噛みつき評論 ブログ版

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誰のためのオリンピックか

2018-07-22 21:35:35 | マスメディア
 このところ、京都では39℃を超えるなど異常な高温が続いている。道を歩くだけでも大変なのに、炎天下、道路工事などをやっている方は本当に大変である。メディアは連日、この異常な暑さを報道しているが、豪雨被災地は別として、熱中症になった生徒たちや、暑さに驚く観光客ばかり取り上げて、過酷な仕事に就いている人たちには無関心である。いつものことだが。

 建設途上のオリンピック競技場が公開された。暑いさなかに建設をするのはさぞ大変だろうと思うが、それにもメディアの関心はないようである。また、今年の暑さが例年よりひどいことから、競技の開始時間を早くすることを考えているようだが、行き当りばったりの観がある。例年通りであっても日本の夏は高温多湿で運動競技には向かないくらい、初めからわかっている。選手と観客、スタッフにはたいへん酷な大会になる。

 真夏の開催の決定には、多額のテレビ放映権料を払う米国などのテレビ局の意向が働いたとされている。秋にはサッカー、NFL、野球などのスポーツがあるので、重複を避けたかったというわけである。国際オリンピック委員会(IOC)は巨額の放映権料に目が眩んだのだろう。日本オリンピック委員会(JOC)や日本のマスコミ業界も同様だと思う。時期が不適切であると反対したマスコミはなかったように思う。暑さのために死傷者が出る可能性を否定できないのに、いつも人命最優先を唱えているマスコミが反対しないのは二重基準である。それは彼らが受益者であるためだろう。

 炎暑の中で観戦する多数の観客や選手には発言権はない。マスコミは彼らの代弁者になる必要はないが、せめて予想される彼らの苦難にスポットを当てるくらいはやってもよい。オリンピックが実質カネで動くことは既に周知の通りだが、ここまで観客や選手らを無視するのはやり過ぎだと思うし、そのような議論をしないマスコミも情けない。

 マスコミは連日「命に関わる危険な暑さ」だと騒いでいる。オリンピック開催期間が「命に関わる危険な暑さ」になる可能性は十分ある。短時間の競技ならよいが、長時間の競技は環境から制約を受ける。運動による発熱を冷却しなければ体温が上昇して、やがては死に至る。冷却可能な熱量は気温と湿度で決まるから、熱の発生量が冷却可能量を上回ることもあり得る。選手たちは必死に走るだろうし、死者が出ることもないとは言えない。熱くなる観客にも危険はある。そこまでしてやるほどのオリンピックか、と思う。

 いっそ、こんな暑いときには行きたくない、とボイコットすれば大会の収入も減って、今後は観客に配慮することになるだろうけど、そんな可能性はごく小さい。メディアに煽られて連日賑わう可能性の方が残念ながらずっと高いと思う。