花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「鶴文様」について

2009-12-08 | 文様について

presented by hanamura


そろそろ年賀状の作成で頭を悩まされている方も
多いのではないでしょうか。
来年の干支は寅ですが、
吉祥絵柄ということで「鶴」や「亀」の絵柄を
年賀状にお使いの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

とくに鶴は、
「鶴は千年、亀は万年」というフレーズや
日本昔ばなしの「鶴の恩返し」、
折り紙でつくる折り鶴などで
馴染み深い鳥のひとつですね。
もちろん着物や帯においても
よく見受けられます。

着物や帯に文様として配されるものの多くは、
吉祥文様として古くから愛されてきたものが多いのですが、
鶴も福や長寿の象徴とされ、
着物や帯だけでなく、さまざまな品に用いられてきました。
お正月や結婚式などのお祝いの席で着用する着物や帯には、
ほんとうに数多く鶴の文様が見られます。

鶴が福をもたらす霊鳥となったのは、
古代の中国においてです。

紀元前11000年ごろの周王朝の時代に
中国では世俗をけがれたものとして、
世を捨てて隠棲する人々が出現するようになりました。
これらの人々は単に政治的なものに嫌気が差して、
あるいは政争に破れたことで、
山にこもり世俗と自身を断絶させていました。

その「隠遁思想」と道教に端を発し、
山にこもって修行を行い、
倫理や道徳の実践を通じて徳を積むことで
福禄と長生きを得ようとする「神仙思想」が結びつきました。

よく中国の物語のなかで
とてつもない超人的な能力を持った老人を指して
「仙人」という表現がされますが、
この「仙人」は、神仙思想において不老不死の賢者として登場したのです。

もともと中国では、
広い大地に細く長い足で凛と立つ美しい鶴の姿が、
気高い賢者の象徴とされていました。

神仙思想が起こってからは
くわえて空想上の「仙人」たちが空を飛ぶ際に乗るものとしても
扱われるようになります。

姿形が清らかで孤高な鳥というだけではなく、
その寿命が他の動物より長寿であることからも、
不老不死の仙人と結びついたようです。

日本にはこの中国の思想が
平安時代にもたらされました。
そして、着物などをはじめとして
さまざまな装飾品や調度品に表されるようになりました。

しかし日本では、実際のところ、
鶴はカラスや雀のように、
各地で頻繁に見かけるということはありません。

野生の鶴は北海道の釧路湿原に生息するものと、
鹿児島県に飛来するものが主です。

その鶴たちも例にもれず、
生息数は激減しているとのこと。
ほんとうに空想上の鳥となってしまわなければ
よいのですが。



ちなみにいま花邑には
紅型の鶴たちがいます。
こちらはいまのところいつでもご覧になれますので、
よろしければどうぞ。

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次回の更新は12月15日(火)予定です。


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