インフルエンザのせいなのか、タミフルの副作用なのか、あるいはそういうこととは無関係な存在論的不安のせいなのか、薄気味の悪い夢を見た。学校のような場所が舞台で、しかし、学校と行っても大学ではなくて、一貫制の中高のような感じで、大きな体育館と広いグランドがある。私はどうやら生徒の一人らしい。TVドラマ『野ブタ。をプロデュース』の主人公のように覚めた目で学校という世界を眺めている。ところがこの学校には内部しかなく外部というものがない。「学校の外」というものが存在しないのだ。社会学者アーウィン・ゴフマンのいうところの「全制的施設」(トータル・インスティテューション)なのである。私は「学校の外」に出たくてしかたがない。しかし、外部への出口はない。出口に違いないと思って進んでいくと、まるでメビウスの輪のように、「学校の外」ではなく「学校の裏側」に行ってしまうのだ。そこは「学校の表側」よりもさらにうんざりする世界であった。私は酸欠状態になりながら、廊下の窓を開けようとするが、どの窓もはめ込み式で開け閉めのできない構造になっている。私は窓ガラスに触れてみる。するとガラスと見えていたものは実はガラスではなく布で、その古くて傷んだ布は指で掻きむしるとボロボロと破けて、そこから気持ちのよい風が入って来るのだ。ああ、助かった、と私は深呼吸を何度もする。そこで目が覚めた。布団が重かった。
現実の世界も不穏な空模様をしている。
遅い朝食は、いつものトースト、サラダ、紅茶に加えて、栄養を摂るために目玉焼きとウィンナー炒めを付ける。
もうしばらく「家の外」に出られない生活が続く。