静聴雨読

歴史文化を読み解く

究極の本棚・1(須賀敦子)

2010-11-19 08:03:20 | 私の本棚
私の本とのつきあいを省みると、本が際限なく増え続けたのが第一期とするなら、本の処分を始めたのが第二期でした。その後、本の死蔵をやめ、人に譲ることを始めたのが第三期といえるかもしれません。現在はこの第三期の真っただ中ですが、秘かに第四期を見据えています。それは、既存の本を他人と共有するのは従来と同じですが、それに加えて、自分だけの「究極の本棚」を作ろうと試みる時期です。以下、この「究極の本棚」の姿を描いてみたいと思います。

「究極の本棚」に収める本には厳しい条件が付きます。
1.80歳までに是非読みたい本であること。
2.活字が大きいこと、印刷が鮮明なこと、など、読みやすい本であること。
3.本棚1本にすべてが収まること。

以上の条件にあてはまる本を徐々に選んでいきたいと思っています。

第1番:『須賀敦子全集 全8巻』(河出文庫)

単行本で出ていた全集のほぼ完全な文庫化で、このような出版ができたことが奇跡のようです。

須賀敦子は、聖心女子大学を卒業後、フランスに留学し、その後、イタリアに転進しました。ミラノで、書店を営む仲間たちと交流を続け、そのうちの一人と結婚します。ブルジョアのお嬢様と左翼の知識労働者の結婚は波紋を広げたようです。

十数年後、夫が亡くなり、須賀は日本に戻り、それから、文筆活動を始めます。
最初の著書は『ミラノ-霧の風景』です。私は、長らく、この本はミラノの観光案内書だと誤解して、読みませんでした。
次作の『コルシア書店の仲間たち』で、初めて、須賀のバックグラウンドを理解しました。

以後、『ヴェネツィアの宿』『トリエステの坂道』『ユルスナールの靴』など、イタリアとの係わりを須賀は独特の文章で綴っていきます。しっとりとして、女性らしいやや思い入れの強い文体に特徴があります。

この全集には、エッセーのほか、翻訳や日記なども収録されていて、これらをすべて読んでみたいと思っています。 (2008/1)