山口果林『安部公房とわたし』(講談社、2013年)
安部公房といえば、私にはほとんど堅いイメージしかなかったので、うちの上さんと結婚して、彼女が『安部公房全作品』を持っているのを見て、「渋い趣味してるな」と感心したのを思い出す。そのことについて話したことはないが、私のようにチャラチャラした趣味ではないのだ。
さて山口果林といえば、『若者たち』三部作の最後の『若者の旗』で、松山省三演じる末吉が、大学受験に失敗して、大学進学を諦め、自動車販売のセールスマンとしてかなり無理な営業活動をしつつ生きているなかで、所長のミワと結婚しようと打算も働いている。独立しようとして兄達と喧嘩になるが、そんなとき、チエが自殺しようとするところに遭遇し、自殺を思いとどまらせる。絶望的なチエは末吉と肉体関係を結んでしまうという話だ。このチエを山口果林がやっていて、初めて見た時(というか一回しか見たことがないが)、山口果林の美しさに衝撃を感じた。美男美女が当たり前の銀幕でも見惚れるという経験はそうあるものではなくて、彼女以外には、『泥の河』の加賀まりこくらいだろうか(右下の写真)。こういう次第だから、作家の安部公房がかなり美人の妻をもち、こどももすでにいたにもかかわらず、山口果林を愛人にしてしまったというのも頷ける。
私的には、第一章第二章が一番面白かった。私は山口果林とは6・7年の歳の差だが、彼女が大学に入って、安部公房のゼミに入って、様々な演劇活動に関わっていく時代というのは、私にとってはまだ中学生から高校、大学へと進んでいく時代で、しかも鳥取県の田舎の育ちの自分には演劇のえの字も無縁だったが、それでも時代の雰囲気というのがあって、それがこの第一章と第二章には色濃く描かれているのが、よく分かるのだ。

さて山口果林といえば、『若者たち』三部作の最後の『若者の旗』で、松山省三演じる末吉が、大学受験に失敗して、大学進学を諦め、自動車販売のセールスマンとしてかなり無理な営業活動をしつつ生きているなかで、所長のミワと結婚しようと打算も働いている。独立しようとして兄達と喧嘩になるが、そんなとき、チエが自殺しようとするところに遭遇し、自殺を思いとどまらせる。絶望的なチエは末吉と肉体関係を結んでしまうという話だ。このチエを山口果林がやっていて、初めて見た時(というか一回しか見たことがないが)、山口果林の美しさに衝撃を感じた。美男美女が当たり前の銀幕でも見惚れるという経験はそうあるものではなくて、彼女以外には、『泥の河』の加賀まりこくらいだろうか(右下の写真)。こういう次第だから、作家の安部公房がかなり美人の妻をもち、こどももすでにいたにもかかわらず、山口果林を愛人にしてしまったというのも頷ける。
