噛みつき評論 ブログ版

マスメディア批評を中心にしたページです。  姉妹ページ 『噛みつき評論』 もどうぞ(左下のBOOKMARKから)。

購読紙が人を支配する

2017-10-09 07:24:27 | マスメディア
 「JX通信社」が6月23日告示の東京都議会選挙を前に行った世論調査の結果が発表され、極端な結果が話題になっている。各新聞の読者ごとに小池都知事と安倍首相の支持率を調査した。調査は電話によるRDD方式で行われ、有効回答数は726人、回答の中で挙げられた購読紙は、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日本経済新聞、東京新聞、産経新聞、その他・答えない、となっている。

 調査結果によると、産経新聞読者の安倍政権支持率は86%に達し、6紙の中で際立って高かった。一方、もっとも低かったのは東京新聞読者の5%、「極端な差」が示された。読売新聞読者の43%。日経新聞読者の41%が続いた。朝日新聞、毎日新聞の読者の支持率はそれぞれ、14%、9%にとどまった。ちなみに不支持率は産経新聞読者が6%、東京新聞読者は77%だった。

 以上は産経新聞の6月21日付の記事の要約である。回答数が726人と十分とは言えないが、これ程の大差があれば少なくとも傾向を見るには十分である。安倍政権支持率は東京新聞読者の5%という数値には驚く。朝日と毎日がそれぞれ14%、9%は報道の帰結として十分納得がいく。安倍政権批判が使命とでも思っているかのような紙面だからである。反面、産経の86%も同様に安倍政権支持の紙面の結果と見てよいと思う。

 30年ほど前であるが、読者はその思想によって購読紙を選ぶのではなく、購読紙が読者の思想を決めるのだ、という一文を読んだ記憶がある。米国の誰かの発言で、雑誌に紹介されものであったと思う。上記の例で言えば、東京新聞の大部分の読者は反安倍だから東京新聞を選んだのか、それとも東京新聞を読んだために反安倍になったのか、という問題である。

 無論、どちらか一方だけということはあり得ないと思う。問題はどちらが支配的であるかである。同じ東京都民でありながらこれ程の大差が生じるのは常識的に言って新聞の影響力なしでは考えにくい。東京新聞は地方紙であるから、思想によって購読紙を選ぶという動機は考えにくい。つまり東京には右寄りの有力地方紙という選択肢は多分ないからである。また宅配制度のために親の代から継続して購読する例も多く、子供のころから影響を受ける。どちらが支配的と言えばやはり新聞の方であろう。厳密には購読紙を変更した人の思想の変化を調べるなどの調査が必要であると思うが、あまり聞いたことがない。興味ある結果が出ると思うのだが。

 新聞・テレビ・通信社は頻繁に内閣支持率、各政党支持率などの調査を実施している。その際の質問項目には内閣を支持するかといった本来の目的以外に、性別や年齢、職業、支持政党といった回答者の属性を調べる項目がある。ここに購読紙を加えて購読紙別の結果を発表してほしい。実に興味深い結果が得られると思う。メディア各社は自分の報道がどれだけ人々の考えに影響を与え、世論に影響を与えているかを知り、多少なりともその責任の重さを自覚するだろう。個人が好き放題に言うのと違って、組織的かつ大規模に人々の考えを強引に曲げるわけだから。2009年にはその「無責任な軽口」が民主党政権を誕生させる大きな力になった。民主党はその失敗のためにいま滅ぼうとしているが、力を貸したメディアは知らん顔である。