日伊文化交流会

サークル「日伊文化交流会」は板橋区で生まれ、元東都生協登録サークルとしてイタリア好きの人たちが集まり楽しく活動しています

「シチリアの奇跡 マフィアからエシカルへ」(島村奈津著、新潮社刊)を読みました

2023年06月17日 | イタリア関連の出版物

「シチリアの奇跡 マフィアからエシカルへ」(島村奈津著、新潮社刊)を読みました

 

「ゴッドファーザー」の島から オーガニックの先進地へ

諦めない人々の闘いのドキュメント! 本当のSDGsは 命がけ

 

映画「ゴッドファーザー」が象徴する“マフィアの島”が 今やオーガニックとエシカル(倫理的)消費の最先端へ―― 

みかじめ料不払い運動に反マフィア観光ツアー 有名ピザ屋が恐喝者を取り押さえ 押収された土地は人気の有機ワイン農場に姿を変えた――

『スローフードな人生!』の著者が 10年以上の現地取材で伝える 諦めない人々のしなやかな闘いのドキュメント

新しい地域おこしはイタリア発 シチリアに学べ!

 

     *   *   *

 

『スローフードな人生!』等を書いてきた島村奈津氏の最新刊シチリアの奇跡 マフィアからエシカルへ(2022.12.20発行)を読みました

シチリアで マフィア(コーザ・ノストラ)にみかじめ料を払わず エシカル(倫理的)なやり方で地域経済を担ってゆく 若くてしがらみの少ない人たちの勇気ある行動の数々が丁寧に描かれており とても感銘を受けました

マフィアから取り上げた土地にエシカルな農産物を栽培するという 最も真逆のものだからこそ イメージの払しょくもできるとのこと そのために 教育 市民活動 行政の 3つの立場から倫理観を高めてゆくことが大切なのですね

元孤児院に作られたCIDMA(チドゥマ)という展示施設には 命がけでマフィアと闘って亡くなった かのファルコ―ネ判事ボルセリーノ判事たちが書き上げたマフィア大裁判のための約7千枚の調書のコピーが パレルモ裁判所から寄贈されたそうです 

この調書は 映画「シチリアーノ 裏切りの美学」の主人公でもあるトンマーゾ・ブシェッタの証言とのこと 

 

マフィアの歴史について 第ニ章の「近代国家の申し子 マフィアとヤクザ」では ガリバルディの義勇軍の中から多くのマフィアが誕生したことが触れられていました ランぺドゥーサの小説『山猫』にも書かれているとのこと (映画は観ましたが 本も読んでみたくなりました)

1943年夏の連合軍のシチリア上陸作戦のあと 連合軍政府が終戦直後に マフィアの多くをシチリアの市町村長に任命し 蘇らせてしまったこと これも 映画(PIFの「愛の為に戦地へ(in guerra per amore)」)でも観ました 

また 2001年に長い裁判の末に有罪判決が下ったが その時に世論を大きく動かしたのは『ぺッピーノの百歩(I cento passi)』(2000年、マルコ・T.ジョルダーナ監督)という映画のロングランだったそうです それも観たくなりました 

 

第三章「故郷のために命をかけた二人の判事」では シチリア・マフィア大裁判を起こし 爆殺された二人の判事について書かれています まさに国を変える程の怒りと同様を引き起こしたこの事件を幼い頃に知った世代が 立ち上がったのですね

合法性(regalita')がキーワードであり 縁故主義(クリエンテリズモ)がはびこる中にあって 「合法性の船(nave della regalita')」という教育プロジェクトは 腐敗と無縁な世代を育てる一大プロジェクトであり 修学旅行などで毎年数万人がシチリアを訪れるとのこと

 

冒頭にあった みかじめ料の脅しに屈せず孤立したあげく1992年に暗殺されてしまったリーベロ(自由という意味)という経営者の死から30年 遺族たちはもはや孤独ではなく EU議員となって遺族や被害者の補償制度をつくっていったのですね

みかじめ料不払いの店のリストを作ったり 普段の買い物がマフィア撲滅につながることを示す数々の運動が 未来を変えてゆきます

2004年に生まれた「Addio Pizzo(さよなら、みかじめ料)協会」は (pizzoは俗語でみかじめ料)  島から出ずにエシカルな町おこしを続ける若者たちが支えています

リーベラ」というカトリック系の市民団体は 「さよなら、みかじめ料協会」とも連携して マフィアからの押収地で希少な食材を作ったり売っている店を運営しているとのこと 1996年に対策法案の改正が可決されたのです

 

勇気の出る試みが続けられていて 襟を正される思いでした ー

 

「シチリアの奇跡 マフィアからエシカルへ」は こちら

 

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