「部屋がずいぶんすっきりしたようね。」
「はい、甥っ子の助けを借りて、大々的なレイアウト変更を実施しました。」
「居間に本棚4本が並んだわね。」
「居間は書斎でもあるわけですが、ここにこれからも置いておきたい本を並べました。仮に、『究極の本棚』と名づけています。」
「鶴見俊輔、加藤周一、寺山修司、木下順二、大江健三郎、森有正・・・。あなたらしいラインアップだわ。」
「ヘンリー・D・ソローやウィリアム・モリスもあります。種村季弘や池内 紀も登場です。」
「柳宗悦もあるわね。」
「柳宗悦はわが国の民芸運動の創始者として知られていますが、ほかにも、白樺派の人たちとも交わっていました。実は、ヘンリー・D・ソローやウィリアム・モリスをわが国に紹介したのも柳宗悦と白樺派の人たちなのですよ。」
「そうなの。」
「そして、ヘンリー・D・ソロー、ウィリアム・モリスと柳 宗悦との関係を明らかにした思想家が鶴見俊輔なのです。ですから、私にとって、この4人は私の思想形成を支えるバックボーンなのです。」
「あちらの部屋は?」
「『座敷牢』と戯れに呼んでいますが、『究極の本棚』に入らない本を収納しています。これらの本は、『BIBLOSの本棚』からお客様のもとに飛んでいくのを待っているわけです。」
「思ったより、『座敷牢』の中もすっきりしているわね。」
「毎月、ダンボール箱で2箱分の本が減っています。お客様と三省堂古書館に送り出すからです。臨時のフェアがあると、一度に6箱ほど送り出します。」
「じゃあ、随分本は減ったんじゃない?」
「1年間で、本棚にして3本減りました。今年秋には『BIBLOSの本棚』を卒業しようと思っています。」
「あら、また、なぜ? もったいないじゃない。」
「本を詰めたダンボール箱を持ち上げようとして、腰を痛めました。それで、辞める踏ん切りがつきました。」
「こちらの部屋は空いてるようね。」
「オーディオ・ルームにしようと思っています。最近、クラシック音楽ファンやオーディオ・ファンが周りに多くいることがわかりまして、私もそれに刺激を受けて、オーディオを再開しようと考えているところです。」
「そういえば、あなたのコラムに『大作曲家とは』というのがあったわね。この部屋でバッハ・モーツァルト・ベートーヴェンを聴いてみたいわ。」
「いずれ、部屋が整備できたら、ご招待します。」 (2013/1)