心と神経の哲学/あるいは/脳と精神の哲学

心の哲学と美学、その他なんでもあり

死生観と自然観

2012-09-09 09:08:40 | 哲学

人生や生命の意味を問い詰めていくと、「自然」というものに突き当たる。
死後の世界や霊魂の不滅は論外である。

人間の生命は自然のたまものであり、生物進化の末裔に当たる。
個人の人格や実存的精神の尊厳は一見、超自然的で物質的世界を超越した次元にあるように思われるが、よく考えてみると、やはり自然の産物であることが分かる。
自然と人間、ないし自然と精神の関係を考える際、両者を対立関係におく二元論的見地、そして両者を融合的に捉える生命的自然主義の立場がある。
私は生命的自然主義の立場をとっている。
その場合、自然は生命と精神を包含する有機的システムとして理解される。
アイストテレス、シェリング、ホワイトヘッド、デューイなどがこの立場を代表している。

ところで芥川龍之介は遺書の中で「自殺を決意したら自然が美しいものになった」と言っている。
彼にとって阿鼻叫喚であった現世は、自己の生命と実存の消滅によって美しいものに変わるのである。
このことをどう理解したらよいであろうか。

トランスパーソナル・エコロジーという思想がある。
個人的精神を超越し、自我を自然に向けて超越・拡張しつつ、生態系の保護に寄与しようという思想である。
芥川の思念はこれとは違うであろうが、個としての自我への囚われから解放されて、自然の大生命へと融解・吸収される喜びを吐露したものと思われる。

死生観と自然観の関係を考える際には、意識と自然の関係を生命的自然主義とトランスパーソナル・エコロジーの観点を顧慮したほうが深みが増すであろう。

これに関してはワーウィック・フォックス『トランスパーソナル・エコロジー』星川淳訳、平凡社
ならびに、私の『心・生命・自然』萌書房、2009年を参照。

また、来月に刊行される新著『創発する意識の自然学』でもこのことは扱っている。


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最近買った本

2012-09-09 08:38:33 | 日記
最近買った本。

1. 木村盛武『ヒグマ そこが知りたい』共同文化社、2001年。定価1600円の本をアマゾンのマーケットプライスで500円で購入。本の状態が「良い」という標示だったが、実際に届いた本は新品同様。得したー。数日前にネットで衝撃を受けたヒグマの事件をもっと掘り下げるために買った。作家ではなく実務家が書いた本だが、文章・構成ともベリー・グット。これ一冊でヒグマと人間の戦いの概要を知ることができる。人間と自然の共存についてもね。
2. 山折哲雄『絆 いま、生きるあなたへ』ポプラ社、2011年6月。定価1300円の本をアマゾンで251円でゲット。状態非常に良し。日本大震災の直後に書かれ、出版された本。大震災についてはわずかに触れているのみだが、日本人の死生観と自然観についてあれこれ書いている。「人間と自然の共存」という問題は、「死生観と自然観」という問題と表裏一体の関係にある。というか、密接に関係している。特に日本人や東洋人にとってはそうである。しかし科学技術についての考察も加味しないと片手落ちとなってしまう。

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