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アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

台湾基督長老教会の宣教=民主化の手を休めることなく

2008-07-31 13:20:45 | インポート
わたし達センターで作ったブックレット楊啓寿著「台湾基督長老教会の過去・現在・未来 ~原住民宣教と民主化運動~」には、台湾基督長老教会と台湾原住民族との関係、そして、台湾の民主化運動への取り組みに関して、分かりやすく説明されています。
講師の楊先生は台湾基督長老教会の議長、総幹事を務められ、長い間台湾の先住民族のことに携わってこられました。また、玉山神学校(原住民族の牧師・指導者養成のための神学校)の教師・院長を長くされました。

(台湾の先住民のことを漢字で「原住民族」と書いて、ユェンツーミンツーと発音します。これは台湾の先住民族が選び取った呼び方ですのでわたしたちも用いさせて頂いています。)

感動と勇気を与えてくれるこのブックレットの、一部分「台湾の民主化運動と宣教について」の項をすこしご紹介します。

台湾基督長老教会は、宣教が始まって以来100年間、社会問題については、関与する機会も、実績もあまりなかったと著者は語ります。そのような中で台湾史上最も残酷な事件、228事件が1947年に発生。その際にも教会は何1つ発言することはありませんでした。

228事件の概要は以下の通り。以下、本文引用・・・・・
日本植民地政府が去った後、中国から蒋介石政権が政府と軍隊を台湾に送ってきました。そして植民地に代わって台湾を統治し始めました。人々は植民地制が終わって、自分と同じ血を引いた国の人々が台湾にやってくる、台湾と中国が一緒になる、と初めは喜んで期待をしていました。人々は北京語を習い始め、興奮した状態で将来を見ていたわけです。ところが、その中国からきた軍隊や政府の人々は、能率がとても悪く、不能であるばかりか、腐敗した悪い政府でした。そのために、日本政府が植民地政策で築き上げた社会の秩序が、1日1日と廃れていき、やがて経済も崩れ落ち、社会がだんだんと不安定になっていったのです。そのために国民党政府は、たばこの密輸などを取り締まるために、役人を置くなどして厳しくかかりました。
 そのような中、1947年の2月27日に、役人達が密輸したタバコを売っている一人の女性を取り締まり、その女性のタバコだけでなくて、持っていたお金まで全て没収してしまいました。その一部始終を観ていた台湾の人々が怒り、金を返しなさい、といって政府の役人に立ち向かいました。すると今度は政府の役人が怒って拳銃を発砲し、1人の台湾の人を殺してしまったのです。この事件が導火線となって、台湾の人々は、時の政府専売局の役人だけでなく、派出所、警察、それから政府の機関に対して抗議をしていきました。そしてその抗議がある点においては、秩序のない抗議に広がっていったわけです。
 人々は派出所を囲んで、中国から来た人々、「外省人」と呼ばれる人々を捕らえて囲み、殴り、そして政府に向かって、君たちのやっていることはいけない、政治を改革しなさいと、強く要求しました。このような抗議運動が台湾全土へと急速に広がっていったわけです。
 その時、蒋介石は人民に向かって、「決して軍隊を台湾には派遣しない。これを平和的な方法で解決する」と約束しました。しかし秘密裏に中国から軍隊を派遣し、台湾に上陸した軍隊は、虐殺を始めたわけであります。この事件を機に始まった虐殺により、当時のエリート層を含む2万8千人の台湾人が殺されました。殺害の状況について、記録には次のように記されています。軍隊は機関銃を乱射し、あるいは捕まえた人の鼻や耳を削り、手のひらに穴をあけて数人一緒に縛り付け、そのまま海に落とし、ある人は袋の中に入れ、溺死させました。このようにあらゆるむごい方法を使い、台湾の人々を殺してしまったのです。


蒋介石の圧力の中で、教会がとった対応は台湾に残りながら悩み苦しむ人民と共に立ち上がり、神の愛と神の義を証しすることでした。声なき人民のために教会は声を発しなければならないと感じ、1971年、台湾基督長老教会は「国是声明」を発表します。
その内容は、台湾の土地と人民は神様から授かったものであり、台湾の将来は台湾の人民によって決定されるべきである、というもの。当時、政府は政治的理由で人々を捕まえては審判の末、殺していたのですが、その状況下での「声明」です。

政府は教会への弾圧に着手し、1975年には新しく印刷した台湾語のローマ字聖書と、タイヤル語の聖書を没収。
この事態を受けて、台湾基督長老教会はいま一度声明「われわれの呼びかけ」を発表。その中でもう一度、政府が台湾人民の自決権を訴えると共に、憲法に示された信仰の自由を尊重することも訴えます。加えて、政府も教会もこの国から一歩出て、他の国との関係を強くするよう求めました。
政府の圧迫はどんどんと強くなり、教会にはスパイが来て厳しく監督され始めます。

このような中で、1977年に台湾基督長老教会は「人権宣言」を発表し、今までの声明でも述べられていた「人権」と「自決の原則」に加え、文末に『私たちは政府に向かって、台湾が一日も早く「新しい独立した国」となることを求める』という言葉を加えました。
この「新しく」・「独立した国」の言葉が中華民国政府の逆鱗に触れ、さらに弾圧が厳しくなります。
1980年の高雄事件(台湾の反政府運動の指導者たちが国連の人権記念日を記念して大規模の集会を行なった際、政府の陰謀で暴動事件発生。その際、指導者の1人を高俊明さんが助けたとして当時の台湾基督長老教会の総幹事他、約10名を逮捕。高俊明さんは軍事法廷で裁判にかけられ、7年の懲役が言い渡され、弾圧は益々のしかかっていきます(その実刑4年3ヶ月の間、台湾基督長老教会は彼の総幹事の役を解任せず支持)。
それでも、教会は祈り、休むことなく苦しんでいる人民の側に立って、神様の愛とそれから慰めを伝える、そして台湾に本当の自由と尊厳、平和がもたらされるよう努力します。それが、宣教のあり方だと確信していたのですね。
このような祈りと働きが今も続けられているのですね。

ブックレットは1冊300円(A5版28頁)、別途送料で残部わずかですが取り扱っています。
同じ楊先生の著書「傷ついた葦と共に」 教団出版 1500円も残部わずかあります。

台湾基督長老教会からのディヴァン宣教師(ブヌン民族)は、現在、北海教区にてアイヌ民族との関わりも含めて豊かなお働きをしてくださっています。
8月11日に発行されるわたしたちの機関紙「ノヤ」最新号の巻頭言を今回、ディヴァンさんが書いてくださいました。今号34号は内容盛りだくさんです。送付希望者はあて先をDM頂けたらお送りいたします。



海水浴シーズンです。海につかってシャッターをおしてみました。


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