犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

ダム問題>治水ダムは意外に危険!・・・緊急放流についてのこと

2017年12月31日 | ダム問題
 洪水時の安全のためのものだが、平常時においては突然、放流があって河道の人に危険を及ぼすことがある。
 川の上流に治水ダムができると川を横断して障害物を造るのだから、川の水流が自然ではなくなる。水流の増水や減水が人為的で急激に変化する。
 河道内の人々に警戒を促すための警報設備は整えられているが、それでも行き届かないことがある。時々、河川の増水で河道に取り残されて人をレスキュー隊が救助したというニュースが流れる。

 治水ダムの管理に注目している人から、ある指摘があった。
 多目的ダムの問題点にかかわることである。
 最近、治水だけを目的とした「洪水調節専用ダム」が出てきたが、これまでのダムはほとんど多目的ダムで治水と利水と兼用のダムである。
 治水目的では常時、ダムに水を貯めず空であるのに対して、利水目的では常時、ダムに水を貯める。同じ器で真反対の機能をもたせるのだから、ときどき混乱が起きてもしょうがないという代物である。
 多目的ダムでは、ダム容量を二つに分ける。
 ある水位を設定して、下半分は水を貯め、利水目的で使用する。上半分は空とし、治水目的で使用する。

 ここからは、(金沢市の)犀川の上流に設置された(多目的ダムの)犀川ダムの話である。
 「犀川ダム操作規則」の第八条(制限水位)につぎのような規定がある。

 第八条 洪水期における貯水池の制限水位は、標高三百四十・〇メートルとし、第十九条の規定により洪水調節を行う場合及び第二十一条の規定により洪水に達しない流水の調節を行う場合を除き、水位をこれより上昇させてはならない。

 この規定は、1と2に分けることができる。
第八条の1:「洪水期における貯水池の制限水位は、標高三百四十・〇メートルとする。」第八条の2:「第十九条の(中略)を除き、水位をこれより上昇させてはならない。」

 第八条の1は、制限水位という限界を設けて利水ダム容量と治水ダム容量を分けるための規定、犀川ダムの場合、洪水期は340メートルでダム容量を上と下に分けるというものである。

 第八条の2は、洪水の時は洪水警戒態勢が執られ第十九条などを適用するのでこの規定は適用されないということと、利水のために水を貯めるがこの水位以上に貯めると治水の操作が妨害されかねないことを防ぐための規定である。

 ここでダム操作についての質問である。
Q:常駐のダム管理者が朝、起きてダムの水位を確認すると、340メートルの制限水位を超えて341メートルだったと仮定する。すぐに緊急放流するべきか、通常の利水のための放流をして水位が340メートル以下に下がるのを待つか。ただし、条件は、洪水の発生は予測されていない。
A1:第八条の規定で「水位をこれより上昇させてはならない。」とあるのだから、即時、緊急放流する。
A2:通常の利水のための放流を続ける。

 A1と答える人が多いだろう。
 ダム管理者も、A1の操作をしがちである。そうすると、緊急放流でトラブルが発生しかねない。第八条の規定「水位をこれより上昇させてはならない。」にかかわらず、A2の操作が推奨できる。第八条は以下のように解釈できるからである。
2つのポイントがあり、一つは「上昇」、もう一つは「させてはいけない」である。
(水位を)「超える」ではなく、「上昇」としており、「上昇」は、ある高さからより上の高さへ移行することで、ある高さが超えたことを問題にしておらず、超えることを前提とした規定も操作規則にある。もう一つは「させてはいけない」の主語はダム操作者である「人」であるが、水位を動かすのは「自然」の現象でもあり、「自然」はこのダム操作のコントロール外のことで「自然」に対して命令しているわけでない。
「水位をこれより上昇させてはならない。」は、水位が340.0メートルあるいはそれ以上になった場合、「水位をこれより(人為的な操作をして)上昇させてはならない。」、つまり、ゲートを降ろすとか、水位を上昇させるような人為的な操作は禁止する、放置するかあるいはゲートを下降させる操作をするかはその時の裁量で禁止しない、と解釈できる。
 
 多目的ダムで治水と利水機能が共存しているので、それぞれの操作がそれぞれの機能を妨害しないように取り決めている規定である。何が何でも制限水位を境に厳格にしなければならないというわけではないので裁量を許容していると解釈した。
 だだし、判断力の乏しい管理者に裁量を委ねると、甘い予測で水位を上げすぎて想定外の降雨で慌てることも心配だが(^_^;)
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