アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

道内「アイヌ政策を考える懇談会」の要望

2009-06-05 09:04:42 | インポート
うっかり間違ってしまいそうですが、国が行なっている有識者懇談会とは別に、道内のメンバーでつくる「アイヌ政策を考える懇談会」があります。
メンバーは国の有識者懇の委員でもある高橋はるみ道知事と加藤忠・道アイヌ協会理事長、常本照樹・北海道大教授の3名に加え、本田優子札幌大学教授(アイヌ語)と畑宏明道埋蔵文化財センター理事とのこと(08/8/5blogと同日の道新記事)。

同委員会が国の有識者懇に以下の要望をしたことが報じられました。

意見書は高橋知事が前回(4月24日)の懇談会で提言したアイヌ政策の統括窓口を政府に作ることや審議機関の設置など6項目を基本に、アイヌの施策推進の根拠となる立法措置や生活支援の拡充を求める内容となる。(毎日新聞5月27日地方版 http://mainichi.jp/hokkaido/news/20090527ddlk01010316000c.html)

高橋知事の提言6項目というのは、国の第7回有識者懇(4/24)で審議されたもののようで、以下の有識者懇URLの第7回「配布資料 [PDF]」をクリックすると出てきます(資料2のほうです)。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainu/kaisai.html
以下、引用します。

これからのアイヌ政策の推進に向けた提言
1 立法措置
 アイヌの人たちに対する生活支援、教育支援及び産業振興など総合的なアイヌ施策の推進の根拠となる法律の制定

2 推進体制の整備
 ①アイヌ政策を統括して推進するセクションの設置
 ②アイヌ政策を継続して審議する機関の設置

3 アイヌ民族についての国民理解の促進
 ①学校教育を通した理解の促進
 ・教材の提供と授業での実践
 ・学習指導要領等への記述
 ・教職員研修の充実
 ②全国規模の恒常的な啓発活動
 ・(例)アイヌ民族の日の設定
 ・アイヌの人々をモデルにした映画やドラマの作成
 ・公共の場等におけるアイヌ文化の展示など

4 生活の向上を図る施策の充実
 ①全国調査の早急な実施
 ②個人認定方法の検証
 ・国民理解を確保するため、公平性透明性を担保する仕組みを工夫・
 ③生活実態を踏まえた生活向上支援策の構築と拡充
 ・生活の安定や生活環境の改善のための支援
 ・大学等への進学支援
 ・主に若年層に対する就労支援
 ④アイヌ文化と産業振興
 ・伝産法の「伝統的工芸品」指定に向けた取組への支援
 ・誘客や販路拡大のためのマーケティング調査の実施
 ・観光産業振興のための国内外への大規模なプロモーション

5 アイヌ民族との共生の象徴となる施設の設置
  国家的見地からの国営公園等を核として、遺骨の慰霊や、文化の復興、研究、展示などを一体的に行い、広く国民の理解促進が図られる場を整備

6 文化振興施策の充実
 ①アイヌ語の振興
 ・音声資料の収集、整理、活用の迅速化を図る体制の整備
 ・地名のアイヌ語表記など、積極的活用による普及
 ②アイヌ語を含むアイヌ文化の総合的・実践的な研究教育機関の設置
 ・アイヌ民族の研究者、文化伝承者、伝統的工芸技術者の育成
 ③イオル再生事業の国直轄化による整備促進
 ④国が主体となったアイヌ文化振興財団の推進体制の強化




「1 立法措置」には、先住権を明記させることは重要ですね。法的に先住権を位置づければ、時間をかけてでも施策は練ることが出来ますね。

「2 推進体制の整備」には、国連の先住民族権利宣言第3条、4条に定められた「先住民族の自己決定権」、「自律あるいは自治の権利」を意識しているのかが知りたいですね。設置を希望する審議機関にはアイヌ民族を相当数入れることや、アイヌ民族の自治機関などを想定して考えてほしいものです。

「3 アイヌ民族についての国民理解の促進」については、どこでだったか話題になりましたが、NHKの大河ドラマでアイヌ民族を扱うなど積極的に啓発活動を展開してもらえたらいいですね。NHKでアイヌ語講座を行なうとか、毎週、アイヌ語だけの番組をつくるとか・・・。

「4 生活の向上を図る施策の充実」では、何よりも早急かつ詳細な全国レベルの調査を行なうためにも調査委員会を設置することを望みます。過日もアパルとヘイト政策撤廃後に作られた「真実と和解委員会(TRC)」に関する新しい映画「レッド・ダスト」を観ました。差別の実態と改善、癒しは相当の努力が求められることと思います。

「5 アイヌ民族との共生の象徴となる施設の設置」に関しては、北海道新聞(05/29)で、国営の慰霊施設を苫小牧周辺に設置するように道アイヌ協会が要望することが報じられていました。北大や札医大だけではなく、東大、米国、英国、ロシアの博物館などにも保管されている遺骨の返還を求め、この施設で慰霊し、それに併設するかたちでアイヌ文化の継承や研究の拠点となる場を作ることを求めている、と。以下、道新記事URL参照。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/168130.html


高橋知事の提言に関しては上の箇条書きの「資料」のみの情報ですから詳細を早く知りたいですし、道の「懇談会」もちゃんと議事録をオープンにするなど、すばやく正しい情報を出して頂きたいですね(わたしが知らないだけならごめんなさい)。国の有識者懇のほうも議事録はなかなか出てこないし、第8回も開催されたはず(5月29日?)ですが、その議案・資料もUPされなくなりましたね。忙しいのでしょうか。
でも、もうすぐに最終のまとめが出されてしまいますね。


そうそう。毎年6月はじめに旭川で開催される知里幸恵さんの記念祭が8日(月)に行なわれます。
来週こそはチセ作りをしてきます。