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9条の危険な副作用

2016-04-18 09:10:12 | マスメディア
 韓国では「鬼郷」という慰安婦を扱った映画が大ヒットしているそうです。両親と平和に暮らしていた少女がある日、突然日本軍によって連行されます。強姦、暴力、虐殺など、少女たちの苦難の日々が描かれ、映画は実話をもとに作られたという字幕が最初に表示されるそうです。この映画は韓国民の広い支持を受け、対日感情の悪化が懸念されています。

 一方、13日の韓国の総選挙では中道右派のセヌリ党が過半数を割る敗北を喫しました。その原因の一つに昨年末の「最終的かつ不可逆的な解決」とされた慰安婦問題を巡る日本政府との合意があるとされます。余談ですが「最終的かつ不可逆的」とはこれまでの信用のなさを表しているとも受け取れ、ちょっと恥ずかしい表現ですね。

 韓国民の対日感情の悪化は韓国政府によって意図的に作られたとする指摘があります。政権の安定のためにそのような事実はあったことでしょう。外部に敵を作れば国内の求心力は大きくなります。しかしそれが効きすぎたのか、今は国民の反日感情が政府を動かすようになった感があります。主客転倒です。

 中国においては江沢民の反日教育が有名ですが、以後、同国の反日は定着したようです。敵対する外国を作り、不安定な国内の安定を図るという意図があったのでしょうが、ここでも国民の反日感情が定着した結果、逆に政府が反日感情に拘束されてしまう危険があります。

 「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」はなかなかの好著ですが、その共著者のひとり村井友秀元防衛大学校教授は、日本をスケープゴートとした理由を、次のように述べています。

「その最大の原因は国内の暴力的なデモだ。中国ではデモが頻発している。年間10万件を軽く超えているだろう。しかもデモの特徴は大規模で暴力化、凶暴化している。体制にとって、これは深刻な危機なのだ」

 この国民の不満をそらす対象として日本が選ばれたというわけです。なぜ日本なのでしょうか。ロシアも過去に中国との紛争があり、有力な候補国なのですが、ロシアは危険すぎる、つまり何をするかわからない国なので、絶対安全な日本が選ばれたというわけです。日本は信用されているわけです。逆に自国の軍国主義化を懸念して信用していないのは日本の左派勢力です。

 スケープゴートの対象は、過去に被害を受け、そして何を言っても攻撃されない安全な国が条件です。韓国が日本をスケープゴートにするのも同じ理由でしょう。中韓両国は大きなリスクをとらずに自らの政権を安定化できるわけです。しかし、長期的には育てられた反日感情が紛争の要因になり得ます。さらに両国に呼応する朝日などの左派勢力が防衛力強化に反対し、抑止力の低下を招く要因となっています。

 日本の9条のおかげで、中韓は安心して反日カードを国内安定のために使うことでできるわけです。しかし、大きく育った反日感情が将来の戦争の芽とならないとは限りません。ユネスコ憲章の前文には「戦争は人の心の 中で生まれるものであるから…」と書かれています。戦争にならないとしても近隣国といつも摩擦を起こしている状態は困ったものです。9条は近隣諸国の反日感情を育てることに手を貸し、さらに戦争抑止力を低下させるわけです。平和の象徴と見られてきた9条が戦争を招く原因となるかもしれない、9条のもつ副作用のお話です。