山本文緒『アカペラ』(新潮社、2008年)
「アカペラ」
母親が突発的に家出してしまっておじいちゃんのトモゾウこと泰造さんと二人で暮らす中学三年生のタマチャンことたまこ。父親は離婚して北京に住んでいる。
でもおじいちゃんは母親にいつもいじめられているので、母親がいないほうがストレスもなくなって元気になる。いつも大きな声で歌を歌っているのが元気な証拠。
たまこは手芸というか裁縫に能力を発揮して、年齢を偽ってアルバイトしている古着屋の店長に認められて卒業したら就職を約束してもらっているが、高校に進学をしないで就職すると進路希望に書いたことから、担任とひともんちゃく。
担任のカニータこと蟹江も高名な大学教授だった父親に同じ進路を要求されそれに応えられなかったことからちょっとひねた性格になっているけれど、たまこのことを真面目に応援するようになる。
突然、年末近くになって母親が帰ってきたため、ついにじいちゃんとたまこが今度は家出することに。ラブホテルを転々としたあと調子が悪くなったじいちゃんを連れて、カニータのアパートに転がり込んだ二人だが、じいちゃんが倒れ入院することに、そのまま植物人間になっていまう?...
「ソリチュード」
従妹の美緒と中学生のときに性的関係をむすんでしまい、それが原因で家出をして20年間東京を転々として暮らしてきた春一は、父親の死をきっかけに実家に帰ることになった。
母親のもとには近所に住む美緒が離婚して、一人娘の一花と出入りしている。よりを戻したいのか戻したくないのか、お互いにお互いの気持ちがつかめないまま、春一は一花の父親のような存在になってしまう。
2ヶ月も経った頃、東京から春一と同棲しているまり江と、春一が飲酒運転でひっかけたためにランナーとしての選手生命を絶たれながらも春一を好きになってしまった朱夏がやってくる。
結局、美緒の気持ちがつかめないまま東京にもどる春一。
「ネロリ」
もうすぐ50歳に手が届く志保子は出版社の社長秘書をしているが、まもなく社長の次男が次期社長になれば、辞めなければならない。
家には高校生のときに母親の長期看病のために就職も諦め、また自身のアレルギー体質のために身体が弱くて働くことができない弟の日出男がいる。年齢ももう40歳を前にする。ココアちゃんと呼ばれる若い彼女がいるのだが、志保子は彼女のことはほとんど念頭にない。
その志保子に会社に出入りしている製紙会社の須賀が求婚してきた。須賀の実家は代々続く老舗旅館で、母親が強圧的で、たぶん母親の愛に飢えているのだろう、それでずっと年上で見た目にもおっとりして優しそうな志保子に一目ぼれをしたということのよう。
志保子はコレといった決定的な決め球もないまま彼の求婚を受け容れたかたちになっていたが、上京してきた母親に破談を迫られたのを気に一気に意欲を失ってしまう。結局は、いつもの二人の生活がまた続く。
とくにコメントすることはなし。けっして面白くないとも思わないし、すごい!と声をあげるほどのものでもない。登場人物は生きているし、文章はすごく上手いと思う。
「アカペラ」
母親が突発的に家出してしまっておじいちゃんのトモゾウこと泰造さんと二人で暮らす中学三年生のタマチャンことたまこ。父親は離婚して北京に住んでいる。
でもおじいちゃんは母親にいつもいじめられているので、母親がいないほうがストレスもなくなって元気になる。いつも大きな声で歌を歌っているのが元気な証拠。
たまこは手芸というか裁縫に能力を発揮して、年齢を偽ってアルバイトしている古着屋の店長に認められて卒業したら就職を約束してもらっているが、高校に進学をしないで就職すると進路希望に書いたことから、担任とひともんちゃく。
担任のカニータこと蟹江も高名な大学教授だった父親に同じ進路を要求されそれに応えられなかったことからちょっとひねた性格になっているけれど、たまこのことを真面目に応援するようになる。
突然、年末近くになって母親が帰ってきたため、ついにじいちゃんとたまこが今度は家出することに。ラブホテルを転々としたあと調子が悪くなったじいちゃんを連れて、カニータのアパートに転がり込んだ二人だが、じいちゃんが倒れ入院することに、そのまま植物人間になっていまう?...
「ソリチュード」
従妹の美緒と中学生のときに性的関係をむすんでしまい、それが原因で家出をして20年間東京を転々として暮らしてきた春一は、父親の死をきっかけに実家に帰ることになった。
母親のもとには近所に住む美緒が離婚して、一人娘の一花と出入りしている。よりを戻したいのか戻したくないのか、お互いにお互いの気持ちがつかめないまま、春一は一花の父親のような存在になってしまう。
2ヶ月も経った頃、東京から春一と同棲しているまり江と、春一が飲酒運転でひっかけたためにランナーとしての選手生命を絶たれながらも春一を好きになってしまった朱夏がやってくる。
結局、美緒の気持ちがつかめないまま東京にもどる春一。
「ネロリ」
もうすぐ50歳に手が届く志保子は出版社の社長秘書をしているが、まもなく社長の次男が次期社長になれば、辞めなければならない。
家には高校生のときに母親の長期看病のために就職も諦め、また自身のアレルギー体質のために身体が弱くて働くことができない弟の日出男がいる。年齢ももう40歳を前にする。ココアちゃんと呼ばれる若い彼女がいるのだが、志保子は彼女のことはほとんど念頭にない。
その志保子に会社に出入りしている製紙会社の須賀が求婚してきた。須賀の実家は代々続く老舗旅館で、母親が強圧的で、たぶん母親の愛に飢えているのだろう、それでずっと年上で見た目にもおっとりして優しそうな志保子に一目ぼれをしたということのよう。
志保子はコレといった決定的な決め球もないまま彼の求婚を受け容れたかたちになっていたが、上京してきた母親に破談を迫られたのを気に一気に意欲を失ってしまう。結局は、いつもの二人の生活がまた続く。
とくにコメントすることはなし。けっして面白くないとも思わないし、すごい!と声をあげるほどのものでもない。登場人物は生きているし、文章はすごく上手いと思う。