(1)安倍元首相時代に特定秘密保護法が制定された。同盟国から安全保障にかかわる機密情報を得るために情報管理の高度化が要請されるというもっともらしい名目だったが、日本の場合は米軍駐留による日米安保条約に守られている特殊性もあり、日本がことさらに戦前の監視社会に立ち返ったような特定秘密保護法、共謀罪の制定など必要だったのかは疑わしい。
(2)72年沖縄返還に関しては日本国内への米軍の核持ち込みの密約があったといわれて、その存在が後年米国の外交文書公開法であきらかになったが日本政府はいまだにその事実を認めていない。米国が日米安保にかかわる重要機密を安保上公にできないとして隠して実行していることを国内外に悟られないための安全保障体制の米国追随だ。
本来、国民に隠すような事があってはならずに、パラドックスとして国、政府には国民に隠し事があるという特定秘密保護法の制定だ。
(3)共産主義一党独裁国家の中国では今年反スパイ法が改正強化されて、国家機密に加え文書、データ、資料、物品の提供、窃取など違法行為として拡大適用された。ほとんど国家の意向、意図で決められて摘発されるシステムで、日本の商社員が突如として理由もなくスパイ行為として逮捕される報道が続いた。
(4)日本企業としては中国への出張を手控えるところが増えている。中国社会ではそれに加えてスパイ摘発機関の国家安全省が「全国民にスパイ行為に関する情報を通報するよう呼びかけている」(報道)といわれて、改正反スパイ法により全国民にスパイに関する情報の密告を奨励している。
(5)中国では米中経済戦争により知的財産権の保護が問題になり、中国IT大手が米国市場からの撤退を余儀なくされて対立が続いており、習政権が香港への強制支配体制を敷いて、台湾統一に向けて介入の強行性を表明して国内の情報統制、規律をさらに強める必要性があるとみられる。
(6)中国は巨大消費社会による経済成長、発展を迎えて、米国に次いでGDP世界2位の経済国となり、軍事力強化、近代化、G20を主導して一帯一路政策など政治的にも影響力を増して開放路線を進めている中で、全国民にスパイ情報の密告(anonymous notice)を奨励するというのもそういう社会現実が根底にあるとはいえあまりにギャップが大きくなっている。
(7)異例の3期目をスタートした習政権絶対体制ではあるが、側近で固めた政権も外相が早々に音信不通になり辞任し、国防相も音信不通が続くという異常事態で、社会もデフレが進んで不況といわれて混乱がみられる