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JAZZ最中

考えてみればJAZZばかり聞いてきた。いまもJAZZ最中。

奥さんの影 

2008-03-04 20:43:28 | 
ねじめ正一の「荒地の恋」を読んで少し心が乱れています。
別に全てをなげうつような恋がしたくなったわけではありません。
若いときに凄い詩だと思った詩人、田村隆一は、その後も飲べいでなお且つ文章の上手い憧れの人でした。
「荒地の恋」の時代あたりエッセイなどがかなり沢山出版されて、ファンとなってかなりひろいました。
そこには隆一という飲べいのきちんとした奥さんの存在があったので(まるで我が家みたい)ほっとした気分になっていたのですが、ねじめの小説で別の面があることがわかったわけです。
この時代に書いた(地獄みたいな時)文も詩も読んでいたわけですが、その中での事情は知らないわけで、改めてつかれたように読み返しています。
評論家でもありませんが、同じ「荒地の恋」にビックリした方なら解ってもらえると思います。
「荒地の恋」の小説がはじまる1976年前後のエッセイを読む前にその前の(というより最初の)奥さんのことを書いた記述を見つけました。まずは鮎川信夫の妹との別れの一幕です。



1954年の隆一の日記
2月2日  『荒地詩集1954年版』出来る。
2月23日 七時帰宅。康子も国立から帰って来ている。この半年先のことだが、いろいろ話し合う。「あなたには話しにくい」と彼女はいうが、」そういえば結婚したときから、そんな具合だ。
鮎川-上村母。田村-康子。弟-母、父。最低三家庭に分かれて独立しなければならないというのが今日の結論。
わかり辛いが、新しい奥さん康子と前の奥さんとのとの調整です。
そして1960年の隆一の日記
1月13日 午後2時半、日暮里でおり、岸田衿子の家に行く。突然の訪問。そこでお喋り、酒、ビールをご馳走になる。午前1時までいる。最終にてかえる。感じのいい女性なり。
これが3番目の奥さんになる岸田衿子との始まりです。衿子もこの雑誌に以下のように書いている。
その頃、和つぃは浅間山麓の東京を往復していて、札幌には長男のお産前後二しばらく滞在した。その三ヶ所に田村さんは出没しては飲み友達をふやし、また誘ってきたが、浅間六里ヶ原だけははしごするところがないので、仕方なく仕事曽しては、あわてて東京へ返って行った。
そして「荒地の恋」の頃には「鳥と人間の植物たち」に明子こと田村和子が奥さんの座を占めている。



1974年の日記
1月21日の和子の日記
おお、良くぞ続酒ぞ。物いう気力なし。以下空白。
四十年来の詩の仲間鮎川信夫さんには、異常性アルコール体質と診断され、医師達もまたしかり。元気な若者たちは手を焼きながらも愉快でたのしい人という。四、五十代は付き合いは三時間が限度という。
超人的な体力と耐久性、これまた超人的な母性とタフな神経、これが「後添さん」の必須条件である。
9月25日
R、下駄バキノママ行方不明。
この後、このエッセイでの和子の登場は急激に減っていく。
そして和子自体精神を病んでいき鎌倉市内にある精神病院に入院することとなる。
田村のこれらのエッセイはおおらかで、登上する女性は常に田村に優しい。田村のエッセイは人の優しさが書かれているが、実際にあった地獄は隠されている。
売るための文で受けをきちんと意識していたのでしょう。
そして誠の言葉、ごまかすことなどありえない彼の詩は彼らの誠を表現している。



この時代に出した詩集『誤解』にはこのように書いている。
田村は常にその詩を荒地のメンバーを意識しているように感じます。
北村のことも含んで書いていると思うと落ち着きます。

部分的な記載で不謹慎ですが

田村隆一詩集 『誤解』

“わたしのなめらかな皮膚の下には”

・・・
ぼくは
ぼくの地獄の季節のなかにいた
きみだってきみの地獄の季節のなかにいたじゃないか
その季節の色とひびきを
どう表現していいものか めいめいが工夫したものだ
・・・・
なんとかして地獄を生み出そうと 手と足をまえに投げ出したのさ
・・・・
地獄の意味がゆっくりと這いあがってくる

それ以外にも「ジャスト・イエスタディー」「詩人のノート」を読みました。
「詩人のノート」からは北村太郎のことを書いた部分は前に書いたと思います。
長く棚にしまわれていた本たちが実はぐすぐすと生きているのですね。
私自身若返ることも出来ないので、ここで線を引いていきたいと思います。
でも田村の詩集と本はまだまだあるので機会があったらまた載せたいと思います。





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