花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「渦巻き文様」について

2010-08-03 | 文様について

presented by hanamura


8月を過ぎて、いよいよ夏も真っ盛りです。
暑い日が続いているためか、
「暑いですね」というフレーズが
あいさつ変わりになってしまっているようです。

昨今は、ビアガーデンが流行しているようですが、
この暑さも流行に一役買っているのでしょう。
外でのお食事は、この季節ならではの楽しみでもあります。

しかし、夏は蚊も多いため、
外にいるといつの間にか蚊に刺されていることがよくあります。

蚊に刺されないようにするために
現在ではさまざまなものが販売されていますが、
やはり、「蚊取り」とくれば「線香」、
「蚊取り線香」です。

夏の夕暮れにどこかからか漂う蚊取り線香のにおいは、
どこか懐かしく、この季節ならではの風情を感じさせます。

この蚊取り線香の形状は、
ご存知のとおり「渦巻き」ですね。
今回は、この渦巻きの文様についてお話しましょう。

蚊取り線香は、ぐるぐると渦を巻いたその形が海外ではめずらしく、
外国の方のおみやげにも喜ばれるようです。
それは、渦巻きの文様が
世界各地で用いられている普遍的な文様であることとも
関係しているのでしょう。



渦巻き文様の歴史はたいへん古く、
人類最古の文様ともされています。
世界各国の紀元前3,000年の地層からは、
渦巻き文様を記した器などが多く
発掘されています。

日本でも、縄文時代につくられた
「縄文土器」に刻まれた渦巻き文様は、
有名ですね。

一方、遠く離れた西洋のアイルランドでは、
ケルト人がこの渦巻き文様を
日常の工芸品や十字架などに
刻んでいました。

古代の人々にとって、
渦巻きの文様は呪術的で神秘的な意味合いをもつ
文様だったようです。
そのため、シンプルな形状に反して
古くから多くの学者に研究されている、
奥深い文様なのです。

ところが、日本において渦巻き文様は、
弥生時代以降になると、
影をひそめていきます。

着物や帯の意匠にも
雲文様や水文様、唐草文様などの
文様にともなわれながらも、
単一であらわされることは少なくなりました。

その渦巻き文様が再び脚光を浴びるのは、
明治時代後期の頃です。
当時流行したアールヌーボーの文様とともに、
斬新な文様として着物や帯などの意匠にも
多く用いられるようになりました。



上の写真の渦巻き文様の名古屋帯は2つとも、
大正~昭和初期頃につくられた古布からお仕立て替えしたものです。
2つともシンプルな意匠でありながら、存在感があります。

影をひそめていた渦巻きが、
時代の変革期に再びあらわれるとは、
とても象徴的ですね。
ファッションやデザインというものは、
その時代の空気を反映する鏡でもあります。
もしかしたら、時代の大きな「渦」が
まさにそのとき生まれたことが
大きな要因なのかもしれませんね。

※写真の名古屋帯は花邑銀座店にて取り扱っています。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は8月10日(火)予定です。


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