アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

有識者懇談会の報告書まとめについて「素案」

2009-06-25 23:52:35 | インポート
さて、23~24日の読売、毎日、北海道新聞の各紙に有識者懇談会の報告書まとめについて「素案」の記事が掲載されていました。

読売新聞(2009年6月23日 )
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hokkaido/news/20090623-OYT8T00027.htm
毎日新聞(2009年6月24日)
http://mainichi.jp/hokkaido/news/20090623hog00m040008000c.html
北海道新聞(06/23 14:07 )
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/173247.html


毎日新聞を紹介します。以下、引用。

アイヌ有識者懇:報告書素案に生活向上策など盛る
毎日新聞(2009年6月24日)
 政府の「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」(座長、佐藤幸治・京都大名誉教授)は、アイヌ民族への生活向上策や国民理解の促進策の必要性などを盛り込んだ報告書素案をまとめた。29日の懇談会で提示する。焦点になっていた新たな立法措置については記述せず、次回以降の懇談会で議論する。
 素案は「アイヌは先住民族」と明記。その上で「国の政策として近代化を進めた結果、アイヌ文化に深刻な打撃を与えたことから、アイヌ文化の復興に対し、国には配慮すべき強い責務がある」と指摘した。
 さらに、アイヌとそれ以外の人たちとの経済格差に触れ、「道外のアイヌの実態を調査した上で、必要な支援策を検討・実施していくことが求められる」と説明。道が道内のアイヌ対象に実施している就業支援や奨学金などの生活向上策を全国に拡大することを求めている。
 一方、道アイヌ協会などが求めていた「総合的なアイヌ施策の根拠となる法律の制定」については記述がなかった。委員の一人は「次回懇談会で議論することになる」と述べ、何らかの形で報告書に盛り込まれる可能性も残されている。
 また、国民理解の促進策として「アイヌ民族の日(仮称)」制定に触れたほか、アイヌ文化の体験・交流を促進し民族共生の象徴となる施設の整備も求めている。
 報告書は早ければ7月末にもまとめられ、官房長官に提出。国はそれを元に施策を検討する。【千々部一好、高山純二】


このような記事が出ているということは、「有識者」メンバーはもちろん、マスコミにも29日開催の懇談会で配布される資料が手渡されているのでしょう。
こんな時こそ有識者懇談会のURLで「資料」UPしてくれるといいのですが(最近は遅い)。
ですから、記事を見てしか想像できないわけで、大変、もどかしいです。

まず、「アイヌは先住民族」と明記されたというところまでは良しです。今後、先住民族の権利に関する国連宣言を利用して、先住民族アイヌとしての権利を訴えていけるようにしていけばいいでしょう。
次の、国の政策の結果として深刻な打撃を与えたのがアイヌ「文化」ということは読売も書いています。これまた10年前と同じく「文化」のみを扱うのではと不安になります。道新は
「明治以降の国の政策で土地資源の利用が制限され、文化にも打撃を受けたと歴史的経緯を明記。」と土地資源の利用が制限された事も書いていますが。

経済的格差についても道外への拡大を書いていますが、道内の今までのアイヌ政策はどうだったのかの評価についてはしっかりとしてきたのでしょうか。

何よりも「法律の制定」も明記されていないことが心配です。「次回」という記述もありますが、とにもかくにも大事にして頂きたい部分です。
有識者懇のメンバーでもある、加藤忠北海道アイヌ協会理事長も、第2回有識者懇談会で①権利回復のために立法処置をとるようにと要望していますし、第7回有識者懇談会で高橋知事も6項目の提言の1に、「1 立法措置  アイヌの人たちに対する生活支援、教育支援及び産業振興など総合的なアイヌ施策の推進の根拠となる法律の制定」と書いています。

道新には「有識者懇の終了後もアイヌ政策を継続審議する機関や、民族の文化や歴史を研究・教育・展示する象徴的施設の必要性にも触れている。」と明記されていますが、この部分も大切にされるべきでしょう。

予算の設置や、調査がきちんとできたかなど、他にもチェックするところがありますが、とにもかくにも、目を離せない状態です。




昨日から東京でドキュメンタリー映画を撮っているCHI~さんが泊っており、アイヌ民族の権利のことや、日常のことなど語りあっています。
今日は一緒に午後いっぱい、旭川嵐山のチセ作りのお手伝いに行って来ました。HEIちゃんやKUROさん、SHIKさんとおなじみの皆さんと会えてうれしかったです。
足場の悪いところで少々、疲れてしまいましたが、その後、川村カ子トアイヌ記念館を訪ねると、なんと、マレウレウのメンバーの皆さんがきれいに衣装をきて、わたしをお迎えしてくれるではないですか!
って、わけではなく、おもむろに「今、帰ってしまったよ~。残念だったね」と言われ、何のことやら。実は、歌手の夏川りみさんがロケで来てたって! お互いに歌も披露したようです。
7月30日にNHK総合で流れるそうです。時間が分かり次第にUPしますね。
ちょっとは残念でしたが、マレウレウのメンバーに会えただけでもラッキーでした。
8月に東京でライヴがあるようです。今日聞いたら札幌でもあるそうです。




明日から兵庫教区からお招きを受け、お話をさせて頂きに参ります。礼拝の説教も頼まれましたので、奉仕させて戴きます。30日に札幌には戻りますが、翌7月1日から一泊で二風谷にて先住民族サミットの1年記念の集いがあるので、そのままそちらに向かいます。


第30回樺太移住殉難者墓前祭

2009-06-25 10:59:41 | インポート
知床エコ・ツアーを終えた翌日の20日は、イサウさんらは北方民族博物館を経由して名寄へ。
わたしは滝川を経由して江別へ向かい、第30回樺太移住殉難者墓前祭に参列。
故石井清治さん、そして小川隆吉さん、豊川重雄さんらの樺太史料研究会の活動から、江別真願寺に保管されていた過去帳が発見され、それを頼りに殉難者の遺族が呼び掛けあって1979年に第一回墓前祭を開催。1999年から墓前祭に加えて樺太先住者の様式に則った先祖供養が行なわれています。
この数年、わたしも参列させていただいています。



帰りの足で、その日から行われている「アプカシ1年記念の集い」に顔を出しました。が、メンバーはまだ墓前の前だったのでカンパだけ置いて帰宅。


21日(日)は礼拝をすませ、その日教会で開催されるフリーマーケットのセッティングだけをして、あとは教会員に任せ、名寄教会の牧師就任式へ。そこで、イサウさんらと再会し、留萌までおつれして、夜には再度、米インディアナ大のshingo君も加わり、「タロコ民族と国定公園」講演と交流で歌ありわらいありのにぎやかな夜を過しました。
(shingo君は朝から留萌の礼拝に参加し、続けてフリマにも積極的にお手伝いしてくださったとか。感謝! 収益2万円は海外医療協力他へ献金します)。



翌日の22日(月)はイサウさんらを札幌へ送迎するついでに、増毛でイチゴ狩り。台湾にもイチゴがあるとのことで、甘くて美味しいイチゴの見分け方をイサウさんから聞きました。ラッキー。



石狩を通ったので、樺太アイヌの碑に案内し、樺太アイヌの強制連行について説明させていただきました(一昨日の墓前祭のことも)。みなさん真剣に聞いてくださいました。

無事に札幌に到着して北海教区の山本幹事と面会し、わたしは帰路へ。18日からの走行距離は1700キロ。疲れましたが、いい出会いでした。

台湾の原住民族のみなさんは、ハンターを禁止されていてもおかまいなく狩猟しているとのこと。
逮捕されないのか聞きますと、逮捕される事もある、と。しかし、それでも、昔から行なっていた当然の権利としてやりつづける、と。釈放後すぐに猟をはじめるのだそうです。たくましいですね。
権利主張でよく警察ともぶつかるそうです。
わたしの学んだ「原住民族基本法」も、台湾ではあれは法というより「声明」のようなもので、ほとんど力がないんだということには驚きました。もっともっと現実を知りたくなりました。ディヴァン宣教師とも学びを深めることを確認しました。また是非ともタロコ国定公園での原住民族エコツアーに行きたいです。イサウさん、ゴロさんとの再会を楽しみにしています。


シレトコ・オロンコ岩(オロッコ民族と戦ったという伝説があるようです。朝に頂上まで登りました)


阿寒湖アイヌコタン~知床先住民族聖地巡礼エコ・ツアー

2009-06-25 09:30:22 | インポート
18日からイサウさんらと合流し、当センタースタッフと共同で阿寒湖アイヌ・コタンへ。

到着後、いっぷくしてちょうどにユーカ(ラ)劇「天駆ける英雄の物語」が始まるというので鑑賞。 (ラ)は小さい「ラ」
見ごたえのある劇でした。観客がわたし達だけだったのがもったいなく思いました。演出、音響、照明、衣装と素晴らしかったです。
イレシュサポが魔物との闘いを繰り広げる場面で、アイヌ女性の勇者が激しい空中戦をするのだと、ある方が以前に教えてくれたことを思い出しました。

夜は「千本たいまつ行列」に参加。幸運の森商店街を抜けてアイヌコタンへ。イサウさんたちも喜んで参加されました。朝は湖のまわりと森を散策して「ボッケ」、松浦武四郎碑を見て、いざ、知床へ。




阿寒からウトロまで車を走らせながら、車内では野生動物発見ゲームでみな真剣!
さいしょにわたしがオオワシを発見して1点取得。次に見えにくいところの鹿をイサウさんがみごとに見つけて1点。さすが名ハンター。瞬く間に酋長の家に到着。そこでアイヌ・アート・プロジェクトのメンバーでもある早坂さんと待ち合わせ、アイヌ民族聖地巡礼エコ・ツアーに案内していただきました。


最初に亀岩と呼ばれているところのふもとにある竪穴式住居址へ。北大が毎年調査に来ているそうですが、オホーツク文化期のものとのこと。その後、亀岩を登るに際してアイヌプリで祈りをささげて、少々、急な坂道を登りました。頂上にはたくさんのチャシコツ(城柵跡)や住居址がありました。詳しく説明を受けて下山したあとに、さらに別のチャシコツへ(うっかり場所をメモし忘れた!)。知床には多くの先住民族の聖地があるそうです。その場所をたどりながらカムイと共に生きてきた先住民族アイヌの考え方や生き方を聞かせて頂きました。
広がる海や先ほど登った亀岩が見渡せる場所でトンコリ演奏も聞かせて頂き、満たされた時間を過す事が出来ました。
そこでわたしがイルカを数頭発見。10点を獲得して当日のゲームを優勝! なんだかこどものような純粋さでワイワイと過した数日でした。

夜は酋長の家で美味しい手料理を頂き満喫した一日でした。




講演 「台湾における開発と原住民族ー太魯閣国家公園の場合ー」

2009-06-25 09:21:09 | インポート
ビャッホッ!(タロコ民族の「こんにちは」の挨拶)

18日(木)より22日まで、阿寒湖アイヌ・コタン、知床アイヌ民族エコ・ツアーとタロコ民族のイサウさんらと情報センタースタッフで行動しました。今日はこれから旭川嵐山のチセ作りの手伝い、明日から兵庫と慌しいですが、今のうちに若干の報告を載せておかないと瞬く間に今月が終わりますので、駆け足で報告します。

最近の有識者懇のニュースも気になりますので、日誌は簡単に!


まずは16日(火)に北大アイヌ・先住民研究センター講演「台湾における開発と先住民族‐太魯閣国家公園の場合‐」で、スコットさんとイサウ・タタオさんのお話を聞きました。

タロコ民族はアタヤル(タイヤル)民族の支族とされていたところから独立し、2004年に台湾政府から12番目の原住民族として認められます(なぜ先住民族といわないかは09/4/28blog参照)。
原住民族への抑圧について聞く事が出来ました。
隘勇線(あいゆうせん)、撫墾署、新城事件(1896)、佐久間左馬太の五年理蕃計画などはじめて聞くことばかりでした。
1872年より米国は先住民族の土地に国立公園を設置し始め、他国のモデルとなります。この当たりももう少し調べてみようと思います。
台湾では1979年に国家公園法ができ、‘86年に太魯閣国家公園が設置されます。
公園法による束縛と先住民族の権利とのぶつかりも多くあることを知りました。
先住民族としての権利回復運動が進んでいると思えた台湾も、まだまだ課題があることを伺うことが出来ました。おいおいこのblogにおいても紹介していきたいと思います。
イサウさんはこの国定公園の中で生活をしています。徒歩でないと行けない山道を三時間登って家まで行くそうです。インターネットで調べると緑の深い、とても素晴らしいところです。



イサウさんはタロコ民族の教会の長老と伺っていたので60代の方かと思いきや、お若い方でした。
スコットさんも40代前半でユニークな方でした(画像は小さくしています)。


その日は米インディアナ大で学んでいるSHINGO君が留萌で鰊(アイヌ語でヘロキ)調査に来るというので一緒に乗せて帰宅。彼と二日間、いろいろな情報交換をしました。「イシ・最後のインディアン」の衝撃的な話なども聞き、よき学びとなりました。