花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「萌黄色」について

2014-02-06 | 和の伝統色について

presented by hanamura ginza


立春を迎えましたが、
まだまだ春は先と思えるような寒い日がつづいています。

それでも、家の近くに植えられた梅の蕾もほころびはじめ、
木の枝には新芽が芽吹いています。

寒空の下で眺める鮮やかな紅色の梅も美しいものですが、
黄緑色の新芽にも生命力あふれる瑞々しさが感じられます。
初々しく顔を出した新芽の姿は、見ているだけでも心が緩みます。

遠い昔の人々も、こうした新芽に心を惹かれたのでしょう。
伝統色には、、若芽色、若苗色、若草色、若葉色、萌黄(もえぎ)色など、
新芽や若葉をあらわした色が多く残されています。
今日はその中のひとつ、「萌黄色」についてお話ししましょう。

萌黄色とは、藍に刈安などの黄色系統を加えて染め上げられた色で、
名前のように草木が萌え出る時の色を表現したものです。

若葉色や若草色など、
他の黄緑色も萌黄色と同じように
藍に刈安を加えて染め上げられた色で、
色の配分によりさまざまな黄緑色がつくられました。

その中でも萌黄色は、平安時代の頃より広く用いられ、
爽やかな色調のためか、若者の色として人気がありました。
平安時代の後期につくられた「今昔物語」や
鎌倉時代につくられた「平家物語」では、
萌黄色の衣装や鎧を身にまとった若者が登場し、
色を通して若者の初々しさや清々しさが表現されています。

江戸時代になると、
近江でつくられた萌黄色の蚊帳が大流行しました。
蚊帳そのものの人気もありましたが、
とくに萌葱色の蚊帳が人気だったのは、
萌黄色には人を和ませる効果があるとされていたためのようです。
当時つくられた浮世絵の中には、
この萌葱色の蚊帳を張った遊女部屋の様子が描かれています。

ちなみに、萌黄(もえぎ)色と同じ呼び名の萌葱(もえぎ)色という色もあり、
この萌葱色も江戸時代に流行しました。
萌葱色は葱の芽の色をあらわした濃い緑色とされ、
歌舞伎でみられる縦縞の幕の色としても用いられています。
同じ呼び名で、両方とも緑色系統の色合いなので混乱してしまいますが、
萌葱色は江戸時代につくられた色で、
浅葱色の人気に引きつられその名前がつけられたようです。





上の写真の信州紬は、
その萌黄色と若草色などの色合いと焦茶色で格子縞が織り出されたものです。
爽やかな萌黄色にあたたかみのある茶色の組み合わせは、
これからの季節にみられる萌え出る若芽の透明感のある美しさが感じられます。

春の訪れを感じさせる色合いの着物を身にまとい、
立春を祝いたいですね。

上の写真の「格子縞文様 信州紬(松本紬) 袷 」は花邑 銀座店でご紹介中の商品です。

●花邑 銀座店のブログ、「花邑の帯あそび」次回の更新は 2 月 20 日(木)予定です。
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