presented by hanamura
「洗い」について
着物や帯をいくつか並べてみると、
実に、さまざまな装飾がされているのが分かりますね。
デザインの違いだけではなく、
織りや、染め方、刺繍にも違いがあり、
とても繊細な技術が用いられています。
そのため、着物や帯を洗うときには、
それらの装飾を損なわないように、
細かな気配りをしなければいけません。
しかし、同じ「丸洗い」でも、
業者さんによってその洗い方は違うようです。(※1)
そして「丸洗い」だけではなく、
最近耳にすることが多い「京洗い」も例外ではないそうです。
悉皆屋さんは京洗いについて
『京洗いと呼ばれるものがどういうものか、
みんなぼかしているので、いちがいにははっきりとはいえません。』
と答えていました。
しかし、「京洗い」や「丸洗い」のように、
最近になってはじまった洗いには、
ドライを用いることが多いようです。
一方、「洗い張り」と同じように昔ながらの方法で
行う「生洗い」という洗い方もあります。
『生洗いというのは、個人の方が昔ながらの方法でやっている、
いわゆる染み抜き屋さん。
机の上に着物を広げて、薬品をいくつか使いながら、
袖口やシミをこすったりたたいて汚れを落としたり、
汗を飛ばしていきます。』
生洗いは染み抜き屋さんの机の上でやっているんですね。
机の上で丁寧に汚れを落としていく「生洗い」は、
「洗い張り」と同じように安心できる洗い方かもしれません。
着物や帯にとっては、昔ながらの方法で
時間をかけて丁寧に洗うことが一番良い方法なんですね。
しかし、その洗い張りでさえも、
用いる原料などが不足して、昔と同じような方法で洗うのは、
なかなか難しいことのようです。
『洗い張りの仕上げのときには、昔は板に生地を貼って
「ふのり」を引いてましたが、
今は「ふのり」がないのでほとんどが合成糊です。
「ふのり」は最高の糊です。
合成糊はものすごく静電気が出るので、
裾なんかにまとわりついてほこりを吸ってしまいます。
仕事をしていると合成糊と「ふのり」のレベルの差が
とても大きいことが良く分かります。
それがわかっていても、今は「ふのり」が少ないので、
みんな合成糊になっています。』
天然の海藻からつくられる「ふのり」(※2)。
この「ふのり」の原料そのものも、なくなっているのでしょうか?
『ふのりの原料は、なくなっているし、高い。
それにすぐ腐るので、置いておけないんですよ。
合成糊は腐る心配がなく、簡単にできちゃう。
そうやって、みんなだんだんとはしょっていってしまうので、
肝心なものがなくなっているんです。』
働き手や、技術が変わっただけではなく、
大切な原料でさえも少なくなっているんですね。
(※1)7月29日(火)更新のブログ「悉皆屋さんのお話-その4-」
をご覧ください。
(※2)海藻の一種を水洗し脱塩して天日にて漂白処理したものが「板ふのり」。
「板ふのり」を煮て糊として用いる。
花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は8月26日(火)予定です。
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