のら猫の三文小説

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新しい子猫たち No.1909

2021-07-09 00:40:27 | 新しい子猫たち 
洋太郎は 紡績 と云う 今ではもう主流とは決して言えない業種に長くいて、紡績 そのもの も ぱっとしない会社なので軽く 一般の人には 見られている部分はあった。紡績中央研究所の化学分野での凄さ とか この研究所を大きくした事を知っている人は限られる。紡績の運用本部の運用実績は 投機の神の子と言われた 神之助でさえ 紡績の運用本部には一目を置いていたが、それも知る人ぞ知っている話。


純子の長男は 九州に点在していた鉄鋼メーカーをまとめ上げ、世界一と言われる鉄鋼メーカーを作り上げた。純子は叱咤激励しながらも手助けしていた、純子が大切に育てた 紡績は 洋次郎と云う 心の優しい、そして奥さんを心から愛する次男に紡績を任せた。そして紡績を愛の会社と言われる会社にした。純子は 決して 愛の人ではなかった。明治から戦中戦後を生き抜いた人なので、紡績には しっかりと資産を持たせた。純子の金目の遺産は紡績に集めたと云っても過言ではなかった。ただそれだけに鉄鋼絡みの株式などは、長男に引き渡したし、長男も 紡績に金を集めすぎとは決して言わなかった。純子の思いを知っていたし、純子は怖いのだ、逆らう事は大変危険と知っていた。


鉄鋼は大きくなって世界一の鉄鋼メーカーになった、株式は長男の血筋が 色々な資産管理会社の名前に変えながら、保持していた。途中 洋之助が代行して 便宜的に 売ったり 買ったりはしていた。そこは洋之助の才覚を認めていた。 純子の実業分野の残した遺産の株式は、実は鉄鋼と商会 が 大きいのだ。化学は紡績の子会社にして上場企業として進んだように 紡績の子会社と云う側面がいつまでも残った。鉄鋼は長男筋が そして商会は 純子の長男筋と 次男の紡績の継承者とが折半のような 株主の割合と云えた。 ただ 洋之助の時代に 一部の株式は 洋之助が 長男筋のみんなを育成し 資金援助する事で 洋之助の家系に移動して 洋之助つまり今は洋太郎の方が多くなっていた。 長男筋は 今では恵たちが守っていて、ここは実業よりも資産、幾つの中小企業はあるが大きくはしなかったが みんな堅い仕事をしていた。


恵は治部ビルを作ったが、それも実は単なる資産管理会社の積りで恵の母親 義母の真知子は資産を恵に預けたのが前身と云えた。それだけ恵を信頼するようになっていた。治部ビルは 恵ではなく 嫁の小夜が勝手と云ったらなんだが、日本一の不動産会社にしてしまったのだ。長男筋は元々都心に大きな土地も持っていたし、地方も特に九州では広い土地も持っていた。東京をはじめとして日本各地そして世界に幾つかの商業ビルを保有する治部ビルを作ったのは小夜だった。実は治部ビルは 資産管理会社の一面が強い。そして長男筋は医師と学校の先生と云うか学者が多く出て、実業筋にはなかなか人材もいない。


恵が嫁いできた時は旦那は鉄鋼の社員にして最後は役員にもなったが、その鉄鋼でさえ、今は長男筋の人はそんなにいない。商会になるとまるでいない。ただ恵はマチコジブ記念病院を作り、医師となった家系の人たちを保護し、東北に福祉専門の大学まで作り、学者そして教師になった人たちを保護していた。 恵は家系の人たちを保護し育成できる場を作る事には熱心だった。それは真知子の思いを恵がしっかりと受け取っていたとも云えた。そして自身も日本の福祉分野を実質的に仕切っていると云ってもよく、厚生労働大臣は 就任すると恵に最初に挨拶に絶対行った。そして 陽太が出てからは ここは盤石になった。


陽太は 福祉の陽太と言われたが、実は検察と税務を完全に抑えていて、この二つの首脳人事は 今でも陽太の承認がいると噂されている


そして 長男筋の鉄鋼と商会関係の株式についての折衝は 洋之助に任せる事になっていた。そして今は紡績の会長室が引き継いでその折衝をしていた。会長室、副会長室そして社長室はいわば三位一体となって、対外折衝をしている。決して 単なる秘書みたいな役目ではけっしてないのだ。ここは愛の会社の紡績 の 知とゴロツキの集積場と言ってはなんだが、法律ゴロから税務ゴロ、そして一族の陽太に近い、政界ゴロたちもいる、不思議な空間であって 財界の中枢となると 紡績の会長室の怖さ 凄さはみんな身に染みて知るようになる。


そして 洋太郎の怖さは 財界にしても 奥を知れば知る程 判る怖さなのだ。決して愛の精神の伝道者の末裔と云う精神的なものではなかった。