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八咫烏の声

神社の行事、社務などの日記です。

鳴かず飛ばず

2011年11月01日 10時19分24秒 | ことわざうんちく

今日から11月です。

霜月朔日。

こんにちはI権禰宜です。

もう11月ですか・・・。今年も残すところあと2ヶ月。

・・・早いですね。

さて。本日から新企画「ことわざうんちく」をボチボチしていこうかと思います。

これでブログのネタが無い日も大安心!

まず最初のことわざを何にしようかと、「よい子のことわざ漫画」からパラパラめくって選んだところ、これに決定。


「鳴かず飛ばず」


昔々・・・斉国(山東省辺り)に威王(田因斉)という王様がおりました。

威王は先代の桓公(田牛)の後を継いでからというもの、数年間遊び呆けてまったく政治を見ようとしませんでした。

さらに臣下達も王の不興を買う事を恐れて誰も諌めようとせず、斉の国は徒に勢力を弱めるのでした。

そんな中、淳于?(じゅんうこん)という者が王の前に進み出てこう言いました。


淳:「王様、この斉の国には大きな鳥がおり、王城の庭にとまっておりますが、この大きな鳥は3年の間鳴きもしなければ、飛びもしません。王様はこの大きな鳥をご存知でしょうか?」


威:「・・・はっはっは。なるほど、それはけったいな鳥だ」


威:「しかし先生よ、一つ教えて差し上げよう。その大鳥は鳴きもせず飛びもしなければそれまでの鳥だが、ひとたび飛び立てば天まで翔け昇り、ひとたび鳴けばその声は人々を驚かすことだろう」


その日から威王は人が変ったように政務に励み出します。

斉の家臣たちを一同に集めて、その中から即墨(斉の街の一つ)の大夫(長官)を呼んで言うには、


威:「余が王となって以来、即墨に赴任したお前の評判は散々に悪いものであった。そこで内密に即墨を視察させたが、土地は開かれ、人々は豊かな生活を謳歌していた。これはお前が余の側近に媚びへつらう事無く政務に励んだからである」


・・・と、その大夫を万戸侯(大名)に封じました。

次に阿の大夫を呼びだすと、


威:「余が王となって以来、阿に赴任したお前の評判は頗る良いものであった。そこで内密に阿を視察させたが、土地は痩せ、人々は貧しい暮らしを強いられていた。これはお前が余の側近に賄賂を送り己の名声を高めようとしたからである」


・・・と、言って阿の大夫を処刑し、同じく賄賂を受けとった側近たちも処刑しました。

以後、威王は斉を栄えさせ戦国時代の名君の一人としてその名を残しました。


後年、威王が魏国(山西省辺り)の恵王(魏罃)と会見した際に、このようなエピソードが残されています。


恵:「大国・斉の王たる貴方の事でしょうから、世にも珍しい宝物をお持ちなのでしょうね?」


威:「いや、その様な物は持っていませんよ」


恵:「ご謙遜を・・・私でも車(馬車)12台を明るく照らす事の出来る宝珠を持っています。貴方が宝を持っていないわけはないでしょう?」


威:「・・・私が考える宝と貴方の考える宝は違うようだ」


恵:「はて?」


威:「お前達入ってきなさい」

と、4人の家臣を呼び出します。


威:「これに並んだ私の宝(家臣)は千里を照らし出します。まして車12台など」


恵:「・・・お恥ずかしい事を申しました・・・」


恵王は大変恥入ったということです。




以上、「鳴かず飛ばず」のお話でした。ちなみにこの話は、斉の威王だけではなく、楚の荘王鼎の軽重を問うた王様です)にも似たような話があるのですが、今回は威王バージョンで。

現在ではこの「鳴かず飛ばず」のことわざは「ただ無為に過ごす」みたいな感じで使われていますが、本来は「来たるべき時の為に雌伏している」の意味です。

志も無く、ただただ無為に毎日を過ごしている人は「鳴かず飛ばず」ではありませんので・・・ご使用には注意を(笑)


私も無為に過ごさぬよう・・・気をつけます(笑)

I権禰宜