ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

魍魎の揺りかご 三部けい

2013-05-07 11:56:00 | 

ポセイドン・アドベンチャーにバイオハザードの味付けを加えたパニック&ホラー漫画。

一言で評すれば、これで十分。だけど目を離せない面白さがあった。

豪華客船での修学旅行を楽しむ高校生たちを突然襲った転覆事故。逆さまの状態で浮かぶ薄暗い船中で呆然とする高校生たちを襲ってくるのは、同じ船の乗客で、一度は死んだはずの生ける屍人たちだ。

しかも、この屍人は肉食であり、咬まれると感染するらしい。しかも、咬まれて感染しても意識は数時間は保たれ、自分が屍人化する恐怖に怯える。でも、いずれ屍人と化して生きている人間を襲うようになる。

逃げ惑う高校生たちも一筋縄ではいかない曲者揃い。裏切りと策謀、信頼と友情が交錯する人間模様もよく描かれている。特に優等生ながら残虐な性格の高校生と、不良学生であり頭も切れて腕も立つ青年のキャラ立ちが面白い。

だが、小柄で気弱な男の子の冷静な判断や、足手まといなはずの盲目の少女や、疑い迷いながらも助け合って生き延びようと頑張る普通の少女たちの姿が、この陰惨な漫画の清涼剤となっている。

周囲を道連れにして屍人化させようとする迷惑な女子高生や、親友を殺したクラスメイトへの復讐に立ち上がる女子高生の切ない恋心も印象的だ。だが、自分が屍人化することを自覚しながらも、意識があるうちに仲間を助けようとする高校生の姿が清々しい。

掲載された雑誌(ヤング・ガンガン)が青年誌なのでお色気シーンが散りばめられているのが愛嬌だが、過剰に厭らし過ぎないのも良い。恐怖にエロスの相性の良さもあるが、健全な高校生たちの健気さと相まって、作品に快適なリズムを生んでいる。

掲載誌がマイナーなので、あまり知られていない漫画だと思いますが、多少乱雑なストーリーと迫力ある画風のバランスが上手く調和している佳作だと思います。全6巻ですので、読みやすいと思います。漫画喫茶などで目にしたら是非ご一読を。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 小銭入りのお守り | トップ | 富士山の世界遺産登録に思うこと »

コメントを投稿

」カテゴリの最新記事