日伊文化交流会

サークル「日伊文化交流会」は板橋区で生まれ、元東都生協登録サークルとしてイタリア好きの人たちが集まり楽しく活動しています

イタリアの生協について知ろう!ACI コミュニティコープ GAS 社会的協同組合 イタリアの生協の特徴等-後半

2019年02月23日 | 東都生協関連・海外の生協

イタリアの生協について知ろう!ACI コミュニティコープ GAS 社会的協同組合 イタリアの生協の特徴等-後半



前半は こちら

以下は 後半です:

6. コミュニティコープ(地域社会と密着した 小さな生協)


コミュニティコープ
(la Cooperativa della Comunità)は 欧州をはじめとした世界各地で増え続けている 地域社会と密着した事業活動を行う協同組合のことです
とりわけ公的サービスが行き届かない小規模自治体で 設立が増えており 「くらし」にかかわるニーズに応えて 住民の満足度を高めることが目的とのこと
リポートでは 南イタリアのプーリア州(かかとの部分)のレッチェ(Lecce)と バーリ(Bali)の2つの村のコミュニティコープが紹介され これらはレガ・コープ(Lega Coop)によって支援されています

プーリア州バーリは アルベロベッロで有名な街で コムーネ(comune)は基礎自治体で8,000以上ありますが そのうち7割が人口5,000人未満です

2008年のリーマンショック 2010年の経済危機で 小規模自治体はさまざまな公共サービスが閉鎖・中止される中にあって 福祉 交通 エネルギー 地産地消 観光 飲料水 教育などのサービスを 地域のニーズに合わせて提供し 組合員以外の非組合員である地域社会の構成員にもサービスが利用できるのだそうです

プーリア州レッチェ(Lecce)県 メルピニャーノ(Melpignano)村(人口2,300人のコムーネ)に 2011年に設立されたコミュニティコープの事業とは 太陽光発電パネルを組合員の自宅の屋根に設置することだそうです
ソーラーパネルの地面設置には 除草剤をまくため 屋根に設置することを初めて決めたのが 有志住民たちが作った「メルピニャーノコープ(comunità cooperativa Melpignano)」 

この村長さんは 「イタリアの真の村の協会(Borghi autentici d'Italia)の会長でもあります

2014年にプーリア州でコミュニティコープに関する州法が制定され 州法はアブルッツォ州やリグーリア州など 他の州にも広がっています

この報告にある 2016年4月現在でのコミュニティコープは イタリア全土で40あり 1,500人の組合員がいるとのこと
レーガ・コープのコープフォンド(協同組合基金)の助成を受けています

2013年からは 村の環境保護のための水販売事業「水の家プロジェクト(Casa dell'acuqua)」が始まりました
村の中心地に水の販売機が作られ ペットボトル消費を抑えるだけでなく 運搬のCO2も減らし 村人たちの出会いの場ともなり いつしかカップルが...💛 これがイタリアらしさ!

プーリア州バーリ県 アルベロベッロにあるファイバーシティコープ(Faber city)は2015年に設立され 30代の若者が中心となり児童の学習サポート 交通手段の改善を行政に要請し 村の伝統工芸の振興策なども行っています

まとめには 1970年代に経済危機に見舞われ 公共サービスが行き届かなかった時にも 協同組合が福祉サービスを提供し これが1991年に法制化された社会的協同組合(8.参照)の前身となった とあります
 (「イタリアで設立がすすむコミュニティコープ訪問報告&海外の生協 2016」(2016.8)@生協総合研究所「生活協同組合研究」より)

7. GAS(団結した購買者の連帯グループ)

1994年頃に始まった GAS(Gruppo di acuisto solidale/共同購入グループ)は 「公正、連帯、サスティナブル(equità, solidarietà e sostenibilità)」の原則により 生産者から直接 共同購入をするものです

20人くらいの都市住民の小規模なグループで まとめ役が注文を合計したり 全量引き取り 作業への参加 メンバーが注文品引き取りに行くなどして 安心で品質のよいものが市価より安く買えるので増えているそうです

まるで日本の生協の成り立ちを見ているかのようですね
Coop(生協)とは異なるものですが このGASは 日本が起源と聞いて さらに驚きました!

日本有機農業研究会」による「生産者と消費者の提携」が その起源とのこと
(イタリア文化講座「「サステイナブルなイタリア - 持続可能なイタリアの食と生産の現在 -」を聞きに行ってきました(2017.1.21)@星美学園短期大学日伊総合研究所」より(講師: 学習院女子大学非常勤講師 中野美季先生)


GASは日本でいう「産消連携による農産物購入グループ」のことで レッジョ・エミーリア市にある「レ・ジャーレ」というGASは 生協の班のように配送ポイント(ガレージなど)に置かれた通い箱(ビオケース/cassetta)から小分けにしていますが 何が入っているかを問わないとのことで 「責任購買」というそうです
(「食農分野で躍動する日欧の社会的企業 -イタリア発地域の福祉は協同の力で」2016年7月発行より)

  ← GASの通い箱


8. 社会的協同組合(Cooperativa sociale)


1854年にトリノで初めての協同組合が設立されました
また日本の生協法と イタリアのそれとの違いで一番大きいのは イタリアには生協に特化した法律はなく 「憲法に協同組合の社会的役割が規定されている」ことでしょう
(「生協総研レポートNo.76 イタリアの生協の現状について Ⅱ イタリアの生協の現状について」(2014年11月発行)@(財)生協総合研究所)

「人々による幸福の追求」という 広い意味での「福祉」をキーワードとして 協同組合がその実現のために どのような役割・機能を果たしうるのか ヨーロッパ(イタリア、フランス)と 日本の事例を通じて論じた中で 特に注目するのは 農業・農村に基礎をおいた社会的協同組合です

1991年
に「社会的協同組合法」が成立し 非営利性と その代償措置としての税制上の優遇措置が規定されました
社会的協同組合には2種類あり A型は 社会的ハンディキャップの人々を保護する労働者協同組合 
B型は 障がい者が組合員として労働参加する 労働者協同組合です (有給労働者の30%が障がい者)

レッジョ・エミーリアにある「ストラデッロ(lo stradello)」(小道という意味)という社会的協同組合は A+B型で 農業 直売 貸農園 太陽光発電 デイサービスや 自治体からのさまざまな受託事業を行っています

レッジョ・エミーリアの「ベットリーノ(Bettolino)」という社会的協同組合はB型で 協同組合原則は CSR(企業の社会的責任)そのもの あるいはCSRは協同組合原則から生まれてきたと理解されています
ごみ処理や その熱でハーブや花を育て ごみの減量に取り組んでいます (ここのサイトのビデオを見ました 農業 花の栽培などとてもわかりやすいです)

「バレ・ディ・カバリエーリ(cooperativa valle dei cavalieri)」(騎士団の谷という意味)という社会的協同組合では B型の条件をぎりぎりクリアしており (7名の従業員) 地域おこしや レストラン等 さまざまな活動を担っています

次は 農業協同組合と 社会的協同組合の複合体 SCA(農業の社会的協同組合)が紹介され レッジョ・エミーリアの「ラ・ルチェルナ(Cooperativa La Lucerna)」(オイルランプの意味)では GAS(団結した購買者の連帯グループ)と取引しています

ちなみに 日本の有機農産物の生産者1%以下にとどまっているのに対し イタリアでは5~6%に達しているとのこと (「食農分野で躍動する日欧の社会的企業 - イタリア発地域の福祉は協同の力で」)


日本の取り組み

日本のソーシャルファーム(社会的企業 あるいは社会的農場)が 「農福連携」として 農業の新しい価値を見出した動きとして紹介されています
ソーシャルファームジャパン(農協と労協の連携) 福祉専門の福祉クラブ生協 食事サービスワーコレ(ワーカーズコレクティブ) 社会的農場に取り組む日本の生協等があります
 (「食農分野で躍動する日欧の社会的企業 - イタリア発地域の福祉は協同の力で」)


9. イタリアの生協の特徴 組合員アンケートより


「ただ参加するだけの組合員は 組合員活動を制御する力を持たないし 会計を読み取ることもできない」
「組合員は 主人公でなければならないし 意思決定に関与せねばならない」とあります
(「イタリアの協同組合」(緑風出版発行)第六章 ガバナンス/"大きくなる"戦略)


1975年に 経済悪化のために多くの生協が危機に陥った中 フィレンツェ生協が独自の改革で 危機を脱したこと
また1986年に ANCC傘下の8大生協の「ハイパー設立のためのコンソーシアム」が結成されたこと
Iper Coop」ロゴの共有など...
さらに驚いたのは 「日本の生協が イタリアの生協の発展に 少なからぬ影響を与えた」こと 姉妹提携の話など
(「生協総研レポート No.76 イタリアの生協の現状について」 Ⅰ イタリアの生協、その苦難の歴史 (2014年11月発行) (財)生協総合研究所発行

また 1955年にやはりローマで設立された イタリア生協連(ANCC/Associazione Nazionale Cooperative di Consumatori)の傘下には コープイタリア(Coop Italia)というコンソーシアム(事業連合組織) INRES(Istituto Nazionale Consulenza, Progettazione, Ingegneria) *
そしてなんと生協学校(Scuola Coop)まであるのです  これも驚きでした 
若手職員の育成 生協コンテストなど...

この中の「日本の生協との比較」の数字は 興味深く イタリアの方が小規模で 組合員も日本よりは少ないようです

また 生協のガバナンスでは フィレンツェ生協が例外として紹介されており 経営陣の代表で作られる経営委員会のメンバーを
組合員の代表で作られる監視委員会が任命する とあります

ウニコープ・フィレンツェ(Unicoop Firenze)の 組合員集会の写真を見ると男性が多く 日本の生協の組合員はほとんどが女性ですがイタリアでは男女半々 しかも年齢も若めです (東都生協組合員の平均年齢は61才/2017年時点)

また イタリアの生協は南部には少ないのですが これは 不況の影響が深刻な南部には もともと生協の店舗が少なかったため 経営悪化を免れた面があるのです

シチリアが例外と別の本にはありますが これは個人組合員がいないのだそうです
生協の店舗にはガソリンスタンドや 図書館まで併設されている写真もあり プライベートブランド(PB)もあります
「安全 おいしい 便利 倫理的 環境」の 5つの価値にもとづいて開発された商品で ターゲットはミドル階級とのこと
価格について特筆すべきは 「便利な価格とは 最低限の価格ではなく 商品の品質と安全性 倫理性 環境の持続可能性がバランスよく組み合わされた合理的な価格のこと」です

コープイタリアのTVコマーシャルでは 生協の組合員さんにインタビューをして 「低価格と品質と どちらを選ぶ?」と聞くと 「品質」と答えるとのこと

「自宅の水」キャンペーンでは ミネラルウォーターの水を瓶詰して輸送することの環境負荷を知らせていますし 
学校での消費者教育活動Sapere Coop: 生協提供の知識」活動は 9大生協により 30年間も続いているのだそうです
(「生協総研レポートNo.76 イタリアの生協の現状について Ⅱ イタリアの生協の現状について」(2014年11月発行)@(財)生協総合研究所

イタリア生協ウニコープ(Unicoop)の 組合員アンケートより:

回収率は39%で 特に利用高の高い層とのことですが ウニコープで買う人が99% コープをベースに買う人が65%
ただし加入歴は6~15年前後の若い人が多く 日本では半数が20年以上加入している人との記述に納得!!
また 生協に求めるものの日伊比較もなかなかに興味深いです (回収率が低いので その点割り引いて考えないといけないですが)
(「生協総研レポート No.76 イタリアの生協の現状について Ⅲ ウニコープ・フィレンツェの組合員調査にみるイタリア生協の組合員」(2014年11月発行)@(財)生協総合研究所


エミリア・ロマーニャ州のコープ・アドリアティカ生協(Coop Adriatica )では CSR(企業の社会的責任)にかかわる活動を2002年から続けており 「持続可能性」が追記されたそうです

ミッションとしては消費者教育 従業員の労働と業績の評価 組合員への商品とサービスの提供 透明性と公平性に基づいた事業活動 持続可能性 地域の社会的経済の発展への寄与等...
(「生活協同組合研究」2015年4月発行 Vol.471 「コープアドリアティカの社会的活動報告書」)

10. その他 イタリアならではの特色

エミリア・ロマーニャ州は 協同組合の首都といわれ 左翼系のレーガ・コープの中心地です
(「食農分野で躍動する日欧の社会的企業」)

イタリアならではの マフィアから没収した南イタリアの土地を使い 農業を営む社会的協同組合「リベラ・テッラ(Consorzio Libera Terra)」の支援活動や
高齢者や障がい者生活支援など イタリアのCoopは 実に意欲的に有機的に活動しているのですね
(「イタリアの生協の現状について」(生協総研レポート No.76)

11. 参考記事・リポート・書籍

・「イタリアの協同組合」(緑風出版)は こちら(トレント県の協同組合経済史センター研究員のアルベルト・イァーネス氏 翻訳者は佐藤鉱毅氏)

・「食農分野で躍動する日欧の社会的企業 - イタリア発 地域の福祉は協同の力で」(経日Book)は こちら
(日本協同組合学会長の石田正昭著)

・「イタリアの社会的協同組合」(小磯明著、同時代社)は こちら

・「生協総研レポート No.76 イタリアの生協の現状について」(2014年11月発行)は こちら

・「イタリアで設立が進むコミュニティコープ訪問報告&海外の生協2016」(2016.8) 生協総合研究所(CCIJ)発行 「生活協同組合研究」

・ 「生活協同組合研究」 (2016.8 vol.487)の特集記事「海外の生協2016 世界的な環境変化のなかでの歩み」の「イタリアで設立がすすむコミュニティコープ訪問報告」

イタリア文化講座「イタリア文化講座「サステイナブルなイタリア - 持続可能なイタリアの食と生産の現在 -」を聞きに行ってきました(2017.1.21)@星美学園短期大学日伊総合研究所」は こちら

・ 公開講演会「スイスの二大生協の歴史と現況 ミグロとコープ・スイスを比較しつつ」に行ってきました(2017.9.12)@生協総研は こちら

・「未来のスーパーマーケット コープイタリア事例」(ミラノ万博)は こちら (映像です 音が出ます)


イタリアブックフェアで買った本 生協総研で買った本 参加したセミナー等をまとめてこのレジュメを作りました (データ等は変わる場合があります) もし細かい間違い等がありましたら大変申し訳ありません

私にはなかなか難しいテーマではありましたが 日本の生協がイタリアの生協に影響を与えてきたこと イタリアの生協の歴史や特徴がわかって 本当に勉強してきてよかったです

自分はどんな組合員であったらよいのだろうかと 考えるきっかけともなりました 

この記事を作るきっかけをくださいました 中野美季先生に 心よりお礼申し上げます

* 写真は GASの通い箱(cassetta) 

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