旅限無(りょげむ)

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新政権に募る不安 其の弐

2010-02-14 15:16:20 | 政治
夕方の閣議開催のため、天皇陛下の夜のご執務が相次いでいる問題について、宮内庁の羽毛田信吾長官は12日の定例会見で、問題発覚後に内閣側から時間連絡などの面で配慮があるという認識を示し、「もう少し様子を見たい」とする考えを示した。……「夜のご執務は望ましくはないが、大事な国事行為のご公務との兼ね合いを考えなければならない」とした。平野博文官房長官は4日の記者会見で「陛下の負担にならないよう宮内庁と相談して対応したい」とし、10日には、閣議開催時間について連絡を早めるよう努力するという考えを示していた。閣議は毎週火、金曜に開かれる。通常国会が開会した1月18日以降は夕方の開催が相次ぎ、陛下は1月22日▽同26日▽2月2日▽同5日▽同9日に計5回の夜間執務を行われた。12日の閣議は午前中に開催された。
2010年2月12日 産経新聞

■何だか朝青(暴)龍の左手問題みたいな具合になって来ましたぞ。元横綱は親方などの言う事を聞かず自己流で型を壊して軍配上の懸賞金を受け取っていたのに、天覧相撲の時だけはちゃっかり右手で行儀よく受け取ったものでした。陛下の健康を気遣った宮内庁長官を小役人扱いして「文句があるなら辞表を出せ!」と凄んで見せた人民解放軍の野戦司令官を兼務する民主党の幹事長を筆頭に、朝はお勉強会で忙しくて閣議を開いている暇が無い素人閣僚が集まる鳩山サセテイタダク内閣も、国民から顰蹙を買ってばかりいると選挙が心配になったとて、少しはものを考えるようになったのかも知れませんが……。折角、午前中に開いた閣議でトンデモないことが確認されていたそうですぞ。


菅直人副総理・財務相と松野頼久官房副長官が、昨年11月に挙行された政府主催の「天皇陛下ご在位20年記念式典」の最中に居眠りしていた疑惑が、政府が12日に閣議決定した答弁書で“暴露”された。自民党の木村太郎氏が質問主意書で「(式典の)実行委員会副委員長である菅副総理は、天皇陛下のご臨席で、首を何度も何度もこっくりこっくりとし、居眠りをしていた」と指摘。松野氏に関しても「数回、これまた居眠りをして隣の席の松井(孝治)副長官から注意を受けていた」として、「式典に臨む姿勢としていかが」と鳩山内閣の見解をただした。……答弁書は「政府の参列者は天皇陛下のご在位20年を慶祝する気持ちで臨んだ」「鳩山内閣は天皇陛下をはじめとする皇室の方々に、尊崇の念を持って対応している」としつつも、2人の居眠りについては否定も肯定もしていない。
2月12日 産経新聞

■「慶祝する気持ち」「尊崇の念」などと、当たり前過ぎて開いた口が塞がらないことしか答弁できないのは残念なことであります。もしも、その気持ちを持たずに参列していたらエライことではありますが……。天皇陛下がご臨席の場で居眠り出来るとは、なかなか図太い神経を持った人物だ、とは誰も思ってくれないでしょうなあ。式典が挙行された昨年11月といえば菅副総理は看板だけの国家戦略室に押し込められて、一部では暇を持て余しているなどと揶揄されていた頃でありましょう。財務大臣に起用されて役人からレクチャー攻めに遭い、膨大な資料と格闘するようになる前のことですから、毎日の激務で疲れ切っていたとは言い難い時期でした。

■松野官房副長官の方は、アホな官房長官の分まで仕事をさせられて心身ともに草臥れていた可能性はありそうですが、それでも長大なオペラ観劇でもあるまいし、場所柄も弁えずに居眠りするのは如何なものか?隣に座っていた同じ副官房長官に起こして貰っていたのなら猶更、政治家個人として見過ごせない失点だったと言えそうですなあ。

■同じく12日午前の閣議では、在日外国人参政権問題と沖縄基地問題に直結しそうな重大事も話し合われていたそうです。
 
 
政府は12日の閣議で、日韓両国が領有権を主張する竹島について「現在の竹島は現実にわが国が施政を行い得ない状態にある」として、日米安全保障条約の適用外とする答弁書を決定した。国民新党の亀井亜紀子氏の質問主意書に答えた。答弁書は、日米が共同で防衛にあたる、日米安保条約第5条が規定する範囲を「わが国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が発生した場合」と説明。竹島では米国の防衛義務が生じないとした。
2月12日21時28分配信 毎日新聞

■「施政を行い得ない状態」のまま放置していたのは前政権の重大な責任ですが、連立与党である国民新党からの質問に対して、「何かあっても指を銜(くわ)えて見ています」とも解せる答弁を作るとは……クラッシャー小沢の「普通の国」は何処へ行ったのでしょう?日米安保の規定外だとしても日本が領有権を主張している大事な島なのですから、勿論、万が一の場合は自衛権によって防衛活動はするのでしょうな?小沢流の票田開拓戦術を突き進めて変な参政権を認めてしまうと、人口の少ない島根県に突如として「竹島放棄」を公約とする政治勢力が現われるかも知れません。

■「トラスト・ミー」「ゼロベース」「沖縄県民の声」「5月に結論」と発言がころころ変わる鳩山サセテイタダク首相ですから、日米安保の規定から外れる島がもっと増えて行くのも心配です。約束を守らない報復として米国が台湾以北の東シナ海西半分にも出て行かないかも?などと言い出したらガス田問題はあっと言う間にチャイナの思惑通りに進んで行ってしまいそうです。一体、鳩山サセテイタダク首相は何処の誰の「命を守りたい」のでしょうなあ。まさか、自分が「まったく知らない」うちに毎月15000万円ずつ与えてくれた母親のことばかり考えているわけでもないのでしょうが……。
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新政権に募る不安 其の壱

2010-02-14 15:15:23 | 政治
■仮免許の試運転期間はとうの昔に切れていて、今の鳩山サセテイタダク内閣は天下の公道を失踪……ではなくて疾走中のはずであります。国の内外を問わず難問山積で、中には前の政権が小手先で誤魔化しながら先送りしている間に雪達磨式に大きくなり過ぎた問題も多々含まれてはおりますことは同情に値することではありますが、選挙期間中に高く掲げて振り回した国民との約束・契約・マニフェストがなし崩しに反古にされて行くのは感心しませんし、新たなに火種を掘り起こして手が付けられないというのも困ります。

■攻める野党の自民党としては「政治とカネ」という与党時代に散々に苛められた苦い思い出がいっぱいのテーマで意趣返し、それで党内を結束させて勢いをつけたいのは山々でしょうが、鳩山一家の奇怪な母子関係やら小沢幹事長が引き摺る昔懐かしい田中角栄時代の長くて太い尻尾を踏み付けて見せても、次の選挙で票を呼び戻す効果は薄いのではないでしょうか?確かに鳩山サセテイタダク首相を始めとして閣僚たちが素人同然にしどろもどろの答弁をする姿を見せられ続ければ、間違いなく民主党に流れた票が蜘蛛の子を散らすように何処かに消えてしまうでしょう。しかし、その先が自民党だとは到底思えないのであります。


衆院予算委員会は9日午前、鳩山由紀夫首相と全閣僚が出席し、基本的質疑を続けた。岡田克也外相は、核兵器持ち込みに関する日米密約の調査について「確定的なことは言えないが、3月のしかるべきときには結果が出る」と述べ、調査結果が3月ごろになるとの見通しを示した。平岡秀夫氏(民主)の質問に答えた。

■沖縄の普天間基地が何処に移転するのか?という大問題に答えを出すことになっているのが5月ですから、その2箇月前に「密約問題」の調査結果が公表されることになるわけですなあ。今の連立政権ならば、秘密裏に米軍の核抑止力を東アジア全域に及ぼしてくれて有難う、という結論にはなりそうもありませんから、本気で「自分だけ非核」戦略を打ち出すことになりそうです。その勢いで「核も要らない、海兵隊も要らない」と社民党辺りがはしゃぎ出したらどうなるのでしょう?


……長妻昭厚生労働相は、10年度予算の社会保険関連事務費などの事業費(4475億円)のうち、年金保険料から2046億円を充てていることを明らかにした。民主党はマニフェストに「年金保険料を年金給付だけに充当する」と明記しており、質問した大村秀章前副厚労相(自民)は「明確なマニフェスト違反だ。謝罪すべきだ」と追及した。長妻氏は「マニフェストは4年で実現することになっている。初年度に実現できなかったことは遺憾だ」と答弁したが、大村氏は納得せず、紛糾した。……
2010年2月9日 毎日新聞

■4年後に年金制度はどうなっているのか?自民党時代に行く不明になった年金記録を探索修正する費用に加えて2000億円もの事務費を充当する財源が見付かるのか?自民党が社保庁を監督管理できなかった歴史的な責任は余りにも大きくて、この一つだけでも10年や20年の反省・謹慎期間が必要だろうと思えるくらいであります。年金問題をきれいに解決して国民の信頼を取り戻すには、4年は短過ぎるような気もしますが、将来のビジョンを示すのに要する時間としては長過ぎるような気がします。

■責任の所在と制度上の問題点を徹底的に明らかにしないまま、自民党が先に決めていた看板の架け替え政策をそのまま継承するだけでは、何も変わらないまま新たな年金問題が再び起こるだけかも知れません。先の事業仕分けでも、年金積立金を運用すると称して政府の指示に従って国債を買ったり民間金融機関に実際の運用を丸投げしているだけの天下り団体には指一本触れられなかった民主党政権が、4年たったら国民が驚くような立派な年金制度を作り上げるとは思えなくなってしまった今日この頃であります。
 

平野博文官房長官は10日の記者会見で、鳩山政権で始まった夕方の閣議開催が天皇陛下の執務の長時間化につながっていると指摘された問題について、「前日に連絡できるものは連絡をし、できる限り陛下の負担を軽減するように努力はしている」と釈明した。事前連絡があっても天皇陛下が夜間に執務せざるを得ないとの見方に関しては、「精神的に軽減できるのではないか。(執務も)明日の朝でもいいものもあり、そこは幅の中でやっていただける」と述べた。……。
2010年2月10日 産経新聞

■本来なら議場から消えて無くなったはずの官僚答弁が、閣僚の背後からメモを渡す黒子となって復活している図は、何だか出来の悪い落語の一場面のような感じがしますが、所詮は素人集団だったと「政治主導」の看板を徐々に小さくして行くしかないのが現状。天皇陛下を露骨に政治利用するのも「政治主導」の一環だとバレてしまった鳩山サセテイタダク内閣を見渡してみれば、皇室軽視の政治家生活が長かった人が目立っているようですから、自動車会社の労働組合出身の官房長官が「努力はしている」と困ったところに「は」を挟み込んだ答弁をしてしまうのも仕方がないのでしょうなあ。

既視感と呼ぶには間が無くて 其の弐

2010-02-14 08:04:45 | 社会問題・事件
まるでどこかの元横綱の会見を見ているかのようだった。トレードマークのドレッドヘア、鼻ピアス姿で現れた国母は「その件(服装)について、指摘されたので(入村式を)欠席しました。反省してまーす」と悪びれる様子もなく、語尾を伸ばし謝罪。騒動も、どこ吹く風だった。事の発端は、9日の成田からの移動の際にサングラス、シャツ出し、ズボンをズリ下げ姿だったこと。テレビなどで国母の姿を見た視聴者から、全日本スキー連盟に抗議があり、この日は日本オリンピック委員会(JOC)が、日本代表選手団の橋本団長を通じて注意。JOCの市原則之専務理事は「スポーツマンの常識からかけ離れてる。国民の代表として来ている人間の服装じゃない」と、声を荒らげた。

■今時は「服装の乱れは心の乱れ」などと昔の風紀係みたいな事を言っても仕方がないのでしょうが、朝青(暴)龍も髷に浴衣姿という相撲の伝統的な風俗を軽視していることを何度も指摘されていましたなあ。「スポーツマンの常識」とスノーボード界の常識とが合致していないのを承知で、商売優先の理屈を押し通すから五輪種目が不自然に増え続ければ、こういう結果になるのではないでしょうかな?そもそも入場行進を乱雑で無作法な観光客の集団散歩にしてしまった阿呆な米国流を容認した時点で、五輪大会の歴史は大きな曲がり角を通過していたような気もしますなあ。


前夜に入村式参加自粛について本人と話し合ったというスノーボードの萩原監督は「本人はこんなに大騒ぎになるとは思ってなかったみたいで、深く反省していた。本当に残念」と話していたが、プロボーダーとして活動もしており、五輪について「自分にとって活動の中の一つ。特に位置づけはない」と話す若武者には、それほど効果はなかったようだ。最後には国母の態度にしびれを切らした萩原監督が「特に男子は若い子が多くていろんな面で言葉足らず。迷惑をお掛けするかもしれないですが、よろしくお願いします」と、“謝罪”する異例の展開となった会見。……自分の演技を見て、“しぶい”と思ってもらえたら」と意気込む国母だが、2度目の五輪の舞台はメダルへの期待とともに、“日本代表選手の品格”も問われることになりそうだ。
2月12日 デイリースポーツ

■JOC=相撲協会、監督=親方、メダル=優勝と対応させれば朝(暴)龍騒動と瓜二つ。相撲は純粋にプロの興行事業でもありますから、他の格闘技商売との違いがどんどん減って行く可能性があるでしょうし、その先例となっているのが五輪大会ということが言えそうです。参加国の出場枠に入れる実力を持ち、あわよくば表彰台に乗って世界中に顔と名を売れば実入りがぐんと良くなる。そのための大きな階段でしかない五輪大会なら、何もかもが自分のため、国の威信や崇高な精神などは何処かに置き忘れたかのように世界最大のイベントを「楽しみます」と素直に?言い放つ若者は増え続けるのでしょうなあ。既にその是非を論ずる時は過ぎているようですが、相撲はどうなのでしょう?


……国母和宏選手(東海大)が12日、バンクーバー市内で会見し、改めて謝罪した。国母選手は10日の入村式に続き開会式参加も自粛。17日の競技には出場する。国母選手は会見で「ご心配、ご迷惑をおかけしすみませんでした」と謝罪。「いい滑りができるように頑張ります」と話した。橋本団長は「結果を出すことでおわびすることが大事」とし、17日の競技を視察する。

■やっぱり「結果=勝利」が一番大事なのか?と嘆息が漏れそうな団長発言であります。勝てば何でも許されるんだなあ、と多くの若者に正確に伝わってしまいますが、それで宜しいのでしょうか?国際親善にも、スポーツを通しての人間の精神や尊厳の向上にも、厳粛な儀式性が必要なのではないでしょうか?入村式が形骸化し開会式は単なる大掛かりな見世物でしかなくなった五輪大会は、これからますます空疎な催し物になって行きそうです。


9日の日本出発時とバンクーバー到着時、国母選手は日本選手団公式ウエアのネクタイを緩め、ズボンを腰の低い位置に下げ、シャツのすそも出していた。……SAJは五輪代表推薦の取り消しを申し入れたが、橋本団長が国母選手と話し合い、最終的に出場させることを決めた。橋本団長は国母選手の服装については選手団の規範に反しているとの判断を示したうえで、「ここまで来て試合に出ない方が無責任。責任をまっとうしてほしい」と理由を説明した。また、服装の乱れを正せなかった萩原文和監督と2人のコーチにも責任があるとして、開会式出席を自粛させた。今後は五輪終了後、SAJが処分を判断する。
2月13日 産経新聞

■少なくとも「責任=試合」が終わるまではマスコミも下手に騒いで八つ当たりされても困るので静観の構えとなるのでしょうが、大会終了後に「処分」が待っているような状況で、まともに競技に集中できるのか?と心配になります。海から無理やり山に登って来たようなスノーボードという新しい競技に関して、何の知識も興味もない者としても五輪大会の歴史に残りそうな開会式の欠席という事態には大いに興味が湧きます。もしかしたら慌てて付け焼刃の知識を拾って国母選手の競技を凝視することになるかも?

■報道されている映像を見る限り、競技である程度の成績を残せれば国母選手の「商売」には大した支障は無さそうですし、逆に今回の騒動で箔が付いて最高の宣伝になった可能性さえありそうです。それにしても、会見の映像を観ながら、変わった防寒帽子を被っているなあ、と思ったら国母選手の髪の毛だったのですなあ。新聞の全面広告に掲載された顔写真では後頭部でチョン髷風に束ねていたので誤解してしまったのでした。この騒動の後で金星を獲ってしまったら、親方衆や協会に当たる責任者たちはどうするのでしょうなあ?
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既視感と呼ぶには間が無くて 其の壱

2010-02-14 08:03:34 | 社会問題・事件
■教育に関して「個性」だ「ゆとり」だと分かったような分からないような旗が揚げられて授業時間を削り、教科書を薄くしてみたら、今度は学力崩壊だ!モンスターペアレントが急増だ!と慌てて時間を巻き戻そうとしたのは旧自公連立政権でしたが、不思議なことに弱肉強食放任政策が目立った小泉長期政権の時代に「ナンバーワンよりオンリーワン」という、これまた分かったような分からない歌詞の歌が大流行していたおりました。朝青(暴)龍が一人横綱で頑張っていた時期とも重なる長きに亘った自民党政権の末期でありました。

■バブルの崩壊、その後の「失われた10年」、ずっと続くゼロ金利、こつこつ働いて将来のために貯金していると結果的には損をする。国の年金制度を信じて保険料を言われるままに払っていると、これまた酷い目に遭うかも知れない。長引く不況で就職先に困り、うっかり派遣社員に登録すると抜け出せなくなる。それより欧米を見習って株や為替で一攫千金を狙う方が賢いのだ、と囃し立てる者が出て来た時代の寵児になったのがホリエモンで……。

■朝青(暴)龍の引退騒動は真相が分からないまま日本相撲協会の太い腕で強引に幕引きが図られましたが、これから一波乱も二波乱もあるような雲行きであります。どうやら横綱の品格などという業界内の問題を越えて、商売上の個人的な付き合いが広がっている中に相当に怪しい人物が絡まって来ていることを知って腰を抜かした相撲協会が慌ててトカゲの尻尾を切り、縁切り口止め料を出して一件落着、あの人は「元横綱ですから」と今後何が起こっても無関係だと言い張れるアリバイ作りをしたような印象が残っております。

■最初から最後まで「品格」を問われ続けたモンゴルの暴れん坊は、高校時代に留学を決意した時から自分がモンゴル一の出稼ぎ出世頭になろうと固く心に決めてから、どこか暢気な日本人の何倍も稽古を重ね相撲という「競技」を研究し尽くして横綱に上り詰めたのでありました。そこには結果がすべての勝利至上主義が貫かれていたようで、それが激しい好悪の感情を呼んでファンを二分して奇妙な人気を呼んだので、高砂部屋も相撲協会も大切な米櫃として重宝し、マスコミも何かと騒動を起こしてくれる横綱にはたくさんのネタを提供して貰ったので足を向けて寝られないとか……。

■このところ世間のあちこちで目立つのが、本来の目的とはちょっと違う商売上の思惑がどんどん混ざり込んで素人の目にも露骨に映るほど表面化し、ケジメが無くなっているような気がします。何でもかんでも伝統の名に安住しているのも、自主性を捨てて先例を墨守するのも感心しませんが、それでも守るべき一線が消えてしまうと収拾が付かなくなって元も子も無くなってしまいます。世界最大のスポーツ興行と化した五輪大会も例外ではありますまい。


バンクーバー冬季五輪日本選手団の入村式が10日、バンクーバーの選手村で行われ、橋本聖子団長やスノーボードの男女ハーフパイプ代表ら30人が出席した。メダル候補に挙げられる国母和宏(21)=東海大=は、成田からの移動時に公式ユニホームを乱して着ていたとして、日本オリンピック委員会(JOC)から注意を受け、式への出席を自粛。ただその後、公式会見に出席した国母に反省の様子はなく、あくまで“オレ流”を貫いた。

■「オレ流」というのはプロ野球の落合監督が選手時代に使われ始めた言葉のはずですが、いつの間にか周囲から浮き上がった人物を嘲笑もできるし絶賛もできるという実に便利は道具に進化したようですなあ。さんざんに持て囃された「個性」を全身から発散させていないと商売にならない「競技」が五輪大会に混入しているのが実態なのではないでしょうかな?

ダライ・ラマ法王が訪米 其の八

2010-02-14 06:39:04 | チベットもの
■アルナチャルプラデシュ州は立派なチベット文化圏で1959年のチベット動乱で若きダライ・ラマ14世がインドに亡命した折にも、同州のタワン寺に滞在して情勢判断のために情報を集めたり会議を開いたりしたそうですが、この御寺はブータン国境に近く、皮肉なことに大英帝国の置き土産となったマクマホン線と北京政府が「もっと南だ!」と主張する国境線に挟まれているのであります。

■そういう曰く因縁のある思い出の地を訪問してはダメだ!と激しく抗議している北京政府としては、単なる国境画定問題を越えて半世紀前のチベット大動乱を皆が思い出してしまったら困るという事情もあったのでしょうなあ。
 
 
……中国外交部の馬朝旭報道官は20日、北京での定例記者会見で「中国政府はダライ・ラマによるインド訪問に断固として反対する」と述べた。……ダライ・ラマは11月の第2週にインドのアルナーチャル・プラデーシュ州を訪問する予定で、インド政府高官は「ダライ・ラマがアルナーチャル・プラデーシュ州を含むインドのいかなる場所への訪問も許可する」と述べた。

■「解放」によって領土を切り刻まれて小さな自治区だけを与えられたチベットとしては、長い交流の歴史のあるインドとの間に境界線を引けと言われれば、大英帝国の線とも北京政府の主張とも違う区分けを提案したいところなのでしょうが、残念ながら亡命政府を受け入れてくれている恩義のあるインドに対して国境紛争を起こす必要はなさそうです。


中国国際放送局によると、中国はインドのアルアルナーチャル・プラデーシュ州について、「1954年、インドは一方的に確定したマクマホン・ラインの南方において東北辺境特区を設立し、1987年にそれをアルナーチャル・プラデーシュ州に昇格させたが、地理的には中国チベット南部地区の一部で、歴史では中国の領土に属している」と主張する。

■少なくとも17世紀からは「チベット南部地区の一部」だったのは確かなようですが、「歴史」を根拠に「中国の領土に属している」と断定するのは強引過ぎるでしょうなあ。


馬朝旭報道官は「周知のように、中国政府はインドのアルナーチャル・プラデーシュ州における立場は一貫している。中国はダライ・ラマの今回の訪問に強い関心を持っており、今回の訪問はダライ・ラマの中国を分裂させようとする本質をさらに暴露したものだ」と指摘した。
2009年10月21日 サーチナ

■以上のように、ダライ・ラマ法王のインド訪問というのは国境未確定の紛争地に世界の耳目が集まると「分裂」が心配になる北京政府にとっては看過できない大問題なのであります。インド政府が北京政府の横槍を制して後ろ盾になってくれた御蔭で、ダライ・ラマ法王は目出度く11月8日に思い出深い?タワン寺僧院を訪問したのでした。訪問する前には何だのかんだの文句を言っていた北京政府は、訪問してしまった後はインドに対しても沈黙しているようです。もしもタワン寺訪問を許可・支持したインド政府の裏には米国政府の影が動いていたとしたら、今回のオバマ大統領との会見に対して北京政府が驚くほどしつこく怒っている理由も分かるのですが……。