旅限無(りょげむ)

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隠されたピース? 其の参

2010-02-11 12:09:37 | 社会問題・事件
引退発表から一夜明けた5日に米ハワイ入りした朝青龍は……近日中にも聴取の意向が伝わるとみられ、“休暇”を切り上げて再来日する必要が出てくる。長期間、聴取に応じる姿勢を見せなければ逮捕状が出る可能性もあり、13日の旧正月に合わせてのモンゴルへの帰国予定も変更を迫られそうだ。

■民主党の小沢幹事長は検察の事情聴取を「時間がない」と言って拒絶して囲碁を楽しんでいたと報道されましたが、朝青(暴)龍は何かを察知したかのようにゴルフ以外には用事の無さそうなハワイに向けて、これまた電撃的に出国というのも国民の心証を悪化させそうです。民主党は夏の参議院選挙に向けての皮算用に忙しいようですが、朝青(暴)龍の方は引退興行やら異種格闘技興行やら、年末までの長丁場を乗り切らねばなりません。民主党は検察の次の一手が気になるところで、朝青(暴)龍の方は「知人男性」の背後が洗い出されて在らぬ嫌疑まで掛けられそうな不安を抱えているかも知れませんぞ。とにかく、この「知人男性」は怪しい人物らしいですからなあ。


1月16日 未明に都内の飲食店で泥酔の上、騒動を起こしパトカー2
     台が駆けつける騒ぎに。
同月22日 騒動が発覚し師匠の高砂親方が武蔵川理事長を訪れ謝罪。
同月25日 25回目の優勝を飾った千秋楽翌日、武蔵川理事長が高砂
     親方と朝青龍を両国国技館に呼び出し厳重注意。同理事
     長は横審の会合で「身内のマネジャーを酔っぱらって殴
     った」と説明。
同月28日 暴行を受けたのが個人マネジャーではなく、知人男性で
     麻布署に相談に訪れていたことが判明。理事会の吉野監
     事が事実関係の説明と処分を検討する理事会開催を要求。
同月29日 横審の鶴田委員長が両国国技館に出向き武蔵川理事長と
     会談。解雇処分を求める発言も。
同月31日 高砂一門の九重理事ら数人の親方が朝青龍に説明求める。
     本人は「お互い酔っぱらっていて記憶がない。殴打して
     いない」と言い訳。
2月1日 武蔵川理事長が調査委員会の設置を決定。
同月2日 調査委が個人マネジャーの一宮章広氏と運転手から事情
     聞く。朝青龍の弁護士が麻布署に示談書を提出。
同月4日 理事会に呼ばれた朝青龍が事情説明も、解雇を迫られて
     引退届を提出。横審は引退勧告。
同月5日 朝青龍が成田発の航空機で出発し、ハワイ入り。
2010年02月10日 スポーツニッポン

■初場所の期間中に横綱が事件を起こして、そのまま優勝してしまったのですから、何が何でも事件は隠されねばならなかったのでしょう。警察沙汰になってしまった以上は「何も無かった」では済まされない。政治家なら秘書、こういう場合はマネージャーが一身に泥を被って強引に幕引きになるはずでしたが……。でも、いつぞやの仮病帰国サッカー事件の大騒ぎが起った時にも、伝統的な「付け人」ではなくてマネージャーが付いているのは変だぞ!という話が出ていたはずですが、ダイチャン親方も相撲協会もそのまま黙認・追認していたようですなあ。

■元警視総監の吉野準監事がキーパーソンとなって事態が急展開していたのが気になります。相当に詳しい警察情報が届いていたと考えないと、31日の「殴打していない」という横綱発言を「ウソだと思う」と一蹴できるはずはないでしょう。1月28日の段階で吉野監事は「真相」をつかんでいたからこそ、翌29日に早々と「解雇」という話が飛び出して来たのではないでしょうかな?当時のマスコミ報道は不自然に驚いて見せているような印象がありましたなあ。

隠されたピース? 其の弐

2010-02-11 11:53:28 | 社会問題・事件
……警視庁麻布署はこの日、事実関係などを確認するため、朝青龍から暴行を受けたとされる知人男性から任意で事情聴取した。男性は「(朝青龍から)車内で暴行を受けた」と説明。被害届を提出しないことや、「今回のことについて許す」という趣旨を記載した示談書の内容については自分の意思としており、「朝青龍関の処罰を望まない」とも話したという。麻布署は聴取内容や現場の状況なども踏まえて検討するが、今回の証言が決定打となり、朝青龍を任意で事情聴取する可能性が高くなった。

■示談金の金額まで実しやかに囁かれて流布しているのですから、「処罰を望まない」のは当然でしょうし、示談金額に相当する事実の存在は間違いのでしょう。「許す」という発言も一方的に朝青(暴)龍側に責任があることを前提としていますから、「車内で暴行」という話は事実だったという出発点が定まったことになりましょう。


……男性は1月16日未明、勤務している東京・六本木のクラブ前で朝青龍とトラブルになり、朝青龍の車に乗せられた。男性はクラブから約1キロ離れた路上で車から降り、交通事故処理中の麻布署員に「車内で朝青龍関に暴行された」と訴えた。男性はその後、鼻骨骨折など全治1カ月との診断書の写しを持って同署に相談。示談書は1月29日付で、朝青龍側の弁護士が今月2日、麻布署に提出した。

■この「全治1カ月」の診断書というのが曲者で、ほとんど無傷だったという目撃情報まで出ているのですから、診断書の出所も問題になるでしょうなあ。そもそも1月16日未明に折られた鼻は、現時点では「完治」していない計算になりますから、所嫌わず関係者を追い回すテレビカメラや写真雑誌などが被害者の「鼻」を撮影しようとしないのも不思議であります。百聞は一見に如かず、診断時のレントゲン写真や被害状況の記録、あるいは現在の「鼻」の直り具合など、貴重な映像となるはずの材料が隠されているのは変な話であります。


朝青龍サイドが当初、「殴られたのは個人マネジャー」としていた暴行問題については、日本相撲協会も調査委員会を設置。車中にいた運転手と後から現場に駆けつけた個人マネジャーの一宮章広氏を聴取した。しかし、朝青龍の師匠・高砂親方(元大関・朝潮)は知人男性との間で示談が成立したと報告。4日の理事会には知人男性による「嘆願書」も用意し、処分軽減を求めた。結果的には騒動の責任を取る形で朝青龍が引退届を提出し、協会も問題を追及する姿勢は見せなかった。

■この事件には当初から「スジの悪さ」がちらちらと見え隠れしていたようで、何処かの政治家が「秘書がやった」と言い逃れるのとよく似たマネージャーの独断による虚偽の供述を煙幕に使い、裏ではカネが渡って手打ちとなると、誰かさん達は簡単な幕引きを考えたのでしょうが……。

隠されたピース? 其の壱

2010-02-11 11:52:55 | 社会問題・事件
■朝青(暴)龍が起こしたとされる謎の暴行事件の幕引きは、まさに電撃的な引退劇となりました。本人はさっさと日本を離れてハワイに飛んでしまい、5日朝(日本時間6日)にホノルル到着。ハワイにも後援者がいて面倒を見てくれるらしいのですが、日本にも数多くいるはずの「親しい後援者」には同道を断られての単身旅行だとか……。任意の事情聴取をする予定だった警視庁は、朝青(暴)龍のハワイ行きをまったく知らなかったという報道もあり、傷心旅行というよりも国外逃亡みたいな展開になっているようですなあ。
 
■後援者だのタニマチだの、芸能界やスポーツ界にはこの種のパトロンが付き物で、あまりに若い内に有名になってしまった人材をダメにしてしまうことも多いと聞きます。アゴ・アシ付きの過剰接待を受け続ければ幼い心は大きく歪んで最初に金銭感覚が麻痺し、世間を甘く見て独りよがりの特権意識が極限まで強まり、大概の人間なら思春期に抜け出す幼稚な万能感をいつまでも引き摺ってしまう悲喜劇が起る場合が多いようであります。今回の朝青(暴)龍の事件も、後援者・タニマチの動きに関してマスコミが不自然に触れないようにしているから、事件の真相が見えて来ないのではないでしょうかな?まあ、『週刊新潮』が放ったスクープ記事から被害者は「一般人」という決まり文句が濫用されたのが原因なのかも知れませんが……。

■日本相撲協会という組織も不思議なところで、トップは理事長のはずなのに最終的な責任は負わないことになっているようにも見えます。協会内で役職に就いる親方衆は純粋に協会職員というわけではなくて、独立した部屋を持つ個人経営者として振舞っている印象が強いので、不祥事が起こると責任は部屋に丸投げされて押し付けられ、当事者の力士や親方個人が最も重い責めを負い、協会自体は形式的な「けじめ」を付ければ一件落着。今回の朝青(暴)龍の引退騒動も、一体、何が問題になっているのか判然としない部分が多過ぎます。

■電撃的な引退劇の直後に行なわれた記者会見でも、朝青(暴)龍は妙に余裕綽々で「相撲には後悔なし」と自分の実績と貢献を誇示するような発言をする一方で、肝腎なことには口を噤んで謎は深まるばかりでしたなあ。


--現在の心境は
「何も考えていません。大勢の方にお世話になって客に対する思い、責任を感じてここに座っています」
--決意したのはいつ
「師匠と話し合いのうえで引退ということを考え始めた」
--どんな話を
「横綱という責任を感じ、みなさまがたに迷惑をかけたことに対する自分にとっての心構えを」
--事情聴取にくる前には
「正直これだけのことを起こしたし、精神状態もどうなるんだろうと思った」
--報道との違いは説明できるか
「この話は控えさせていただきます」
--決断したときは
「いつかそういうことになるだろうという気持ちはあったし、けじめなんでそれ以上のことはいいません」
--吹っ切れた気持ちか
「休みたいという気持ちもあります。これが自分にとっての運命じゃないかなと…」

■「休みたい」という一言から、一人横綱として相撲興行を支えた苦労を強調したい気持ちが滲み出していますが、今頃になって「横綱という責任」などという殊勝な言葉が飛び出し、「師匠との話し合い」が引退というどん詰まりの場面でやっと成立したというのも面妖な話です。そして、最も気になる「報道との違い」は明らかにされなかったのですから、記者会見は単なる形だけのもので何も解決しないまま終わったことになります。

 
4日に現役を引退した大相撲の元横綱・朝青龍(29=本名ドルゴルスレン・ダグワドルジ)が、初場所中の1月16日に泥酔して知人男性(38)に暴行したとされる問題で、男性が警視庁麻布署の事情聴取に対し、朝青龍から「車内で暴行を受けた」と説明したことが9日、捜査関係者への取材で分かった。朝青龍と知人男性の間には示談が成立していたが、事態は急変。現在、米ハワイに滞在中の朝青龍は被疑者として聴取を受ける可能性が濃厚となった。

■小沢VS検察の第一幕が灰色状態で終わり、今度は朝青(暴)龍VS警視庁との対決がマスコミの好餌にされるのかと思うと、使い古された「品格」という話はますます等閑(なおざり)にされてしまいそうですなあ。とうとう警察に呼び出されてしまった「知人男性」が、これまで不自然に言及を避けて追求もしなかったマスコミを動かすことになるかも知れません。既に『週刊文春』2月11日号の特集記事や、聊か後追い気味に『週刊新潮』の方でも2月18日号で「知人男性」の正体を暴露しておりますから、テレビや一般紙が放置していた事件の核心部分にやっと光が当たるかも知れませんぞ。