アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

土地や資源対する権利

2009-01-16 10:45:50 | インポート
14日(水)は、アイヌ奨学金事務を兼ねて札幌へ行き、さっぽろ自由学校「遊」2008年度後期講座「『先住民族の権利に関する国連宣言』を読む」を聴講して来ました。
テーマは「土地や資源に対する権利」、講師は小野有五さん(北海道大学大学院地球環境科学研究院教授)。
この二年で小野有五さんのお話を四回聞かせて頂いています。いつも整理された内容でわかりやすく、また今回も多くの資料を出して下さいました。

今回は「先住民族の権利に関する国連宣言」(以下、『宣言』)の土地や資源に関する権利についてですので、『宣言』の第25条から29条が焦点となりました。
小野さんはここから「10のキーワード」を以下のように取り出し、その後に問題・課題を挙げて説明されました。

1.「伝統的に所有。もしくはその他の方法で占有または使用してきた」(25~28条に共通)
 ※アイヌは土地や領域、水域、沿岸域、その他の資源を伝統的に所有したか?
 ※アイヌにとって占有とは何か?
2.「土地、領域、水域および沿岸域、その他の資源」
 ※アイヌにとっての資源とは?
 ※アイヌの伝統的な土地所有制度とは?
3.「独特の精神的つながり」(25条)
 ※アイヌは、土地や領域、水域と独特の精神的つながりを持っていたか。
4.「所有し、使用し、開発し、管理する権利」(26条)
 ※アイヌが土地や水域との精神的つながりを維持し、強化するとは?
5.「関係する先住民族の慣習、伝統、および土地保有制度」(26条)
6.「公平、独立、中立で公開された透明性ある手続き」(27条)
 ※アイヌにとって公開された透明性ある手続きとは?
7.「原状回復を含む手段により、またはそれが可能でなければ正当、公正かつ衡平な補償の手段により」(28条)
 ※アイヌにとって現状回復とは?金銭的補償とどちらがいいのか?
8.「環境ならびに生産能力の保全および保護に対する権利」(29条)
 ※アイヌにとって環境を保護・管理するとは?
9.「自由で事前の情報に基づく合意」(29条)
 ※「自由で事前の情報に基づく合意」とは?
10.「有害物質のいかなる貯蔵および廃棄」(29条)
 ※アイヌは、原発や核廃棄物の地層処分に反対するか?


そもそもアイヌに土地に対する所有概念の考えはないといわれています。サーミ民族も同じだけれど、サーミは使用していた土地を出るときには生活の跡を残さないように配慮しているそうです。
アイヌは「所有」概念はなかったが、そこに住み、食べ物を捕獲・収集し祈るなど、占有(もっぱら使う)・使用はしていたし、独特な精神的つながりを持っていたとして、チノミシリ(祈りの場)や、Nitatorunpe(谷地の魔神=知里幸恵著「アイヌ神謡集」にある湿地の神)を例に出して説明をされました。

さらに、小野さんは土地権利に『宣言』第13条を加えます。

第13 条【歴史、言語、口承伝統など】
1. 先住民族は、自らの歴史、言語、口承伝統、哲学、表記方法および文学を再活性化し、使用し、発展させ、そして未来の世代に伝達する権利を有し、ならびに独自の共同体名、地名、そして人名を選定しかつ保持する権利を有する。
2. 国家は、この権利が保護されることを確保するために、必要な場合には通訳の提供または他の適切な手段によって、政治的、法的、行政的な手続きにおいて、先住民族が理解できかつ理解され得ることを確保するために、効果的措置をとる。
「市民外交センター仮訳2008年7月31日」

アイヌ民族にとっての土地の権利は、アイヌ民族みずからの歴史や伝統、(芸術)などと深いつながりがあるんだ、と。
確かに、アイヌ民族はその住んでいたところで文化的、宗教的なことを育み(『宣言』11~13条)、教育や労働を行なってきた(『宣言』14~17条)のですから、それらの権利と密接につながっている重要な権利なのですね。

小野さんは現在、アイヌ語地名の並列表記を主張されています。地名回復は重要だ、と。
確かにわたしもそう思います。以前にわたしたちも道内の諸教会のある地名を全部調べてアイヌ語の説明を加えてポスターにして諸教会に送ったことがあります(08年3月3日blogにあります!)。自らが活動している地の名前がアイヌ語から来ていることを意識する必要があると思います。

あらためて『宣言』25~29条の重要さを学びました。




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