アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

第14回政策推進作業部会議事概要とアイヌ遺骨返還等訴訟

2014-04-09 21:07:43 | インポート
さる2月28日に第14回「政策推進作業部会」が行われ、先日、ウェブ上にその議事概要が公表されました。
以前から指摘していますが、どのような理由なのか、この議事概要には議場での発言者名が公表されていません。そのために、それぞれの発言がどのような立場で、どのような意図のもとで語られているかが分かりません。
議事にはわたしたちが支援しているアイヌ人骨返還等訴訟(以下、返還訴訟)に関係する遺骨の問題も審議されています。
どなたの発言なのかが不明な限り、真意がわかりませんが「民族共生の象徴となる空間」の整備及び管理運営の基本方針のアイヌ遺骨の返還集約保管の基本的な考え方について、ある方が以下の発言をされています。
「北海道大学は、この2年間にわたって他大学から先生を呼び、時間と費用をかけてきちんとした保管状況とした。素晴らしい状況で私は感動したところで、ここまでやるのであればアイヌの未来のために研究も必要であると思った。」
 この発言の前に(おそらく)同人物が北海道アイヌ協会として、アイヌ遺骨を保管している12大学について厳しい批判をされています。遺骨を「どこから持ってきたか、いつ収集したか、男か女か、大学がどのように手に入れたかなど不明という部分が多く非常に驚いており、保管状況についても、倉庫にあるなど大学が人の遺骨をこのように保管してよいのだろうかと怒りで本当に心が震えており、人間として扱っていただきたいと考えている。(略)…こうしたことから、北海道アイヌ協会は、残りの10 大学の保管状況を見せていただくよう国に強く要請する。」と。

はて、北海道大学(以下、北大)は2年間でこの方の言われる「ここまでやるのであればアイヌの未来のために研究も必要」と思わせるほど「素晴らしい状況」に変わったのでしょうか。
北大のその「素晴らしい状況」下で、判明しているのはご遺骨が個体ごとに特定できるのは1027人。その内、故人名とご遺骨が一致しているのはたったの18人。さらに、個体として特定できない=すなわち、どなたのご遺骨かわからないものが、ごちゃまぜに入れられているのが「484箱」もあります(文部科学省調べ)。
故人名とご遺骨が一致していない1005人のご遺体と、何名になるかわからない「484箱」のご遺骨は、象徴空間への集約対象となるのでしょう。

北大は『北海道大学医学部アイヌ人骨収蔵経緯に関する調査報告書』を出しました。
http://hmjk.world.coocan.jp/archives/hokudai_report2013.pdf
しかし、返還訴訟の原告側の第2準備書面でも指摘されていますが、「平成13年当時の文書の作成経緯や資料が不明」などというのは学術研究機関としてはあり得ないはずです。もっと誠実な調査や開示を願います。
第2準備書面を含む諸資料は北大開示文書研究会ウェヴサイトの「資料室」ページにあります。第2準備書面は以下。
http://hmjk.world.coocan.jp/trial/jyunbisyomen/jyunbisyomen002_20130826.pdf
作業部会のこの議事概要に関しては、後日にも触れます。

さる4月4日に札幌地裁で遺骨訴訟第8回口頭弁論が行われ、モベツコタン(紋別)の畠山敏さんが原告として意見陳述されました。畠山さんの訴状(抜粋)も「資料室」に置いています。
なお、北大開示文書研究会のメンバーで作成したパンフレット『アイヌの遺骨はアイヌのもとへ』が完成し、北海道新聞と朝日新聞が取り上げて記事になりました。



原告の三人と完成ほやほやのパンフレット

アイヌ遺骨問題「本質を知って」返還訴訟の支援団体が啓発冊子  朝日新聞 2014.4.5
アイヌ民族の遺骨が墓地などから発掘され、北海道大など全国各地で保管されている問題を一般にもわかりやすく伝える冊子を、遺骨返還を支援するグループが作った。「墓地から掘り出された遺骨は誰のものか」など、大学教授や弁護士らがQA方式で説明する。
タイトルは「アイヌの遺骨はアイヌのもとへ」。日本各地にアイヌの遺骨が1636体、個体として特定できない遺骨515箱分が保管され、特に北大には千体以上がある、と冊子は説明する。2012年9月にはアイヌ民族の子孫3人が返還を求めて札幌地裁に提訴しており、訴訟を支援する北大開示文書研究会が冊子を作った。
なぜたくさんのアイヌの骨が大学にあるのか。遺骨を持ち去るのは犯罪ではないか。遺族はどんな気持かなど、10の視点から説明し、子供たちも読めるように漢字にふりがなをつけ、外国人にも分かるように英文の解説も併記した。
「多くの人に読んでもらうことで遺骨問題の現実、本質を理解してもらい、裁判を勝ち抜くための力にしたい」と研究会の殿平善彦・共同代表。訴訟の原告たちは「裁判をしてもなかなか決まらない。とにかく返してほしい」「副葬品などアイヌが『あの世』に行って使う物まで持ち去り、『盗んだ』という言葉が当てはまる。速やかに返還して欲しい」と語った。
冊子は千部作製。1部100円。問い合わせは同研究会事務局長の三浦忠雄さん(0164-43-0128)へ。


北海道新聞記事(4/5)はこちら
http://blog.goo.ne.jp/ivelove/e/1367b43f1547e0c3ea72335b53b7e582
次回の裁判は5月30日(金)午後2時より 札幌地裁にて


長らくご無沙汰しておりました。Blogのアップのしかたも忘れるほど。にもかかわらず、連日、多くの方が見て下さって感謝いたします。つたないものですが、今後も少しづつ、活動報告を再開していきますので、よろしくお願いいたします。
近く、BroachのBlogサイトも閉鎖するようなので、引っ越しも考えようと思います。
留萌は明日も雪予報です。しかし、春です!


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