花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「柏文様」について

2012-04-04 | 文様について

presented by hanamura ginza


4月を迎え、東京ではようやく桜が開花しました。
嵐が多いこの季節は、
せっかく咲いた花が、風雨のために散ってしまうことも多く、
抜けるような青空の下で、そういった花々を見ることが、
とても貴重に思えてきますね。
今年はしっかりと満開に咲いた桜を眺めたいものです。

華やかな花が散ってしまうのは、
さびしいことですが、
そのあとに生えてくる若葉もまた、美しいものですね。
春風でさわさわと揺れ輝く若葉を眺めているだけでも、
爽やかな気持ちになります。

今日は、その若葉の中でも日本の文化に縁の深い
柏文様についてお話ししましょう。

柏は、ブナ科に属する木で、
北海道から九州まで自生しています。
痩せて乾燥した土地でも育ち、丈夫なことから、
防風林として海岸に植えられることもあります。

柏の葉は新芽がでる春まで落ちることはありません。
また、その葉は良い香りがします。

こうしたことから、
柏の葉には、「家系が途切れず子孫繁栄する」
という意味合いが込められ、
端午の節句には柏の若葉で包んだ柏餅が食されます。

現代では、柏餅のほかには食べ物を包むことはありませんが、
古来には、柏の葉は食物を盛る食器の役割をはたし、
神前に供えられる食べ物は、
柏の葉に盛られていました。

「かしわ」という名前自体も、
ごはんを盛るという意味合いをもつ
「炊葉(かしきは)」に由来しています。

一方で、神社などでお参りをする際には
拍手を打ちますが、
これには神意を呼び覚ますという意味合いがあり、
柏はとくに神事と深い縁があるようです。

こういったことから柏の文様は、
室町時代から神官などがもちいる家紋のモチーフとなりました。
現代でも、神紋には柏がモチーフとなったものが多く、
柏の木が植えられた神社もよく見かけられます。

鎌倉時代に、武士たちが実権を握るようになると、
武士たちの間でも柏文様は好まれ、
柏の葉を3枚並べた「三つ柏」や5枚並べた「五つ柏」、
2枚が並んだ「抱き柏」など、
柏をモチーフにした家紋が多くつくられました。

江戸時代には、当時人気を博した歌舞伎役者の
尾上菊五郎(おのえきくごろう)の屋号、音羽屋が、
重ね扇の中に抱き柏を配した文様を定紋としました。
この紋は、音羽屋を贔屓にしていた客が、
扇に柏餅を乗せたものを
菊五郎が扇で受け取ったという逸話が由来のようで、
粋な江戸の文化が伝わってくる話です。

このように、縁起の良い文様としても人気のある柏文様ですが、
家紋の種類の多さに比べ、
着物などの意匠として用いられることは、少ないようです。



上の写真の名古屋帯は、
大正~昭和初期につくられた絹布からお仕立て替えしたものです。
たくさんの柏の葉が重なるように意匠化されています。
沈んだ紫色系のお色目が美しく、
シンプルながら艶が感じられますね。

桜が咲けば、次は「目に青葉」の季節です。
お気に入りの装いで外に出て
季節のうつろいを感じならがら、
いちばん良い季節を楽しみたいですね。

※上の写真の「柏文様 名古屋帯」は花邑銀座店で4月6日(金)ご紹介予定の商品です。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」次回の更新は4月12日(木)予定です。

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