NICO Touches the Walls「PASSENGER」全曲レビューその9「マトリョーシカ」です。
この曲はアニメのOPにも使われたので知名度はそこそこあるはず。
ちなみに初めてベース坂倉心悟が作曲した曲としてもファンの間では有名。
9.マトリョーシカ
マトリョーシカとは人形の中にまた人形があって、その中に人形があって・・・
っていうロシアの人形の事ですね。
要は本体は一番奥に隠されているということ。
子供の時ならまだしも、大人になっても在りのままの自分で~
なんて人間は殆どいません。
いないと思います。
大抵誰もが何重にも作った自分の殻の中で生活していて
人によって状況によって見せる殻も違っていて、ある時は一番最初の完璧に作られた殻だったり
ある時は4番目の比較的自分に近い殻だったり
もしくは常に精神武装した状態だったり
その殻の一番奥にある
本当の自分ってやつは、我侭で自分勝手で、でも最も純な姿であるその形は
自分しか知らないまま
他人には知りえぬまま
日々は人生は過ぎ去ってしまう訳です。で、それを時々馬鹿らしく思える時もあるというか
剥き出しが出せずに偽らざるを得ない世界で何故必死に生きてるの、とか
他人と話しているときも嘘の、もう一体の自分である事を認識せざるを得ない時があったり
それって実はものすごく滑稽で
格好の悪い行為なんじゃないか。
とはいいつつも、そんな剥き出しの自分を出す勇気もなく
醜態を晒す度胸もなく
どうしようもない空しさと閉じ込めた殻に埋もれてただ消費するだけの人生が続いていく。
続いていってしまう。
それは幸せなのか、それとも不幸なのか。
自分ひとりだけが分かっていれば幸せって言えるのか。それとも。
【ぶん殴って ぶっ壊してくれよ
破いて 裂いて 引っ剥がしてくれよ
ありったけ着込んだ鎧を】
そして、それに対する答えが歌われているのがBメロからサビに向けての部分な訳ですが
最もインパクトに残るのはこの部分で
例えそれがショックで
自身傷付いたとしても
その殻が壊れる事を望むというか。他人とのセッションプレイを望むというか。
そんな決意と覚悟が垣間見れる歌です。
基本晒すのが怖いから
剥き出しが怖いから
変な防御策を張るわけで、それを自分自身で取っ払える部分は限られていて
だからこそ誰かとぶつかって、形を変えて、それが自分の新しい形になって。
っていう
他人と繋がって生きることの大切さが歌われてる曲でもあるような・・・
個人的にはそんな気もしてます。
変な防御策を取っても
それを破れる人の前では平気で破かれてしまう
けどそれってある意味では幸せなことだったんじゃないか。
それを恐れずに望めば、何か変わる可能性だってあるかもしれない。
だとしたらどんどんぶつかって
その度に殻なんて捨ててしまえばいい。そこまでの勇気がなかったとしても
それでも人と繋がり変わる事には重要な意味がある。そういう歌です。
自分だけの殻の中では、行ける世界に限界がある。
そんな事に気づかされる歌でもあります。
パッと聴き、疾走感の強いサクッとしたロックナンバーになってますけど
歌われていることは中々に興味深く
色々と考えてしまいます。
そうはいいつつも、サビのブワッと一気に広がるサウンドの奥行きには
聴くたびに相当の爽快感も感じてしまいますね。
そんな面倒臭さと単純な気持ち良さが同居しているナンバーです。この曲もまた面白かった。
イントロの小気味良いカッティングもまたすこぶる気持ち良い曲です。この曲もまた成長を感じさせる一曲。