週末、日本人力士の久方ぶりの優勝で日本各地が湧いていた。
初場所より14年目の優勝だというから、琴奨菊関の感慨はひとしおであろう。モンゴル勢に優勝の賜杯を独占されっぱなしだったせいか、マスコミ等の騒ぎっぷりも半端ではない。
この調子で来場所も優勝を、なんて気軽に口にするアナウンサーもいたが、如何なものかと思う。率直にいって、この関取が優勝する日が来るとは、私はまったく予想していなかった。
琴奨菊は、左四つと、がぶり寄りを得意とする。今場所でも、優勝候補筆頭の横綱・白鵬を、その得意技のがぶり寄りで破ったことで、大いにはずみがついたようだ。
だが、ご存じの方もいると思うが、この人のがぶり寄りは、少し変わっている。普通は、まわしをしっかり取って、相手をグイグイと押していく。ところが、琴奨菊関はまわしをとらずに攻める少し変わった、がぶり寄りなのだ。
そのせいで、相手にうっちゃられることも多く、それがはっきりとした欠点となっていた。このことは、だいぶ前から指摘されていたが、頑ななまでに、彼は自分のスタイルを変えようとしなかった。
おかげで、大関となっても優勝戦線からは縁遠い力士となってしまった。得意技と、その欠点が明白なので当然だと思う。しかし、自らの取り口に頑なな彼は、決して直そうとはしなかった。
嬉しい初優勝にケチをつけるのも厭なのだが、今回の優勝は、横綱・白鵬のモチベーションの低下が大きい。今まで圧涛Iに、琴奨菊をカモにしてきた白鵬が、今場所に限って簡単に土俵を割っている。
琴奨菊にとって、最大の難敵を倒せたことが、初優勝に大きく貢献している。白鵬戦以降、完全に勢いに乗っての優勝ではあるが、率直にいって横綱の器ではない。相手に勝つことよりも、己の美学に拘った土俵人生を送ってきたのが、琴奨菊である。
私はこの人の相撲は、決して嫌いではない。嫌いではないが、勝つための強固な意思に欠けた人だとも思っていた。たとえ見苦しくても、勝とうと奮闘するモンゴル人力士に勝てなかったのは、当然である。
久々の日本人力士の優勝に沸くのはいいが、あまり期待し過ぎないほうが良いと思います。