アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

民族共生の空間作業部会10回「議事概要」を読んで

2011-02-19 12:20:10 | インポート
アイヌ民族に対する新たな施策の確立に向けた取組みはすすんでいるのでしょうか。

1月27日に開催された第10回『民族共生の象徴となる空間作業部会』の「議事概要」がUPされていました。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainusuishin/kaisai.html


いつもこの「概要」を読んで感じるのですが、内容がわからなすぎるのです。これでは開かれた会議とはいえませんね。
今回も、「海外事例等について」、小谷 凱宣(名古屋大学名誉教授)さんが「アメリカ合衆国における対インディアン政策について」、国土交通省北海道局が「フィンランドにおけるサーミ文化等関連主要施策について」語ったのだろうと推測しか出来ない書き方がされていて、何をどう議論したのか分かりません。
しかも、小谷さんは過去ブログにも書きましたが、海外のアイヌ資料に関する研究をされている方のはずですし、国土交通省北海道局がサーミ施策を発題したとは、いったいどんな議事進行だったか、是非とも教えて頂きたいです。

次の記述には「佐々木部会長の若手・中堅アイヌとの意見交換会報告」とあります。
若手・中堅アイヌとはどなたなのか、どのような「具体機能のあり方について」話し合ったのでしょう。

その後も、読み進めば読むほど、内容がまったく通じずに、知りたい内容がベールに包まれていることの苛立ちを感じる内容になっています。
もしや議論ではなく、ブレーン・ストーミングをしているだけ? そうであるならば「議事」録ではなく、協議会をしたと書くほうがいいですね。みなさんもどうぞご確認下さい。これではUPする意味がないです。


【研究】の項でも、発言者の記載がないため、どう捉えたらいいのかも分かりませんが、二つの発言記録に疑問を記載しておきます。
○アイヌの人骨に関しては研究が進んでいない。アイヌ協会としては、遺跡発掘からの人骨を中心に研究に使用してもよいとしている。
○きちんと供養できるならば、アイヌ協会としては国民の理解のために研究に使用することは認めている。相互理解のもと、研究成果が明らかになっていないから誤解が生まれる。

→「アイヌ協会としては」とあるので、協会の総意ととっていいのでしょうか。「遺跡発掘からの人骨」とはどういったものでしょう。たとえば、児玉作左衛門は自ら掘ったアイヌ墓地を「遺跡」と呼びましたが、実際は埋葬されて2~30年しか経っていない場合もあるのです(植木哲也著「学問の暴力」P210ff)。
アイヌ協会は北大「アイヌ納骨堂」に納められているそれらの遺骨も「遺跡発掘」の人骨と理解しているということでしょうか。
また、たとえアイヌ協会の総意として研究使用許可をだしたとして、アイヌ協会以外のたくさんのアイヌ民族関連団体・個人の思いはどうなのでしょう。

ところで、納骨堂の遺骨は、その後まったく研究材料にされていないのでしょうか。



その他も引っかかる内容が出てきます。

○これまでアイヌは、研究される対象として扱われてきたこともあり、自然人類学研究そのものに対する不信感があった。
→誰がどの立場から語ったのでしょう。過去形で述べられていますがいいのでしょうか。

○「人材育成は卒業後の進路とセットの問題。白老イオルでの伝承者育成事業の卒業生数名程度の進路にも困っている状況も踏まえる必要。」
→ということは、三年をかけて研修を積んだ「担い手育成」の方たちの卒業後の進路は全く考えずにいたということでしょうか。 

○研究を行ったり、技術を習得したり、議論したりと色々なものを生んでいく場であってほしい。
○職業訓練と販売促進をつなぎ合わせていく必要。象徴空間内の教材をもとに技術を修得し、ショップで販売するなど。

→研究、伝統継承、販売に加えて「慰霊」の空間を目指しているということですね。「慰霊」と研究や販売がわたしには一緒にできないように感じますが、どうなっていくのでしょう。

○先の有識者懇談会報告で記載されている「精神文化の尊重という観点」の意味を改めて検討してみる必要。実際に人骨が収集・発掘されたことのみにキーがあるのでなく、国としてアイヌの精神文化を尊重するという意味で、責任の主体は国にあること。また、慰霊についてどういう方法が精神文化の尊重に結びつくかという点も併せて検討する必要。
→いつも腑に落ちないのですが、慰霊について真剣に考えるほど慰霊以前の謝罪に関する意見がでるべきだと思います。
過去には国策として発掘した人骨を研究材料にしただけではなく人体研究も行い、アイヌ「尊重」とはかけ離れた扱いをしてきているのです。そのことをまず謝罪するのが始まりだとおもうのですが。
1934年7月に永井潜を委員長として、解剖学部・生理学部・衛生学部・病理学部・内科学部・精神病学部の七部門を擁する調査団が組織され、平取で調査が行われました。その際、日本民族衛生学会は「活きた材料による優性的研究の結果は吾等文化民族の将来の発展進化の上に大きな波紋を画かしむべき他山の石であり、警世的炬火を投ずるものでなくして何であろう」と述べています。アイヌの人々を「活きた」優生的研究「材料」にしたことが評価されているのです(藤野豊著「日本ファシズムと優生思想」参考)。
研究と精神文化の尊重の結びつきも十分論議して頂きたいです。

○慰霊・納骨の問題は、アイヌの人たちのために何が最も正しいのかを考えることが根本にある。
○研究資料とする場合、モノではなく人間の一部として尊厳を持って扱う必要がある。
○慰霊施設は、博物館から離れたところに置くことが肝要。

→その通りだと思います。アイヌ民族の意見を傾聴することを望みます。

○海外におけるアイヌ人骨の状況は整理されているのか。
→どうなのでしょう? 数ヶ月前に○大の数名が海外に調査派遣されたような話を伺いましたが、この議場では扱われていないのでしょうか。「整理されているのか」という議事録もないと思うのですが。



11月にシンポ「植民地主義とキリスト教」に参加のため沖縄に行った際に、公設市場で撮った豚さんと魚