心と神経の哲学/あるいは/脳と精神の哲学

心の哲学と美学、その他なんでもあり

情報と形相

2012-09-11 20:41:00 | 哲学

情報(information)は一般にメッセージ、ニュース、知識の意味で理解されている。
しかし、information にはもっと深い意味がある。
それは、物事に秩序を付与する組織化の原理という意味である。
この意味でのinformation はアリストテレスの形相(eidos)の概念に淵源する。

アリストテレスは万物が形相と質料から成ると考えた。
生物の場合には形相はDNAであり、質料はタンパク質その他の有機物質である。
DNAに蓄えられた遺伝情報にしたがって我々の身体と生理システムは形成されている。
すなわち、我々の身体は情報によって形成された有機物質系なのである。

このように、知識やメッセージという心的な意味での情報以外に、物質や物理的事象に秩序を付与する組織化の原理としての形相的情報というものがある。
心身問題や心脳問題を考える際には、この形相的情報の意味を深く考える必要がある。
それについて深く考えたのは、湯川秀樹、トム・ストウニア、チャルマーズ、そして私である。

これらの人々は情報を物と心の中間ないし両者の媒介項と考えた。
主観と客観の中間と言ってもよい。
そして、このように理解された情報が、心身二元論を最もラディカルに克服することの基礎となるのである。

しかし、それは既にアリストテレスが「形相」に託した深い意味合いであったし、意外なことにプラトンのイデアもそうした含蓄をもっていたのである。
自然(ピュシス)を論じた『ティマイオス』において、観念論的なイデアの概念は自然化され、「形相」的意味合いが増している。

これらのことはもっと詳しく考察しなければならないが、とりあえず『情報の形而上学』を読んでいただきたい。


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