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超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

NICO Touches the Walls「PASSENGER」全曲レビューその9 「マトリョーシカ」

2011-07-24 20:43:19 | 音楽(全曲レビュー)





NICO Touches the Walls「PASSENGER」全曲レビューその9「マトリョーシカ」です。


この曲はアニメのOPにも使われたので知名度はそこそこあるはず。

ちなみに初めてベース坂倉心悟が作曲した曲としてもファンの間では有名。





9.マトリョーシカ




マトリョーシカとは人形の中にまた人形があって、その中に人形があって・・・
っていうロシアの人形の事ですね。
要は本体は一番奥に隠されているということ。

子供の時ならまだしも、大人になっても在りのままの自分で~
なんて人間は殆どいません。
いないと思います。
大抵誰もが何重にも作った自分の殻の中で生活していて
人によって状況によって見せる殻も違っていて、ある時は一番最初の完璧に作られた殻だったり
ある時は4番目の比較的自分に近い殻だったり
もしくは常に精神武装した状態だったり
その殻の一番奥にある
本当の自分ってやつは、我侭で自分勝手で、でも最も純な姿であるその形は
自分しか知らないまま
他人には知りえぬまま
日々は人生は過ぎ去ってしまう訳です。で、それを時々馬鹿らしく思える時もあるというか
剥き出しが出せずに偽らざるを得ない世界で何故必死に生きてるの、とか
他人と話しているときも嘘の、もう一体の自分である事を認識せざるを得ない時があったり
それって実はものすごく滑稽で
格好の悪い行為なんじゃないか。
とはいいつつも、そんな剥き出しの自分を出す勇気もなく
醜態を晒す度胸もなく
どうしようもない空しさと閉じ込めた殻に埋もれてただ消費するだけの人生が続いていく。
続いていってしまう。
それは幸せなのか、それとも不幸なのか。
自分ひとりだけが分かっていれば幸せって言えるのか。それとも。


【ぶん殴って ぶっ壊してくれよ 
 破いて 裂いて 引っ剥がしてくれよ
 ありったけ着込んだ鎧を】

そして、それに対する答えが歌われているのがBメロからサビに向けての部分な訳ですが
最もインパクトに残るのはこの部分で
例えそれがショックで
自身傷付いたとしても
その殻が壊れる事を望むというか。他人とのセッションプレイを望むというか。
そんな決意と覚悟が垣間見れる歌です。
基本晒すのが怖いから
剥き出しが怖いから
変な防御策を張るわけで、それを自分自身で取っ払える部分は限られていて
だからこそ誰かとぶつかって、形を変えて、それが自分の新しい形になって。
っていう
他人と繋がって生きることの大切さが歌われてる曲でもあるような・・・
個人的にはそんな気もしてます。
変な防御策を取っても
それを破れる人の前では平気で破かれてしまう
けどそれってある意味では幸せなことだったんじゃないか。
それを恐れずに望めば、何か変わる可能性だってあるかもしれない。
だとしたらどんどんぶつかって
その度に殻なんて捨ててしまえばいい。そこまでの勇気がなかったとしても
それでも人と繋がり変わる事には重要な意味がある。そういう歌です。

自分だけの殻の中では、行ける世界に限界がある。
そんな事に気づかされる歌でもあります。


パッと聴き、疾走感の強いサクッとしたロックナンバーになってますけど
歌われていることは中々に興味深く
色々と考えてしまいます。
そうはいいつつも、サビのブワッと一気に広がるサウンドの奥行きには
聴くたびに相当の爽快感も感じてしまいますね。
そんな面倒臭さと単純な気持ち良さが同居しているナンバーです。この曲もまた面白かった。




イントロの小気味良いカッティングもまたすこぶる気持ち良い曲です。この曲もまた成長を感じさせる一曲。




NICO Touches the Walls「PASSENGER」全曲レビューその8 「友情賛歌」

2011-07-21 20:25:37 | 音楽(全曲レビュー)





NICO Touches the Walls「PASSENGER」全曲レビュー、その8「友情賛歌」です。






8.友情賛歌



この曲は王道って感じのリフに
ポップなメロディ
敢えてベタにしたと思われる歌詞、とアルバムの中でも大衆受けポジションというか
「君だけ」とか「SURVIVE」に比べたら歌詞もメロディも人選ばない感じで
とっても聴きやすい曲になっています。
最後は一人になってしまう、
だからこそ今は一人で居たくない。
誰かと何かを分かち合いたい。そんな素朴だけど素敵にな曲になってて
途中入るいかにも青春真っ最中ってテイストの演出も含めて
10代の頃の気持ちを思い出すような
又はイメージさせるような。
そんな若々しい曲にもなってますね。こういう入り口の広い曲も必要ですよね、って事で。


青春はバカでバカで、って歌われてるんですけど
本当若いときってバカばっかりやってるんですよね。
今思い返してみると
何でこんな事やってたんだ!?とか思うんですけど
それもまた人間の楽しさっていうか
変化の面白味っていうか。
例えば今は自分で自分のやってることまともだって、そう思ってるかもしれないけれど
また数年後に自分の行動を振り返って見ると「バカだったなあ」って思うんだろうな、とも。
それの繰り返しが人生なんだろうけど
まあ振り返って笑える時点で何らかの成長はしてるんでしょうね。
っていうかそう思いたいけど(笑)。
笑えるならばそれはそれでOKかな、って気もする。




ライブではほぼ毎回の確率で合唱パターンでした。音自体が懐かしさを煽ってるので
不思議と学生時代の雰囲気を想起させたりね。いい曲です。



NICO Touches the Walls「PASSENGER」全曲レビューその7 「容疑者」

2011-07-17 17:22:52 | 音楽(全曲レビュー)




NICO Touches the Walls「PASSENGER」全曲レビューその7は「容疑者」です。

個人的にこのアルバムの中でも一二を争うくらい好きな曲。

生で聴くとまた沁みます。






7.容疑者



この世の総ての人々を容疑者に仕立てて
自らの罪を暴いて浄化するような曲。
きっと誰もが人を傷つけて
きっと誰もがそんな自分に対して罪悪感を背負っていて。
そんな心境をストレートに、でも沁みるように表現した一曲に仕上がっています。


【僕らは何回も罪犯してる 間違いがお上手なんだよ】

この「お上手」って表現がいかにも皮肉というか自嘲っぽくていいですね。
敢えて丁寧語にする事によって更に追い討ちを掛けるように。
誰もが誰かを傷つけて
取り返しの付かない失敗をして
それでもその罪を背負ったまま進む事を余儀なくされ
その上その道から外れることも許されない。
逆を言えば他人を傷つけた事のない人間なんて存在しないし
その意味では誰かを安易に責めたって
その実自分だって同罪だったり。
同じ穴のムジナ。


【なんにもない なんにもない ただの空に何を思うの】

これもまた傷口を抉られるようなフレーズですが・・・。
何も持っていない自分に
一体何を思えというのか。
何を感じろというのか
何を誇りに思えというのか。
失敗ばかりで、捨ててばっかで
その癖得たものは数えるほどでしかなく
誰に何を言われたって
思われたって
自分は自分でしかなく、その枠から抜け出せるイメージすらも持てないまま。


【ナイフじゃない 鈍器でもない 思想でもないようなものを
 振り上げて 振り下ろして 自分の胸グサッと入った】

全体的にこのアルバムの詞って特にキレの良い曲ばっかなんですけど
この曲はその中でも特に神懸かってますね。
このフレーズ自体がグサッと刺さったりするんですが
自分が正しいと思って行動した筈なのに
気付けばそれが自分の身を削っていて
その上誰にも伝わらないまま
自分だけ愚かなまま終わってしまう、それは思想でもなくメッセージでもなく
誰にも分かってもらえないのであればその時点では単なる意固地でしかない。
自分を貫こうと思っていたら
自分を貫いていた。
そんな話。


【本気で君を奪い去れたら この傷は痛いはずないや】

傷が痛いのは
心が痛いのは
どこにも到達できてないからであって
何か一つ成し遂げられる力があるならば
そんな干渉力があるならば
もうとっくに痛みなんて引いているはずで
それが出来ないから傷口はいつまでも傷口のままなんです。




【捕まえて またひとり罪人が逃げる】

でもだからって捕まるかとか
それで終わりになるかっていうとそれは別の話。
前述の通り
それでもダラダラと日々は続き
失敗は失敗のままでいつまでも居残り
人生居残り状態。
いつまでも廊下に立たされたまま、それでもリタイヤもアウトも許されず
誰も許してくれず
捕まえてもくれない。宙ぶらりん状態。

でも、それでも、そういう失敗を繰り返して形作られたのがこの自分なら
そんな自分を少しでも肯定する事が出来たのならば
間違いだって
ある意味では正しくて
そんな自分は存在を許されるはずで。
明確に答えなんて記されてない歌だけど、それがリアルだとも思うんだけど
もしいつか何かを掴む事が出来たなら
目の前の壁を越える事が出来たのなら。

今までの間違いも失敗も、それまでの糧だったってそう思える。だからまた失敗しても歩き出して。




楽曲自体はミディアム風味のシンプルなロックですが
詞が詞なので聴いてる最中に色々と考えてしまいます。
その分大事な曲にもなりました。
今までのNICOのキャリアの中でも詞の出来は随一なんじゃないかなあ。なんて。




NICO Touches the Walls「PASSENGER」全曲レビューその6 「SURVIVE」

2011-07-07 21:30:58 | 音楽(全曲レビュー)






NICO Touches the Walls「PASSENGER」全曲レビューその6、「SURVIVE」です。
インディー時代からやってきたNICO流のロックンロールを今風に昇華させた曲です。

ストレートに格好良い、とも形容できる曲。
リフ聴いてるだけである程度の面白味は確約されていると思います。
盛り上がり過ぎない程度をわきまえたサビもまた個性的な部分です。






6.SURVIVE




【誰が買うんだ 永遠のSURVIVE】

歌詞については色々と言及出来ますけど
多分この曲が一番言いたいのはこれだと思います。
誰が買うんだ、と。
辛いばかりのこの命のチケットを、と。
それも一生が終わるまでずっとしがらみに追われて
自らの能力の無さに苦悩しなければいけない
安住の地なんてどこにもなくて
いつだって何かと戦わされなきゃいけない、過酷なサバイバルゲーム。
そこで何度も振り落とされて
犠牲になって
それでもまたコンティニュー必至、というこの事実。
繰り返しばかりがこの人生。
それを誰が望むか、
誰が買うのか。
わざわざそこに行こうとするのか。

【万年バックじゃ永遠はツラい】

ホームにすら立てないし
誰かの陰でおこぼれを貰うように生きる人生
誰かに生きろと強く歌われても
そんな状態で
不甲斐なく生きてる事自体がある意味苦痛で
輝けないまま鈍く生きるのは何よりも残酷な罰ゲームで。
だからこそ何かを掴みたい、と
何度もあがくんだけど
【意味もなくコーラを飲んでる】と、何の志も持てず実行も出来ないままに
無作為にご褒美を貰って生きる毎日が続く訳ですよ。
それで一瞬気が紛れてしまうから。


【力ずくで生き残れ さぁDIVE】

【別に僕は何も望んでない】

この曲はそんな現状に対して頑張れもハッピーエンドも全然描いてはいなくて
それでも望まないままに
再び潜って
あがいて、それを繰り返して、また椅子の奪い合いで、っていう
結論という結論が全く出ていなくて
それがまたリアルで
やるせなさも煽っていて。でも最後に一つだけ
【意味を持ってコーラを飲んでる】
この意識の切り替えが重要、というかそれは「Diver」の最後の部分にも通じると思うんですけど。
ならば些細な幸せや喜びに価値を見出すだけ、っていう。
それでごまかせたのならば
それはそれで幸せなんじゃないか、って。
そんなものでこの永遠を乗り切れたのなら、それは一つの誇りなんじゃないか。ただ飲み込むだけじゃなくて。

だから、糧を持って再び深海の底へ。



【逝くにゃちょっと早すぎるよ】




NICO Touches the Walls「PASSENGER」全曲レビューその5 「君だけ」

2011-07-01 23:24:35 | 音楽(全曲レビュー)




NICO Touches the Walls「PASSENGER」全曲レビューその5、「君だけ」です。

この曲はライブで聴いて、音源以上に好きになれた感があります。
特に柏で聴いたのは正直鳥肌ものだったな・・・。
ただのラブソング、ってよりは
異常な執着心があるっていうか。それを声とメロディで表現した一曲です。





5.君だけ




ここでいう君だけ、っていうのは
文字通り愛するあなただけって意味合いなんですけど
そこに込められてる想いがですね
歌と共に滲み出て、どうしようもなくなってるような。って書くと情念だらけのようにも思えますが
聴き応えはそこまでベットリともしてないんですよね。
だから、本当に気持ち先走って
声は甘めながらも、その実痛みも込められているような、そんな曲です。

君だけ、って普通に歌っても
ウソだろって思われるのもあるっちゃあ、あるとは思うんですが
この曲は詞の中で

【本当かよ】

って自問自答してるんですよね。
本当に君だけなのか
自分の身を賭してでも守ってやれるのか
そんな事言ってたって、ある日当然いなくなってしまうんじゃないか
だとしたらこんな想いも全部ウソじゃねえか、と。
きれいごと抜かすな
って自分自身に刃を向けている訳です。
都合のいい事ばっか言いやがって、と。誰を批判してるつもりなく
あるのはただただ自分を物足りなく思う気持ちばかりで。


【こんな体じゃ 物足りないけど】

とはいえ
だからといって何もしないのも違うし
例え自分の存在を発言をウソくさいと感じても
それでもなんとか、
なんとしでてもって気持ちで取り組むしかない。
甘いだけのラブソングからは完全に逸脱してて
こんな体じゃ物足りない、っていうのは
それこそ全体を含めてだと思うんですけど
そこで立ち止まるのではなく、物足りなくても、満たされなくても
それでもなんとか必死で喰らいついて
大切な誰かを守れるように
この体で守れるように。


自分のいう事やる事にウソくささや無責任を感じたのならば
それを本当にしちまえ、と。
そんな歌でもあると思います。中々に奥の深いラブソングに仕上がっていますね。




曲調も王道のミドルテンポ、歌詞もまたベタといえばベタなんですけど
その中でも一歩抜け出そうとする精神が感じられる一曲です。
そんな心意気が何より心地のいい名バラッドですね。