねらいの政策ばかりが多くて、景気浮揚と財政再建に目が向いていません。そのうちに内部対立が表面化するのではないでしょうか。
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