in my room

静かなパラダイス

ノエル・カワード…

2006年09月08日 | Weblog

先日ご紹介した「ミニミニ大作戦」では、
貫禄のあるイギリスの泥棒集団のボスを演じていた。
12才でプロの子役として舞台に立って以来、
俳優、脚本家、演出家、作曲家と
マルチな才能を発揮して大成功を収めている。



ノエル・カワード(1899-1973)
1920年代イギリスのジャズエイジに登場した新しい若者。
パーティにドライブにファッション…
第一次世界大戦後、若者が享楽的な人生という新しい価値を主張し始め、
これまでの厳格な価値観からの開放を願っていた時代。

彼の書く洗練された恋愛劇は若者に圧倒的に支持され、
どの作品も大当たり。時代の寵児と謳われた。
芝居は鮮度が大切と考えて、ロング・ラン興行を極力嫌ったとか。
その分、多作で書きあげるスピードも早い…
“努力”などという言葉は彼の中にはなかったでしょう?!
好友関係も広く、エリザベス・テーラーやマレーネ・デードリッヒは
彼の大ファン、彼の作品に出たい、あるいは共演したがったそうです。
当時のチャーチル首相とも仲が良かったとか。
「人生はパーティ。私は見せかけやうわべを愛する。」と言ったように
彼の書くものには“汗”や“労働”“青春の叫び”なんてものは出てこない。
最も嫌ったものが「悲しみの舞台」である“戦争”でした。
ですから第二次大戦時には「非国民」と批難されるも、
チャーチルは「あんな奴が戦争に行っても役に立たん!
一人くらい恋だの愛だのと歌っている奴がいてもいいじゃないか」
と旧友を庇ったそうだ。


自作・自演「私生活」(1930年)
左はガードルート・ローレンス。

彼のスタイルはメンズ・ファッションにも影響を与えた。
首にスカーフを巻く、アスコット・タイは彼がはやらせたもの。
タートルネック・セーターも彼が舞台で着たのが流行の発端だそうです。
「007シリーズ」の主役が決まったショーン・コネリーが
まっ先に彼のもとにファッションの相談に来たのは有名な話。


「夕なぎ」(1967年 ジョセフ・ロージー監督)
左はエリザベス・テーラー。

彼は、真剣に人や国を愛したり、人生に悩んだりすることを極端に嫌った。
彼が愛したものは、「気ままな生活」そしてある種の「軽薄さ」。
「現代という時代が嫌いになった」と言って、
50年代にバミューダ島に移住。映画出演も特別出演程度に。
生涯結婚せず、独身のまま亡くなりました。