アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

94年権利宣言案と06年権利宣言案の違い

2007-02-22 17:50:04 | インポート
さて、「先住民族の権利に関する国際連合宣言(案)」(以下、「権利宣言案」)について続きを書きます。
1994年に人権委員会で採択した「権利宣言案」(以下、「94年案」)と、2006年6月に人権理事会で採択した「権利宣言案」(以下、「06年案」)の比較のまとめを常本教授は以下のように述べます(要点のみ記述)。


全体を通して見ると、94年案に比べて、06年案では、自決権は認めるが、その行使にあたっては出来るだけ先住民族の分離独立には行かないように枠をはめ、あくまでも国内における自治というレベルのみにするという方向で修正が加えられた。
さらに、集団的権利というものについても、とりわけ土地に対して返還や代替地に限らず、金銭による保障も入った。
そして、人権の尊重とか民主主義という西欧的な価値観に合致するようにしなければいけないという修正が加わった。
(※「西欧的な価値観に合致する」というのは当然のように考えるかもしれないが、しかし、世界の先住民族のあり方は非常に様々であり、生き方や信条、生活様式を考えるとここで言う西欧的な民主主義とマッチしないような生活を送っている民族は少なくない。そういう点から、この制約は響いてくる。)




以上の修正をして06年6月29日に人権理事会を通過した後、第3委員会にて審議され、2006年11月28日に審議はストップしました。
その際、ペールー案とナミビア案がテーブルに上り、審議されました。

ペルー案は「人権理事会が採択した宣言案を本会議で出来るだけ早期に採択する」ことを提案(イギリス・ドイツなどを含むヨーロッパ諸国と中南米諸国が支持)。

ナミビア案は「極めて重要な内容の宣言であるからコンセンサスによる採択が見込めるようになるまで話し合うべき」と延期を提案(カナダ・オーストラリア・ニュージーランド・アフリカ諸国が支持)。多数決ではなく、コンセンサスを得て全員一致の賛成というかたちで採択されると、条約と違って法的拘束力がない「宣言」であっても効力が出てくることをナミビア案は意図してのこと。加えて、各国内法との整合性を協議するべきとの点も入れて、継続を主張(否決案ではない)。

結果、賛成82、反対67、棄権25(米・日含)で、ナミビア案が採択され、宣言案は継続となったわけです。

ちなみにオーソトラリア・ニュージーランドがナミビア案を支持したのは両国とも人権理事会国ではなく、人権理事会での採択では反対するチャンスがなかった。しかし、第3委員会では投票権があったため(ペルー案)反対票を投じた。
日本はとある国?の圧力があったために苦渋の選択として棄権したとか。

第3委員会の決議の意義として、恒元教授は、マイナスとして勢いがなくなることを指摘し、
さらに、この決議はペールー案、ナミビア案のどちらに賛成したのがいいかという判断ができるほど単純なものではなく(たとえば、ナミビア案に賛成したカナダ・オーソトラリア・ニュージーランドなどは世界での先住民法のもっとも先進国であり、先住民族を認めその権利を認めている。逆にペルー案に賛成したイギリスやドイツは他人事)、要は、この宣言が自国において直接的だと思っているか、よそ事とおもっているかによることを指摘されました。

今後について、ナミビア案のコンセンサスを得られるかに関しては強力に反対しているオーソトラリア・ニュージーランドがどうなるかによるそうです。さらに自決権や集団的権利がどこまで調整できるかが課題としてあったり、
他方、それぞれの国の内部事情によってこの問題に対する対応が変わりうる。
では、日本はどうかと言うと、宣言の採択には賛成しているとのこと(条件付ではあるが)。

う~ん。分かりやすくまとめたつもりですが・・・。


最新の画像もっと見る