今日は第8章の「3 存在の階層の中での情報の位置」について講義する。
第1節と第2節は省略するので、各自で読んでおくこと。
我々の住む自然的世界には存在の階層がある。
一般に階層の根底にあるのは物質とみなされ、そこから諸々の物理的現象や生命的現象や社会的現象や人間的現象や心的現象が生まれてくると考えられている。
つまり、物質という基底層から順次上に書いた現象が階層をなして発生してくる、と思われているのである。
ここには、このテキストで主題となっている「形相」は組み込まれていないし、「情報」は基本的に心的なものとして社会・人間・心という階層に属すものとみなされている。
しかし、この節では「宇宙の情報構造」が森羅万象の基底として据えられ、その上に形相、物質、生命、心という階層がのっかっている。
それをピラミッド型の図で示している。
要するに、このテキストで論じてきたinformation(形相的情報)、宇宙の情報構造が万物の根元だ、というわけである。
これは、高校までの理科に依拠するとトンデモに思える。
しかし、前にも書いたように高校までの理科、特に物理は基本的に19世紀までの自然科学の範囲内に限局されているので、最先端の量子情報科学や情報論的宇宙物理学
を君たちは全く知らないのである。
創発、自己組織性、フラクタルといったニューサイエンスの用語も知らないだろうし、システム論的思考法も身に着いていない。
そこで、万物の根元が情報だと言われても、トンデモと思ってしまう。
しかし、前世紀の物理学では究極の実在は「粒子」なのか「場」なのか、という議論が繰り返された。
アインシュタインによると、我々が物質と呼んでいるものは、巨大なエネルギーが一つの点に集中したものにすぎないのである。
彼によると、物質とはエネルギーの一形態である。
そして、トム・ストウニアによるとエネルギーは情報の一形態ということになる。
それゆえ、物理的世界において情報→エネルギー→物質粒子という階層が成り立つのである。
これらの考え方は古代ギリシアにおける哲学と全科学の創始者たるアリストテレスの形相-質料論の発展版とみなせる。
アリストテレスはデモクリトスの原子論的唯物論を否定して、目的論的自然観を提唱していたのである。
それは不十分で粗野な思想ではあったが、根本的指向性は秀逸であり、それが今日のニューサイエンスや物理学の最先端にある量子情報科学において洗練された形で復興しているのである。
これは猫にとってもすばらしい思想だと思うにゃ