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仏教ライフを考える西原祐治のブログです

なぜ女性は男性よりも信心深いのか

2023年05月30日 | 新宗教に思う
『進化心理学から考えるホモサピエンス 一万年変化しない価値観』(2019/1/25、アラン・S・ミラー著)、

 なぜ女性は男性よりも信心深いのか

宗教はあらゆる文化に普遍的にみられるが、信仰の性差もあらゆる文化に共通する現象である。
ほぼあらゆる社会で、女性は男性より信心深い。
 70ヵ国・地域で、一10万人を対象に次のようなアンケート調査が実施された。質問A「神の存在を信じますか」、質問B「教会に通っているかどうかは別として、あなたは次のどれにあてはまりますか。(1)信仰心がある。(2)そうでもない。(3)確信をもった無神論者」。その結果、ごくわずかな例外を除いて、すべての国―地域で女性のほうが男性よりも信心深かっか。
 アメリカなど信仰心の性差が比較的小さい国もあれば、ロシアのように比較的大きい国もあるが、いずれにせよ女性のほうが信仰にあつい。ガーナ、ポーランド、ナイジェリアのように国民全体の宗教意識が高い国でも、中国、日本、エストニアのようにきわめて低い国でも、同じことが言える。この傾向は六大陸すべてに共通し、どの宗教にも共通する(イタリアとスペインはカトリック、ドイツ、スウェーデンはプロテスタント、ロシアとベラルーシはロシア正教、トルコ、アゼルバイジャンはイスラム教、日本は神道、ガーナは土着の宗教、中国は公的には無神論)。調査が実施されたほぼすべての社会で、女性のほうが信心深かっか。これは現代だけの現象ではない。記録を調べると、歴史を通じて宗教上の性差があったことがわかる。
 なぜ歴史を通じて、あらゆる文化で、女性は男性より信心深いのだろう。進化心理学で、普遍的な宗教上の性差はどう説明できるのか。


宗教はリスク管理の一つ

宗教の起源はリスク管理にあると考えられる。たとえ偶発的な出来事であっても何者かの意図が働いていると解釈するほうがリスクは少ない。だから、私たちの脳は神や超自然的な存在を信じたがる。肯定的な誤謬のほうが否定的誤謬より代償が小さいなら、肯定的な誤謬を犯すような思考パターンをもつことで、トータルの代償を最小限にできる。
私たちは、このようなエラー管理戦略を進化によって獲得してきた。この点を踏まえたとして、女性は男性よりもリスク回避の傾向が強いことを思いだしていただきたい。女性は生涯に産める子供の教に限りがあり、どの女性もはぼ確実に子供を産める。しかし母親がリスクを冒せば、子供の生存が脅かされるため、女性はリスクを冒すことで得られるメリットが男性よりはるかに少ない。女の方が男よりシスクを冒す確率が低く、宗教がリスクを最小限にする心理の副産物だとすれば、女のほうが信心深いのも不思議ではない。
 この説明と一致する事実として、複数の調査で男女を問わず、危険な賭けを好むかどうかと宗教性とは密接な関係があるという結果が出ている。女性は男性よりもリスク回避の傾向が強く、信心深いが、それのみならず、リスク回避の傾向が強い男性はそうでない男性よりも宗教性が強く、リスク回避の傾向がとくに強い女性はそうでない女性よりも宗教性が強いのである。さらに、無宗教であることがリスクとなるような社会(キリスト教原理主義やムスリムの社会など)では宗教上の性差が比較的大きく、より寛大な宗教の自由があり信仰をもつかとうかを個人の意思で選べる社会や、無宗教であれば地獄に落ちるといった縛りがあまりない社会(仏教社会など)では、宗教上の性差は比較的小さい。
 前のセクションで、人間が神や超自然的な存在を信じるのは、男が女の性的関心を過大評価し、女が男の性的関心を過小評価するのと同じリスク管理のためであると論じた。さらにここでは、普遍的な宗教上の性差について、次のように言いたい。あらゆる文化で、男のほうがより犯罪的かつ暴力的であるのと同じ理由で、女は男よりも信心深い。
リスクを回避すれば繁殖ゲームの完全な敗者になりかねないからだ。そのために男は常に女よりもリスクを冒す確率が高く、宗教性にもそうした男女の違いが反映されている。(以上)
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