日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

日経新聞意味不明?“死に体企業”の人事より、破たん処理を提起せよ!

2013-05-14 | その他あれこれ
東京電力の役員人事が固まったとの記事が本日の日経新聞に掲載されておりました。「無風人事に浮かぶ危機感」という見出しを立てて六段もの大きな扱い、この記事に私はいささか疑問を抱いております。今、東電がらみの報道に関しては、もっと別の観点からメディアは政府に対して、国民の代弁者として問題提起すべき事柄があると思うのです。

昨年の今頃、東京電力実質国有化に向けた再建計画を通すためのシナリオの可否についてメディアは喧々諤々やっていたのは記憶に新しいところであります。その折における問題の焦点は、2点ありました。計画達成遂行の前提となっていた電気料金の値上げ問題と柏崎刈羽原発稼働問題との2点です。

1点目の電気料金値上げ問題は、当初の申請よりも若干値上げ幅が圧縮されたものの、とりあえず昨年7月に認可され、「料金値上=利用者負担」処理そのものの良し悪しは別にして、一応俎上乗ってここまですすめられてきたわけです。値上げとセットになっていた経費の削減努力に関しても、4月30日の決算発表を見る限りにおいては計画以上の実績がなされ順調に推移している模様がうかがわれてはいます。

しかし2点目の原発の再稼働問題はどうでしょう。3月期決算によれば営業利益ベースでは上記のような入り払いの改善が寄与したものの、最終利益ベースにおいては損害賠償見積額増加に伴う特損の積み増しが大きく影響し、赤字幅が予想を大幅に上回る着地となっています。この部分を取っても計画通が狂い今期以降に大きなツケが回るという問題が噴出しているわけですが、加えて今期以降の計画数字は13年4月からの原発再稼働を前提としたものであり、現状柏崎刈羽再稼働の見通しが全く立っていない以上、再建計画は2年度目以降は完全に“絵に描いた餅”と化したと言っていいと思います。

この問題に関しては、もはや東京電力が自力でどうこうできる問題ではありません。国としてどう考えるのか、すなわち宙ぶらりんな状態のまま“絵に描いた餅”の計画を放置するのか、こそが問題の最大の焦点なのであります。

ならばメディアは何よりもまずその点に着目し、株主である政府に対して現状打開に向けてどう対処しいかに打開策を打ち出していくのか力を込めて糾弾していくべきであり、昨年の計画がいかに甘かったのかを正す必要があるのではないでしょうか。さらに具体的に申し上げるなら、一部で昨年時点から言われ小職も訴え続けてきた被災者保護策を講じた上での破たん処理検討の必要性についての議論を、今一度盛り上げていくべきなのではないかと思うのです。

こうしてちょっと考えてみれば、このままでは自力で生きるすべすら持たない企業の役員人事問題を取り上げる価値がいくばくかでもあるのか否か、そんなことは自明の理だと思うのです。東電問題において今メディアが今すべきことは、政府の問題先送りの不透明な対応を容認することなく、当初から求められてしかるべき株主責任、貸し手責任を問うた上での破たん処理による明確な道筋の提示を、政府に対して求めていくことではないのでしょうか。

蛇足ではありますが、消費増税実施に関する観点から考えても、増税実施前に膿はすべて出し切るべきであり、その結果として一時的に経済が冷え込むのであるなら増税時期の見直しをすることの検討も必要でしょう。問題先送りのまま、増税後に破たん処理をおこない国民生活がより大きな経済的ダメージを被るような事態は避けるべきであると思います。

それにしても日経のこの記事はなんなのでしょうか。意味不明。メディアは東電問題に関して、この重要な局面を見失うことなくしっかりポイントを捉えた報道をしてほしいと思います。