ボクの奥さん

ボクの奥さんは、甲斐よしひろさんの大ファン。そんな彼女との生活をお話したいと思います。

ラジオ深夜便(2/7)その3

2018-02-18 12:58:00 | メディア
甲斐バンドのマネジメントとプロデュースを引き受けられた
「その当時、どんな意見を言ったか覚えてますか?」という質問に

佐藤さんは「まあ、歌詞に出て来る主語を
…アルバム3枚くらいまでは『僕』っていう風に彼は歌ってたんで…
僕は、もうそろそろ『俺』にした方が良いんじゃないか?ってことで
言葉…主語の変更っていうトコから始まりましたね」とお答えになってました

以前、柳田光司さんの「ニッポン娯楽列伝」に
「甲斐バンドを疾走させた『5番目のメンバー』第一声」は
「歌詞の主語は全て『俺』に変えよう!」だったと記されていたとご紹介した際

ボクは、甲斐バンドのアルバムの歌詞カードを引っ張り出し(笑)
「らいむらいと」では、主語がない【恋時雨】と
「おいら」で日本語の歌詞を書かれた【吟遊詩人の唄】を除いて
すべて「僕」になってること

「英雄と悪漢」は【光と影】に主語がなく
【裏切りの街角】が「おいら」で
唯一【狂った夜】だけに「俺たち」が使われていること

「ガラスの動物園」では【やせた女のブルース】に「俺」が登場するけど
この曲はカバー曲だし
【男と女のいる舗道】の「男は女にやっぱり俺じゃないと…」というのは
ちょっと「ト書き」風の描写で
「君と僕が(この街に…)」が、甲斐さんの心情かなあ?…とか

【ゆきずりの風】や(収録されなかった)【メモリーグラス】は「私」で
「この夜にさよなら」の【そばかすの天使】も「あたし」になっているものの
ともかく「僕」もしくは「僕ら」が圧倒的多数だった…とか

相手の女性のことを、ほぼ全部「君」となさっているのは
「僕」と「お前」はしっくり来ないから…という
ボクの主観も添えさせて頂いたり(笑)

一方、佐藤さんの「第一声」の後に作られた「誘惑」は
【LADY】だけが「僕(僕ら)」で
あとは「俺、俺、俺」の嵐、ところにより「おいら」って感じ(笑)…とか

それに連れて?相手のことを「お前」と呼ぶ曲が増え
アルバム未収録の【HERO】は「俺たち」と「お前」
【安奈】も「俺」と「お前」になっているけど

【嵐の季節】と【シネマクラブ】は
「俺」「おいら」と「お前」「君」が入れ替わり立ち替わりで
たぶん、メロディに乗せる語呂の問題で
二文字と三文字を使い分けていらっしゃるんじゃないか?…と続き

かなり意識なさって主語に「俺」を用いておられるのは
やはり「女子供のバンド」というレッテルを返上したいという
甲斐さんと佐藤さんの意思の表れでしょう…やら

確かに「僕」で書かれた歌詞の傷つきやすそうな青年像よりも
「俺」の方が、タフで意志が強そうな「男」というイメージがあります…やらと
これまた、ボクの主観も交えつつ(笑)

甲斐さんがラジオやインタビューで話される際に
「僕」とおっしゃったり「俺」になったりされるように
歌詞の中に登場する様々な印象の男性も
すべて「甲斐さん」が投影されているんでしょうね?…と書いております

「なぜ『僕』から『俺』に?」と訊かれた佐藤さんのお答えは
「やはり『僕』だと少年の感じがするんですね
で、音楽的にもっと力強い、もっと…何て言うのかな?エッジの効いた
なおかつ、どっか泥臭い…というようなものをやろうと思ってたんで

それには『僕』よりは…華奢な『僕』よりは
たくましい『俺』の方が良いんじゃないか?
というようなところから始まりましたね」とのことでしたが

「ポップコーンをほおばって」の中に…
「マネージャーになったばかりの佐藤剛は、ステージを見ながら
『違う、どこか違う』と言い続けていた」という一節や

「女子供の甲斐バンドって『蔑視』されていることも事実だったんです
何とか取り払いたかった
女の子のファンが多いことと、女子供向けのバンドだということとは
違うんだと判らせたかったんです」とか

「自分たちの力を測る意味でも
甲斐のソロアルバムをやったことは良かったと思ってますね
バンドの性格がキチンと反映された曲がヒットさえすれば
状況はガラリと変わると思ってましたから」とか

「甲斐の歌、音楽、バンドの像に、僕を重ね合わせていって
より多くの人に正当な評価をして貰いたい
それを実現したいというのが、僕の夢だったんです」

…といった佐藤さんの言葉が記されていて
甲斐さんが【裏切りの街角】以来、打ち出して来られた
「ブラックでアーシーな音楽」や「バンドカラー」が
佐藤さんのサジェスチョンによって、より明確になったんじゃないかと…

甲斐さんご自身も…「これまでの歌って
いつも泣いてる、いつも悲しみに沈んでいるわけ
そういう姿も本当だろうけど、人間って、泣きはらした後
どこへ行ったらいいのか、考えるんじゃない?そんな曲を今作りたいんだ」

…と、考え始めていらした時期だったみたいだし
卵が先か?鶏が先か?じゃないけど(笑)
そのタイミングで、そういうお二人がタッグを組まれたことで
甲斐バンドに大きな化学変化が起こったことは間違いないでしょう

ちなみに…「甲斐よしひろの初期のボーカルは
無垢で傷つきやすい魂を感傷的に歌い上げる時、抜群の冴えを発揮した」
…と、おっしゃる亀和田武さんは

「雨にけむる街並みを息を切らして、駅へ駆ける少年」
「少女の乗ったバスを、どこまでもどこまでも追い続けた少年」
「年上の自堕落な女に恋をしてしまった少年」

「師走の冷たい街角で、長いマフラーを巻き
来るはずのない恋人を待ち続ける少年」…等々
「唇をジッと噛みしめて寂しさに耐える少年の過激なセンチメンタリズム」こそが
「初期の甲斐よしひろの曲の特徴」であり

「甲斐よしひろのボーカルは、艶のあるセクシーな雰囲気のそれだ
だから以前、彼のファンの8割以上を占めていた女の子たちは
彼のイメージを、可愛くて、セクシーで
ちょっと生真面目な男の子…という風に描いていたのではないか?」と記されていて

やはり、当時の少し甘い甲斐さんのハスキーな声と「僕」という主語が
「少年」のイメージを醸し出していたのかも知れません

ともあれ…主語を「俺」に変更され、サウンドもよりロック色を強めた
アルバム「誘惑」について、水上はる子さんは…

「ブルーの帯に書かれたキャッチフレーズ『愛のアジテーション』
…たとえ、それがレコード会社の宣伝マンの作り上げた惹句であったとしても
これほど甲斐よしひろのことを言い得ている言葉はないだろう
およそ相まみえない政治の言葉と日常の言葉とが
甲斐よしひろの位相でひとつになる」と評され

また、亀和田さんも【HERO】に関するコラムで…
「甲斐バンドが、この5年間に獲得した何か…
性急に結論づけてしまえば『普遍性』と『突出力』である
【HERO】という曲の美しさと
時代に対する普遍性と突出力を保証したものは
ヒロイズムと疾走感の2点である

人生はまるで一夜かぎりのショーのように
あるいは、路上のカクテルパーティのように脆く儚い
だから…まさしく『だから』なのだ
ヒーローになる時は今なのだし
俺たちは走り出さなくてはならないのだ

このまま、ここで立ち止まっていたなら
俺たちの愛がボロボロに崩れていってしまう
だったら、一刻も早く走り出さなくてはいけない
性急なまでの『愛のアジテーション』
少年少女の胸に向けて放たれた
語の本質的な意味でのメッセージソングが【HERO】だったのだ」と記されていて

「愛のアジテーション」というフレーズには
甲斐さんのセクシーさはそのままに
骨太な歌詞や「バンドの性格」が前面に押し出されていて
おそらく?このフレーズをお考えになったのであろう広瀬さんにも
佐藤さんの「夢」に対する熱意が届いたんじゃないかと…?
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