(1)イスラエルのガザ地区ハマス攻撃はイランとイスラエルが攻撃し合う展開を巻き込んで、双方戦闘拡大を望まない程度に攻撃を抑制しているとみられる。今回は米国、バイデン大統領の意向がかろうじて抑制となっているとみられている。その米国はパレスチナの国連加盟には反対(拒否権行使)して否決された。
(2)米国がイスラエルを擁護したもので、米国はイスラエルとハマスの戦闘でも国連の停戦決議は否決して、イスラエルの自衛権を保障する従来の姿勢を示している。バイデン大統領はイスラエルのガザ地区侵攻では避難民、民間人に犠牲者が多く出ていることにイスラエルに攻撃自制、休戦を求めており、二重基準(double standard)の姿勢がみえる。
(3)中東紛争、イスラエルとパレスチナの対立を解決するのは地政学的にパレスチナを国家として承認することが必要だが、欧州でのユダヤ人迫害から逃れてキリスト生誕地を目指した歴史的背景もありイスラエルとパレスチナの確執、対立は収まらない。
バイデン大統領もパレスチナ国家を認めるイスラエル、パレスチナ2国家論を容認しており、それからは今回の国連のパレスチナ加盟への米国の反対否決はイスラエルのガザ地区戦闘中ということもあり、時期が悪かったともいえる。
(4)イスラエルとパレスチナの歴史的対立を収めるには、パレスチナを国家として認めることが必要で、そのためにはまずパレスチナの国連加盟承認は第一歩として必要な大事な要素だ。パレスチナが国連に加盟してそこでパレスチナ国家承認につなげていくことが求められる。
米国もイスラエルとパレスチナ2国家論を認める姿勢を示しているのだが、どこまで構想、戦略を見据えているのか米国二重基準国家としてわからない。
(5)少なくとも中東紛争、イスラエル、パレスチナ問題の解決にはパレスチナを国家として認める2国家論は避けては通れないことは認識してのものだろう。しかしこちらの「壁」も大きい。バイデン大統領は中東、アフガンから手を引いて世界の警察国家の役割を見直す姿勢、方針を示している。
中東での反米イランに対抗するため米国の影響力を残すためには、唯一の親米イスラエルの存在は大きく、必要といえる。
(6)そのためのイスラエル擁護、自衛権保障の姿勢であり、2国家論、ガザ地区攻撃抑制とも国連でのイスラエル擁護(停戦拒否、パレスチナ国連加盟否決)ともみられて、二重基準に迫られている。
しかしこれでは政治、軍事、経済の覇権国家としての米国の存在感は薄れ、中国の軍事力台頭、海洋進出に露によるウクライナ軍事侵攻を招くことになり、世界の平和と安全は保障されない。
(7)11月の米大統領選で仮にトランプ前大統領が返り咲くということになれば、さらに強いイスラエル寄りの政治姿勢に中国との経済対立、保護主義政策で国際情勢はいっそう深刻さを増していくことが懸念される。
米国のあいまいさを増す「二重基準」国家を改めなければ、国際政治の対立は深刻さを増して複雑になり、それがバイデン大統領の日米同盟強化、日本の役割、負担の増加に向かわせている。