アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

10月の二つの新聞記事

2016-11-10 13:07:23 | 日記

瞬く間に11月となりました。先月(10月)にあった新聞紙面上で気になったニュースを二つ取り上げます。

ひとつは、北大と札医大がアイヌ民族の遺骨の情報を公表したというニュース(苫小牧民報 10/12付)。

北大のホームページに「北海道大学アイヌ遺骨等返還室」をつくり、

身元(個人)が判明している16人分を公表

札医大はこちら

身元(個人)が判明している4人分を公表

北大は身元判明していたのがもう1体あったが、「想定していたアイヌ民族の遺骨と異なる可能性が浮上」(北海道新聞10月1日記事)したため、公表リストから外したとのこと(もし返還希望者が名乗り出ていたら問題になるでしょう)。

残念ながら北大も札医大も、遺骨返還に伴う情報公表でありながら、その歴史的経緯にはまったく触れず、自分たちが勝手につくったガイドラインに従って「返してほしければ返してやるよ」と言わんばかりの上から目線!

遺骨を「発掘」して、持ち帰り、ずさんな管理をして何十年も研究所の隅にダンボールに入れてほったらかしていながら、返してほしければ返すよ、名乗って来なさいという態度はいかがなものか。本来ならば、大学側が真剣に遺族を調べ、お返しに上がるのが筋ではないか。さらに、インターネットを見る事の出来ない方達への配慮は出来ているのでしょうか。問題がありすぎです。

ガイドラインとは国のアイヌ政策推進会議がつくった個人が特定されたアイヌ遺骨等の返還手続に関するガイドラインのこと。 その「3.返還に向けた手続」には、

「文部科学省は、ホームページ等で当該情報を周知するとともに、当該区域を管轄する市町村及び(公社)北海道アイヌ協会等関係機関に対して、当該情報の周知等の協力を求めるものとする。」

とありますが、きちんと行っているのでしょうか。

 

次に、気になったのが、以下の記事。

アイヌ民族遺骨2500箱安置可能 白老の慰霊施設概要 モニュメント先行整備(北海道新聞 10/10付

 全国の大学や博物館で研究目的などで保管しているアイヌ民族の遺骨を集約するため、政府が胆振管内白老町に2020年春に開設する「民族共生象徴空間」の慰霊施設の概要が9日、判明した。「墓所」となる建物には約2500の遺骨箱を収納する納骨室を確保。慰霊儀式を行う建物は約80人を収容できる規模とし、慰霊施設全体を象徴するモニュメントは先行して17年度末の完成を目指す方針だ。

 慰霊施設は、 国立アイヌ民族博物館 、国立民族共生公園とともに象徴空間内に設ける主要施設の一つ。ポロト湖畔東側の太平洋を眺望できる約4・5ヘクタールの高台に整備する。最大で一度に千人程度の訪問者受け入れを想定する。

 「墓所」の納骨室には、政府が13年に全国の大学に対して行った調査で個体ごとに特定できた遺骨1600体余りと、特定できなかった遺骨約500箱分を安置し、予備のスペースを設けることも想定。1体の遺骨箱は高さ29センチ、幅41・5センチ、奥行き67センチを基本とする。建物には約5千点の副葬品を保管する場所も設ける方向だ。(略)

ここで驚いたのは副葬品の数が「約5千点」と公表されたこと。はじめて見る数字です。北海道大学医学部アイヌ人骨収集経緯に関する調査報告書(2013.3 PDF)には、児玉作左衛門の「調査研究ノ大要」の一文を引用して、児玉自身が副葬品も多数発掘したと記述している部分を掲載しながらも(P.49)、副葬品盗掘に関しては一切調査してはいないし、公表もしていません。おかしなことです。

それともう一つ、2500の遺骨箱を収納する納骨室を確保したという記述部分。それだけ収納出来る大きさだよ、といういい方なのか、大は小を兼ねると言いますが、2500の数字に疑問。今現在、全国12大学に保管されている遺骨は、1624体。それに加えて特定出来なかったバラバラにされた遺骨500箱を単純に合計しても2100ほど。それなのに2500箱分のスペースを作り、さらに予備のスペースも用意するというのはいかがなものか。確かに、7月の報道では、国内の博物館など13施設から74体(後に苫小牧美術館に+2体)のアイヌ遺骨があったと報道(北海道新聞7/30)されたり、アメリカ(1体)やドイツ(17体)、オーストラリア(2体)などの海外の博物館にも保管されているという事実、さらに、過去に国立大学に行った遺骨保管のアンケートが、あまりに適当で再度、アンケート調査を行っているという報道もあったので、次々と増える可能性もありますが、それにしては多い数です。

ほかにも「モニュメントはアイヌ文様をあしらい、イクパスイ(捧酒(ほうしゅ)べら)をモチーフにしたデザイン」などの外装デザインもすでに示されていますが、慰霊施設の設置にいたる説明は明記するのでしょうか。なぜこんなに大量のアイヌ民族のご遺骨がここに集約されたかを謝罪と共に丁寧に説明するものを作るべきです。