ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「LAコンフィデェンシャル」 ジェームズ・エルロイ

2008-03-12 13:15:52 | 
単純明快な楽しみも確かにあるが、複雑で難解であるがゆえの楽しみって奴も確かにある。

数多在るミステリーのなかでも、その事件の複雑さ、織り成す人間模様の絡み具合、場所は近いのに時間のずれからくる不明瞭さなど、一ひねりも二ひねりも工夫を凝らすのが、表題の著者エルロイの特徴だ。

白状すると、一時は嫌っていた。読みにくい、分りづらい、長いの三重苦のミステリーだからだ。ところが、しばらく時間を置くと、またも読みたくなるから不思議な作家だ。

個性の強いカクテルのような作家だと思う。アルコールが強目の上に、フルーツの甘みと、隠し味のスパイスが絶妙で、千鳥足でふらつきながら、二日酔いの予感に怯えつつも、ついつい飲みすぎてしまう。

他に同じ味わいの作家を読んだことがないから、それだけ個性的だと言えるのだろう。ただ、ロス暗黒史4部作が代表作と言われるように、人間の心の奥の暗い部分を好んで取り上げるので、連続して読みたい作家ではない。

少し時間を置いて、心を休ませないと、次の作品には取り組めない。読者の心にも、相応のダメージを与える罪な作家なので、覚悟を決めて読んでみてください。強いてお勧めはしませんがね。
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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (タク)
2008-03-12 17:22:14
>アルコールが強目の上に、フルーツの甘みと、隠し味のスパイスが
絶妙…
表題作は映画でしか見たことがありませんが、映画はまさに上述の表
現がぴったりという感じがしました。特に「フルーツ」!
そうそう、そうだった、とにやにや。

追伸、先ほど税理事務所からもどりました。
ここ数日、税理士さんからのチェック電話に追われて右往左往してま
した。素人の帳簿はパソコンが利口になったとはいえ、しょせんは素
人です。魔法がかけられたような申告書にさきほどようやくハンコつ
いて、確定申告終了でした。バンザイ!
今日はコンフィデンシャル的カクテルでも飲みたい気分です(笑)
ヌマンタさんはまだおあずけですね。
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Unknown (ごみつ)
2008-03-13 00:29:53
今晩は。

私もこれは映画は見ました。エルロイはいつか私も読みたいと思っている作家です。

ちょと前に「ブラック・ダリア」(映画)を見たのですが、こっちもかなり重たかった。この作品をブログ記事にした時に知ったのですが、エルロイの母親はブラック・ダリア事件の被害者なんですよね!

きっとこの事件が、彼の作品の暗い部分の源になっているのだろうなと思いました。

是非、小説も読もうと思います。
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Unknown (ヌマンタ)
2008-03-13 12:37:48
タクさん、こんにちは。原作は映画よりも濃いです。むしろ、映画が実にスマートにストーリーが流れることに驚いたくらいです。その分、エルロイの毒が薄められた気もします。普通に楽しむなら、映画のほうがいいかも・・・です。

仕事が次第に煮詰まってきました。ブログも少し滞りそうです。
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Unknown (ヌマンタ)
2008-03-13 12:40:57
ごみつさん、こんにちは。エルロイは出生もそうですが、その後の人生が壮絶。だからこそ、あれほどに人の暗い側面を抉り出せるのだと思います。映画「ブラックダリア」も原作より、普通に楽しめるのが良いです。どうも、原作は毒が濃いです。それが魅力ですが、ちと厳しいな~と思うこともあります。
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Unknown (kinkacho)
2008-03-13 17:31:37
ヌマンタさん、こんにちは。

「LAコンフィデェンシャル」は映画だけしか見ていません。女優さんの赤い唇が印象的でした。白い肌にしか似合わない口紅だなっと…
「ブラック・ダリア」は本だけ読みました。う~ん屈折した作者だなと思いましたね。隠し味に毒薬それも神経毒って本でした。
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Unknown (ヌマンタ)
2008-03-15 09:40:34
kinkachoさん、こんにちは。神経毒・・・言い得て妙ですね。ほんとジワジワきますから。気がつくと、その毒が効いている感じです。これほど癖の在るミステリー作家も珍しいです。
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