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超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

ランクヘッド「青に染まる白」全曲レビューその2「十六夜の月の道」

2012-04-08 22:24:04 | 音楽(全曲レビュー)






ランクヘッド「青に染まる白」全曲レビューその2は「十六夜の月の道」です。





2.十六夜の月の道





元々先行でリスナーの耳に届いていたり、そのお陰でライブでは半年前から定番曲だったりと
力強いメロディと強烈なグルーヴが渦巻き更に和のエッセンスをも最大限に活かしたロックナンバー。
前作の過度に尖った音像も大好きですが
こうやって和メロを活かしつつ攻める音像も大好きですね。
どっちがどう、って話ではなく両方ランクヘッドってバンドには必要な気がします。
何も考えないでがむしゃらに突っ切るサウンドも、日本人ならではの激情を叩き付けるサウンドも
両方ある意味ランクヘッドの核と言えば核だと思いますから。
それこそ和洋折衷っていうか。

この曲が素晴らしいのは、そんな和のテイストを込めつつ突き抜けてる激しさ・・・だけではなく
人間は決して心から分かり合える事はない
決して悲しみは消えないし
心に残ってる傷や痛みは半永久的に残るものだっていう有りの侭の事実で
それを隠したり誤魔化したり、平気の平左で仮面を付けて生活している人間だらけだからこそ
強く強く響くようなリアルな歌になってて、
誰もが水面下で燻ってる現実があるからこそ、そんな必死の叫びが心に響いて、
大きく伝わって、沁み込んでいく様な痛みがあって
でもそんな痛みは個人的には必要だって思えるし、それを糧にしてまた頑張れる節もあって。
誰もが誰も分かり合えないし、分かってあげられる部分も限られてるし、いくらきれいごと言っても
他人の心の隙間を埋められる量にも絶対的な限界があって
その事実からは逃れられない。
けど、そこで達観して諦めるのではなく、むしろそこからあがいて必死に叫んで
その感情が胸を打つような寂しくも温かい和製ロックンロールにもきちんとなっていて
そこが個人的には一番素晴らしいと思えるポイントですね。
無理だって感情に蓋をしてないっていうか
事実を受け入れて、限界を認めて、そこから祈り歌う感覚が何よりのユニークになっている、そんな一曲です。





【誰にも見えない白い肌の裏の 広がる宇宙を隠してあなたは笑う】

本音で語り合おうとか
本気で付き合おうとか考えても
人間って不器用で、溜め込んで、上手く感情を曝け出せない生き物ですから
絶対的に誰にも触れさせられる事の出来ない黒い部分があって
そこを解消するなんて他人には到底無理で
半ば不可能な現実で
だからこそ完全には分かり合えない、ある程度の武装を余儀なくされて
そこを埋められるか埋められないか、埋められたとしても埋められるスペースにも限界があって
いつまで経っても埋められなければ、その分溝なんて深まる一方でしかないんですよね。
出したくても出せない怒り
伝えたくても伝える事の出来ない憎しみ。
その結果、結局関係を失ったり、間に存在していた大切な何かが壊れたり
そんなものは人間ですから全く経験せずに生きていけるなんて有り得ない事で
そこに存在する軋轢や重ならない部分の存在は
その都度認めていかなきゃいけない事実で。
いくらきれいごとを抜かしても、所詮は人間、小さい生き物だと思いますから。理想と現実は別物なんです。
いくら頑張っても、その隙間を埋めようと思っても、絶対に埋まらない溝は存在する(と、思う)。



【だけど願った あなただけを、月よどうか照らせ】

ただ、そんな現実や結果が目の前に存在したとしても
消えない事実に悩まされても
そのジレンマや不協和音が何も残さないか、って言ったらそれは違う。
傷付いた分だけ心には存在が残るし
傷付けた分だけ相手に対する罪悪感が残った。
だからこそ、そんな絶対的な破綻の上で相手の、誰かの幸せを願う気持ちだったり
その後の人生を祝福する気持ちだったり
幸せであれと願う心だったり。
そんな最終的には何もかもを許せる気持ちを得て、そこからの思いを更にぶつけるっていう
単純にどうしようもない気持ちを言葉に歌にしてるだけではなく
そこからの強い祈りも同時に音楽に乗せていて
そんながむしゃらな想いだったり気持ちもまた強く感情に訴えて作用するような
一つの楽曲の中で精神的な成長の変遷も感じ取れるような
そういう力強さもまた前述のペーソスと同じくらいに存在する楽曲ですね。そこがある種の救いなのかな、と。





「二人黙って歩いた」ってフレーズもそうですが
非常に状況だったり背景がよく浮かぶような、そんな一曲にもなっています。
決別を想起させるような曲って大体が自分を責めたりする歌詞が殆どのように感じますけど
この曲は元々分かり合えるスペースには人間同士限界が存在するっていう
そんな現実的な内容になってるのが面白くもある一曲で。
でも、それでも最後は幸せや満たされる事を願う悔しさを越えた想いがこの曲ならではのカタルシスだと思います。




ランクヘッド「青に染まる白」全曲レビューその1「濃藍」

2012-04-01 23:37:48 | 音楽(全曲レビュー)





今期もまた、新譜の全曲レビューやります。一曲単位で。
今回選んだのはランクヘッドのニュー・アルバム「青に染まる白」です。


ここ数作の勢いはそのままに、より日本語ロックとしてタフに情感豊かに成長した印象の
パワフルでありながら繊細でもある堂々たる傑作、早くも今年を代表するロック・アルバムの一つ。
って個人的には位置付けたいレベルの作品です。
同時にランクヘッドとしての新たなる代表作にも成り得るアルバムだと思う。
サブカル好き、邦楽ロック好きは勿論古き良き歌謡曲的な哀愁を感じさせたり
或いはキッズが喜ぶような激しさ、ハードさなんかもあったりして様々な方に聴いて欲しい
切実な想いと音楽的なクオリティの高さが滲み出てるアルバムだと思うので
一切の澱みなくそんな珠玉の楽曲たちの良さを語っていけたら。
前クールのNICOの「HUMANIA」がそうだったように、今回もツアーファイナル前には終わらせるつもりで。
これからよろしくお願いします!





1.濃藍





で、この曲はその中でも最も歌謡曲的なエッセンスが色濃く出てる楽曲で
サビのメロディなんかは正にそうですね。
エモーショナルに言葉と演奏を叩き付けるタイプの楽曲なので必然的に強いメロディを欲したと思われる
その迫真の雰囲気とボーカルにいつ聴いてもグッと来させられてしまう、そんな一曲です。
始まりの一曲としてはインパクトも濃さも抜群、
非常にランクヘッドらしいストレートな勢いと共に練り込まれたメロディの良さも光ってる
案外タイプ的にはここまで和洋折衷って感じのものもそこまで無かったと思うので
新機軸といえば新機軸って印象の楽曲でもあるかも、ですね。

鋭いリフに洪水のようなアンサンブルが乗っかって間奏でベースが味を出してたり
最後はパンクロックみたいな流れで楽曲が終わったりと
一言で歌謡曲的って形容するには
あまりにもユニークなナンバーでもあって(笑)。その辺のただ単に懐かしさを狙う訳でもない
秀逸なブラッシュアップの仕方っていうのは本当に今のランクだからこその懐の深さなのかもしれないですね。
歌詞の内容的には人間の相互理解の限界、壁について悔しさを滲ませながら歌われていて
その哀愁や何とも言えない侘しさに実直に胸打たれる曲でもありますね。





【他人よりも君が遠くなる】

基本的に、仲が良いからこそ踏み込めない部分だったり、水面下で苛立ってたり
気が付けば俗に言う仮面夫婦?みたいな状態になってるのもザラで
確かに他人とは呼べない仲なのにも関わらず
心境は他人よりも他人っぽい
遠慮だったりストレートに言えない葛藤だったりで結局は傷付け傷付け合って不毛な結末を迎える
他の動物と比べて本当にシンプルさとか単純さとは掛け離れている生き物
そんな構造だったり分かり合えないもどかしさに
必死で抗おうとしてる
その最中でもがいてるような苦しみの要素の強い曲なんですけど、
実際本当に誰もが足掻いてる部分があるからこそ、ある種の普遍性もあって、でもそれだけには留まらない
攻撃性やペーソス、痛みの要素も往々にして強かったりする。そのバランスが気持ち良いって思います。


【一人よりもっと独りになる】

この感覚もなあ・・・正直よく分かってしまう。
分かり合える可能性があるはずなのに、その直前で燻ってると暖簾に腕押しみたいな気分にもなるし
本当に独りになった時に、元々空いてなかった穴が空いてたりする
そんな理不尽で、でも合理的な孤独感。
何一つ伝わらないからこその余計に沁みる孤独感。
二人で話してても、壁に向かって話しかけてるような苦しみと苛立ち。
そこで大人になれなかった大人の悲しみの歌
そういう経験が無いとも言い切れないだけに
この理解されずに理解もしてあげられないジレンマっていうのはストレートに沁みちゃう破壊力を持っていて。
それくらい誰かと分かり合おうなんて気持ちは簡単には叶わないよってメッセージでもあるんですよね。




最終的に報われる訳でもない、救われる訳でもない。
でも、だからこそそこで表現されてる悲しみに純粋に同調出来ると言いますか
自分の後悔やペーソスを再確認してまた歩けるような作用があって。
中途半端になってないのが素晴らしい
そんなどう仕様もない人間の歌です。だからこそ伝わる。



NICO Touches the Walls「HUMANIA」全曲レビューその10「手をたたけ」

2012-03-18 19:15:39 | 音楽(全曲レビュー)





NICO Touches the Walls「HUMANIA」全曲レビューその10、最後は「手をたたけ」です。






10.手をたたけ





このアルバムにはシングルバージョンとは別に4人のみでの演奏を収録したバージョンも入ってて
実質的には11曲なんですけど、歌詞や楽曲の雰囲気はほぼ同じくしてるので特に分ける必要もないかな、と。
敢えて言うならシングルバージョンはポップさを強調してるアレンジになってるので
ロックバンドとしての「手をたたけ」を聴きたい方は是非そっちを、ってところでしょうかね。
性質上誤解されやすいですけど、決してポップに転向したとかそういう類の曲ではないっていうのが
理解してもらえるかな、とちょっと感じる4人バージョンでもあります。

一応このアルバムからは唯一の先行シングルなんですけど
それが最後に入ってるって言うのはちょっと面白かったですね。
それなりに話題にはなった筈なんですけど
最後に収録しちゃ試聴機で聴く時も多分引っかからないし、それにスマッシュヒットしたシングルを
敢えてラストに持ってくるってアイディアも中々見受けられないので
そんな所にNICOらしさ、ポップに近づきつつも、そこには染まらないって意思も感じられて
中々に嬉しくもあるんですけど、ただアルバムのコンセプトにもちゃんと似合ってる気はしていて
散々ひねくれてストレートでもある人間模様を表現した後の名曲「demon」でのクライマックス
それでも誰かを信じて自分を信じて歩んでいく、生きていくって結論を出した後に
その決意を祝福するようなナンバーが、旅立ちを後押しするようなナンバーが入ってるって言うのは
結構上手いなっていうか、構成上手っていうか。単純に元気も出るし明るくもなれるし。

この曲は福音って形容が似合うと思うんですけど、
楽曲の性質上ロックバンドならではの湿った部分がないので異質といえば異質
逆に言えばこの系統の楽曲は今までNICOのレパートリーにはなかったものなので
貴重といえば貴重な気もする、そんなポップナンバー。
中途半端なポップさならば是非遠慮したい所ですけど、この曲のポップさは完全に突き抜けてるし
ポジティブさの臨界点を越えている感触もあるので
個人的には大歓迎の一曲、であると同時にライブで聴くと音源とは違った楽しさがあって。
大勢の観客、言ってみればいい年した大人が子供みたいに笑いながら手を叩いている光景は
正直妙な感動っていうか、筆舌にはし難いカタルシスを受けるようなもので。
普段みんなそれぞれ悩み抱えて苦しい生活を送っているんだろう、
でもこの場所でだけは、そんな感情を捨て去って、喜びの気持ちを解放して・・・っていう
バンド側のメッセージ性も、それを自発的にお客さんも理解してる感覚があったりして
是非ライブでも体験して欲しい一曲
そこにこの曲の本当の本質が詰まっているような、そんな気さえもしますね。金字塔のような名曲です。





【願う日は来ないけど】

でも、個人的にこの曲で一番好きなフレーズはこれなんですよね(笑)。
いくら頑張ったって
夢や希望を掴もうとしたって
願う日なんてきっと来ないんだよ、ってめちゃめちゃ現実的なフレーズが入っているのが
実に光村龍哉らしいな、って思うんですけど。それにも限界がある、っていうね。
同時に、「けど」って言葉もまた良い味を出してて
願う日は来ないって断定して置きながら、「けど」って言葉を付け足すって事自体が
また新しい希望に成り得てるっていうか
それでも俺はやるよ、あがいてみせるよ的な、それ即ちロックバンドらしいロール感を演出するもので。
90年代のポップスのエッセンスを取り込んだ楽曲であるとは思いますが
その根底にはきっちりNICOらしさ
ロックバンドらしい精神性が眠ってるっていうのが
より素敵だなあと思える一曲でもありますね。
願う日は来ないけど、だけど・・・っていう、絶望から希望へと繋がれる、そんな流れがとても好きです。


【理屈や約束にゃこの際手を振れ】

前半の歌詞の中で「恥をかけ~好きなように」ってフレーズもありますけど
他人の目を気にしてる時点で本来の自分を殺してる、抑圧してるって事ですからね。
そうじゃなくて恥ずかしいぐらいが人間なんだっていうか
恥ずかしい事を経験してないような人間が一番恥ずかしい人だって個人的には感じるし。
理屈やお決まりの価値観では救えない魂だって十分にありえるってこと
だったらもう好きなだけ恥をかいて
一寸の後悔も残さずに何かにぶつかって胸の中のモヤモヤを晴らして。
それをやれるのは、出来るのは自分でしかない
作中でも歌われている通り、だからって願う日が必ず来るなんてことは有り得ない
むしろどれだけ頑張っても願う日が来ない確率の方が高いってニュアンスすら感じる
それでも、そこから希望に向かう覚悟があなたにはあるのか?っていう
聴き手に対するアジテーション・ソングにもなってるんじゃないだろうか、と。
イメージ的には楽観的な雰囲気もあるかもしれないですけど
その実中々に地に足の着いたファイティングポーズが光ってる楽曲だなあ・・・と改めて聴き込んでみて
個人的にはそう感じたのでした。また一つ、バンドを代表する一曲が生まれたかな、と。






という訳で長々続いた「HUMANIA」全曲レビュー企画もこれにて終了、です。
改めて自分なりに全曲掘り下げてみて思ったのは
めちゃくちゃジャンルレスなアルバムなのに、奇妙な統一感があるなあって思えるのは
光村龍哉の声の芯にブレがまったく感じられないのに加えて
締め方のきれいさ、まとまりのよさ、それ即ち曲順やコンセプトが優れてるアルバムでもあるからなんだ、って。
そんな事を確認、認識出来た全曲レビューシリーズでもありました。書いてても楽しかったですね。

時折コメントも頂きそれもまた嬉しかったです。
カルピスのCMソングで早速このアルバム以降の新曲の報も出てきたので
またリリース時になったらレビューも書いていこうと思います。
それではここまでの閲覧どうもありがとうございました!個人的に全曲好きなアルバムでもありますね。



NICO Touches the Walls「HUMANIA」全曲レビューその9「demon (is there?)」

2012-03-15 22:45:25 | 音楽(全曲レビュー)





NICO Touches the Walls「HUMANIA」全曲レビューその9「demon(is there?)」です。





9.demon (is there?)





このアルバムの実質的なクライマックスにあたるナンバー。それぞれの楽曲で
それぞれの人間模様を描いた後に繰り出される壮大なスケールのロッカバラード。
その堂々とした佇まいや、ライブでの感極まったような激しくも情熱溢れるステージング等
どの角度から聴いてもこれは名曲だ、と言い切れるレベルの楽曲であると思う。
ただ、音源で聴いても素晴らしい楽曲なんですけど
実際にこの曲を生で聴いた時鳥肌が立つ程度の衝撃が個人的にあったのも含まれるので
恐らくこの曲をライブで聴く前と後では何気に思い入れは違うかもしれません。
それでも、何もかもを諦めそうになっても
誰かにこの世界から自分を連れ去ってくれと願いそうになっても
それでもまた人を信じて歩き出そうとする人間の歌・・・って事で
グッと来る要素は最大限に感じられる一曲、
これまでのバラードの中でも他の曲とは一線を画す仕上がりにはなってると思います。傑作です。

タイトルに関して言えば、何かに対して絶望した時や誰かにそそのかされそうになった時
自分を信じれなくなった時や目の前の困難に対して「もういいや」って感情を持ちそうになった時
そんな自分にとって大切な何かを譲りそうになった瞬間の一言っていうか
意思を放棄しようと思ってしまった自分に対する問いかけですよね。
「デーモン、そこにいるのかい?」っていう。
それに対して、運命や世界の流れに対して、思い通りには、誰かの狙い通りにはならない
自分の足でもう一度この世界を歩いていく、信じていく覚悟を持たせる為の一曲。
信じれば裏切られ
頑張れば空回り、
そんな逆境に陥った時にこの曲、このタイトルをふと思い出して
「いやいや、負けるかよ」って自らを奮い立たせる、そんな聴き方も浮かんでくる
聴き手に託した意思がしっかり伝わってくるのが本当に大きな楽曲。
生で聴いて揺さぶられたのもあって、既に大好きな一曲。アンセムに近いバラッドだとも感じますね。





【生まれてきた僕らは 人の群れに転げ落ちて】

他者に対する劣等感や、何も出来ない自分への苛立ち、ずっと孤独という事実
太陽や月に対する憧れや嫉妬、出会っては別れての繰り返し
そこに残るものは何一つ無い
誰の群れからも外れて、ただ口惜しい気持ちで毎日をやり過ごすだけ
そんな日々の果てに一体残るものって何なんだろうか?っていうのがこの曲のテーマであり
それはこうやって言葉にすると大分シビアなものでもあると思うんですけど。
雑念や考えた果てに落ちていった底に佇むのが正にデーモンであり
諦めの象徴としても描かれていて、
諦める瞬間を、全てを投げ出す瞬間を待っている、それ即ち運命とも言えると思うんですけど。
そんな状況に対して、そっと【譲れない何かが きっとあるなあ】と歌ってるのがこの曲でもあり
何もかも失って半ばどうでもよくなったからこそ、本当に必要なものが残る
皮肉にも絶望の中で本当の自分の気持ちを知る、っていう。



【どんな深い傷を負ったって 諦めないのを知ってるから】

打ちのめされても、どうしようもない別れを繰り返しても
人間はそれでも歩く生き物であり
何だかんだ言っても本当に大切な物はまだ胸の中に残っていて、そのしぶとさは誰も半端じゃなくて
グチグチ言いつつも前に明日に進もうとするのは何かを諦めていない証拠でもあります。
その思いさえあれば、最低限の希望さえあれば。人はいつだって歩いていける。
人間は確かに脆くて繊細だけれど
その実何度打たれたって立ち上がれる、人間賛歌としても鳴ってる、歌われている曲でもあって。
最終的に明確な答えが出る訳じゃない、そんな問い掛けに対する答えなんてない
ただ、譲れないものの為に、愛するべき何かの為に
少しでも良い「今日」に近づく為に、傷を負いながら必死に歩いていくだけだ、という。

最終的に何が残るのか?っていう作中の問い掛けに対してはもう答えなんて実は出てるのかも
そうやって誰かを信じて自分を信じて歩いて辿り着いた先の景色
それこそが本当の答えにあたるのかもしれないですね。
どれだけがむしゃらに、必死に歩けたか、譲らなかったのか。その景色を見る為に生きるのも、悪くない。
この曲を聴いてると本当にちょこっとだけそんな風にも思えるのがとても不思議です。
何かに迷う度に、躓く度に、「demon(is there?)」
だけどまだあなたの出番じゃないよ、って。もう少しだけあがいてみるから、って。
そう言い返したくなること必至の「渾身」って形容が良く似合う本気印の人生賛歌だと感じました。






この曲にもらったものは現段階でもここまであるんですが
でも、これから先も要所要所で助けてもらいそうな、頼りにしちゃいそうな、そんな一曲ですね。
間奏の古村大介渾身のギターソロにも是非注目して聴いて欲しい楽曲です。




NICO Touches the Walls「HUMANIA」全曲レビューその8「業々」

2012-03-12 22:49:57 | 音楽(全曲レビュー)






NICO Touches the Walls「HUMANIA」全曲レビューその8「業々」です。





8.業々




この曲は、「THE BUNGY」系統の聴き手のケツを思いっきり引っ叩くようなナンバーなんですけど
なんとハードロックか、ってくらいへヴィで荒々しいサウンドで鳴らされていて
歌詞もまた微妙に攻撃的なもんだから
余計に新境地っていうか、ここまでゴツゴツしたサウンドで鳴らすのは珍しいなあって思える
これまた今までのNICOには無かったタイプのエッセンスの楽曲で。
どことなくマッドカプセルを彷彿させる音でもあるけど
でも感触的にはきっちりNICOの音じゃん、って思える個性も健在で
中々に隙間を上手く突いたな、と実直に感じれる異色にしてある意味王道のナンバー。
単純に気合付けだとか、自身の確信の後押しに役立つような自己啓発型ロックンロール。
インディーズバンドの音源か?ってくらい音が割れてるのもまたこの曲のユニークさの一つです。

出る杭は打たれる、って言葉に代表されるように
ビッグマウスは叩かれ、謙虚だと褒められ
必然的におとなしくしている事が一番だとかそんな風に決められてるこの世界ですけど
そんなもんクソ食らえっていうか、間違ってようが間違ってなかろが
自分の心に、誰の言葉も聞く耳持たず笑われる覚悟で行けよ、っていう。
そんな強引な応援ソングなんですけど
逆にここまで一方的にまくしたてられると相応のカタルシスなんかもあったりして
無我夢中で聴けてしまうような勢いとか張りはやっぱり光村龍哉ならではのものだと思います。
「調子に乗ってるくらいが案外フツーです」幸せを制限される事に対してのアンチ精神。
単純にハードロックの要素云々って曲ではなく
そこに込められた意味や意思も相当に尖ってて格好良くて
それ即ち他人に左右されるな、ってメッセージ性なんかも含んでたりして。
それがまた良い具合に「ロール感」を煽っていて色々な観点から素敵って思える一曲に仕上がってますね。






「ご意見ご要望ございましたら どうぞおまとめの上 一昨日言いな」

単純に聴いててスカッとするフレーズ。同時にシンパシーなんかも感じたりして。
ここまで言い切れる光村龍哉ってやっぱり生粋のロックスター気質であるとも思うんだ。
それはもう初音源を聴いた時から一切変わらないですね。
それが未だに自分の中で持続してきている事が何より嬉しいな、と。

他人に影響されて自分を失くすのなら、
誰に笑われても下らない自分を守った方が全然マシっていう。
ある種今欠けてる思想の一つでもあるんじゃないかと。