噛みつき評論 ブログ版

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朝日、信頼度低下の典型記事…正確さよりセンセーションを優先

2008-01-06 10:19:45 | Weblog
 1月4日朝日新聞夕刊の1面トップの見出しは「東証大発会765円下落」である。日経は「日経平均616円安」の見出しだ。こんなに値段が違うのはなぜか。

 朝日の765円下落は取引時間中につけた最安値であり、日経の616円安は午前の終値である。「一時○○円安」というように特に断りがなければ、私の知る限り、値段は終値を指すのが慣例となっている。

 朝日の記事も詳細に読めばわかるのだが、見出しだけ読む人には誤解を与える可能性が大きい。些細なことだと思う方もあろうが、新聞社の姿勢を判断する上で重要なポイントになる。慣例を無視してまでの「765円下落」という書き方には、読者に正確な事実を伝えるという気持ちは感じられない。誤解を予想できないはずがない。あるのは誇大に見せて読者の注目を引こうという下心である。

 これは1面トップであり、十分なチェックを受けている筈であるから、単なるミスではないと考えられる。先ほど、社外秘資料が漏れて、朝日新聞の読者信頼度が3位に転落したというニュース(参考)が流れたが、朝日には危機感はないようだ。もっとも信頼度低下の調査結果は一般社員には知らされず、隠蔽されてるのかも知れない。

 いつも朝日のあら探しをやっているわけではないが、ついでに気づいた例をもうひとつ紹介しよう。12月30日の朝刊オピニオン欄である。「再考 裁判員制度」と題して四宮啓氏が書いているが、聞き手・市川美亜子となっているのでインタビュー記事だろう。裁判員制度の利点を説いた問題箇所を引用する。

『何よりも、いままで(中略)「法律のプロ」だけがコップの中で議論していた刑事裁判にシビリアンコントロール(文民統制)の要素が盛り込まれる点を考えてほしい』

 シビリアンコントロールは軍の指揮権を文民が持つことを意味するのであって、市民が法律家(官僚でも政治家でも)をコントロールする意味で使われているのは聞いたことがない。civil(市民の)の派生語ということで誤解があったのだと思うが、「一流紙」に載れば、正しいと思いこむ人も出るので影響が大きい。新聞における言葉は「生産物の品質」に相当するもので、用法は入念にチェックするのがあたりまえだ。

 まあ、いくらチェックをしても記事の筆者や記者、校正者に気づく能力がなければ仕方がありません。新聞社にもゆとり教育の学力低下が現れ始めたということですかね。新聞社の高給は大分知られてきましたが、給料と教養の「格差」が気になった次第です。